トピックス


2011_女子WM_2・・小林敏明さんなどの雑感と、フランス対ナイジェリア(1:0)・・(2011年6月26日、日曜日)

さて、女子WM(Welt Meisterschaft=ドイツ語でワールドカップの意)がはじまります。

 今日はまず、ジンスハイムにあるモダンなスタジアム(ライン・ネッカー・アレーナ=ブンデスリーガ一部ホッフェンハイムのホームスタジアム)で、フランス対ナイジェリア戦が「1500時」にキックオフされます。そして、その後の「1800時」から、正式なオープニングマッチとなるドイツ対カナダ戦が、「ここ」ベルリンのオリンピックスタジアムで開催されるというわけです。

 ベルリンのオリンピックスタジアムは、既にチケット完売状態だそうな。

 そう・・ドイツには、オペラをはじめとした「観劇の文化」が根付いているし、一生に一度かもしれないビッグイベントの証人になれる機会を、あの・・人生を積極的に楽しみながら突き詰めようとする(!?)ドイツ人が見逃すはずがない・・ってなわけです。フムフム・・

 とにかく女子WMは、日を追うごとにドイツ社会での注目度をアップさせている。とはいってもサ、現実は厳しい。先日のドイツのテレビ番組じゃ、キャスターがこんなことを言っていた。

 「ドイツ人の多くは、スターストライカーのビルギット・プリンツを除き、ドイツ選手の名前をほとんど知らない・・それでも、ワールドカップというイベントが、サッカーの世界では最高峰であること、そしてドイツ女子代表がとても強いということだけは認知している・・だから、積極的にそのイベントに参加しようとするのも当然の成り行きです・・」

 というわけで、これから私はオリンピックスタジアムへ馳せ参じるわけですが、今はまだ、友人の哲学者、小林敏明さんのお宅でコラムの導入部を書いています。

 小林敏明さんとは、もう本当に長い付き合いになります。2006年のドイツワールドカップのときには、私のHPに登場いただいただけではなく、そのときに発表した文章を、拙著「日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)」にも挿入しました。

 そのときの対談内容は、二つに分けて発表したのだけれど、それについては、「あのコラム」「このコラム」を参照して下さい。

 小林さんからは、この二日間、とても興味深い(まあ、小難しい!?・・スミマセンね小林教授)哲学的なハナシを聞かせてもらった(講義を受けた!?)。本当に、とても刺激的なハナシ・・。

 ところで小林さん。このところ、ご自分の論文などで、メタファー的なニュアンスで(!?)、サッカーを引用する機会があるそうな。彼もまた、サッカー(そのメカニズム)が内包する、深〜い哲学的なバックボーンをよく理解しているっちゅうことです。

 あまり哲学的なコトを掘り下げようとすると「ボロ」が出るから、小林敏明ライプツィヒ大学教授の話題は、こんなところで締めます。

 ということで女子サッカー。フィジカル、テクニカル、タクティカル、そしてサイコロジカルといったサッカーの根源的な要素の全てで、男子とは比べようもないほど劣っている。でも・・だからこそ、とても興味深いグラウンドの現象を観察できる。

 要は、ものすごく高いレベルで、戦術的なせめぎ合いが錯綜の限りを尽くす男子サッカーと比べ、女子サッカーの場合は、ボールをめぐるせめぎ合いが、とても分かりやすいということです。組織コンビネーションにしても、それを受け止める守備の意図(イメージのレベル)にしても、はたまた、ドリブル勝負にしても、それ受け止めるディフェンダーの対抗プレー(対抗する守備アイデアの量と質)にしても・・。だからこそ、予測もしやすいし、分析もしやすい。だからこそ(自分のアタマのなかで)戦術アイデアを駆使したシミュレーションもやりやすい。フムフム・・

 あっと・・フランス対ナイジェリア戦がはじまった。いま、ベルリンオリンピックスタジアムのなかに設けられているプレスセンターでテレビ観戦しています。では後で・・

--------------------

 さて、フランス対ナイジェリア。まあ・・サッカー内容からすれば、順当なフランスの勝利だとすることが出来るね。

 要は、サッカーの絶対的なベースである組織的な発想(組織サッカーという視点)で、フランスに一日以上の長があった・・ということです。

 スペースを攻略するための人とボールの動き・・。また、3人目も含む、ボールがないところでの動きの量と質・・。そんな、チーム戦術的な発想で、フランスが、ナイジェリアを凌駕していた。

 もちろん、個のチカラでは、特にフィジカル面で、ナイジェリアの凄さは体感させられた。でも、そんな個のチカラが、ボールや戦術イメージという「媒体」を介してリンクしない。だから、ドリブル勝負などの個の勝負プレーが孤立してしまう傾向が強い。

 たしかに、ナイジェリアがブチかます爆発ドリブルはすごいけれど、それが、次のラストパスとかコンビネーションのキッカケとして(要は最終勝負のオプションを広げるプレーとして!)機能しないのですよ。

 これでは、ナイジェリアの個のチカラが、それらを単純に足し算した総量以上の効果を発揮しないのも道理だよね。組織プレー的な(チーム戦術的な)発想があれば、ナイジェリアの個のチカラが、総体として、何倍にも膨れ上がるのに・・

 フランス決勝ゴールのシーン。

 右サイドへボールを展開された時点で、中央から右サイド寄りにいた二人のナイジェリア選手が、完全にボールウォッチャーになってしまった。要は、ナイジェリア守備は、相手の組織コンビネーションに対するイメージ描写のチカラが十分ではないということです。だから、フランスの組織プレーに十分に対処できない。

 そこでのナイジェリアの守備プレーもまた、彼らの攻撃の内実を如実に投影しているというわけです。優れた攻撃と優れた守備(イメージ描写能力)は、常に表裏一体の関係にあるわけだからね。

この決勝ゴールシーンでは、折り返されたクロスパスを受けたフランス選手は、まったくフリーだった。それだけじゃなく、呆然とグラウンド上の現象を見つめる(思考停止状態の!?)ナイジェリア選手たちを尻目に、2人目、3人目と、フリーなフランス選手が、どこからともなく湧いて出てきていた。フムフム・・

 とはいってもサ、ナイジェリアの個のチカラが凄いことには、誰も異論をはさまないでしょ。そんな個のチカラに対してチームプレー(チーム戦術的な発想のレベル)となると・・。そう・・、20年以上前には、男子サッカーでも同じような言い回しがされていたっけね。

 前述したけれど、そんな戦術的な現象もまた、女子サッカーでは、まだまだクッキリと分かりやすく浮かび上がってくるっちゅうわけです。

 取り敢えず、このコラムは、このままアップし、ドイツ対カナダ戦は、別途にコラムを書く予定です。ではまた後で・・

===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]