湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2019年3月29日、金曜日)

 

たしかにポステコグルー率いるマリノスは強い・・でも、そんな強敵に対して一歩も引かず、立派な積極サッカーで対抗したサガン鳥栖にも、心からの賞賛の拍手を!・・(マリノスvsサガン鳥栖、0-0)

 

レビュー
 
そりゃ、誰の目にも、マリノスの実力の方が「格上」だっちゅうことは明らかでしょ。

実際・・

そう、シュート数でも(3倍以上)、ゴール機会という視点でも、マリノスが凌駕していたよね。

たしかに、それは事実なんだけれど・・

そう、天の邪鬼(あまのじゃく)な筆者は、だからこそ、サガン鳥栖が魅せつづけた「強烈な意志のサッカー」にフォーカスし、賞賛したいんだよ。

とにかくサガン鳥栖の強者どもは、最後の最後まで、一時たりとも、気を抜かなかったんだ。

何度も、何度も、決定的ピンチの流れに陥り、ドカンッ、ドカンッって、バー直撃のシュートをブチかまされた。

それでもヤツらは、決して「めげる」ことなく、最後の最後まで、攻守ハードワークとリスクチャレンジをブチかましつづけたんだ。

守備では・・

チェイス&チェックを絶対ベースに、その次の連動ディフェンス(ボールを追い込むイメージ)が、素晴らしく有機的に連鎖しつづける。

また、デュエルで負けて抜かれても、爆発ダッシュで追いかけ、相手ボールホルダーを追い詰め、アタックするといった、強烈な「闘う意志」も、随所に魅せつづける。

もちろん危急状況では・・

決して諦めることなく、粘りの忠実マークを基盤に、場合によっては、担当マークを放り出してカバーリングへ急行したり、最後の最後の「半歩」をブチかましたり。

そんな、強烈な「意志のディフェンス」が機能していなかったら、確実に、マリノスに、2点、3点と、ゴールをブチ込まれていたに違いない。

また・・

そう、鳥栖の強者どもは、そんな「意志の忠実ディフェンス」を絶対ベースに、次の攻撃でも、奇異に感じられるほど高揚しつづける「積極アクション」をブチかますんだよ。

あんなに押し込まれ、裏スペースも突かれているのに・・

ボールを奪い返した次の瞬間には、攻撃に、3人、4人、5人ってな感じで、サポート(ボールがないところで勝負フリーランニングを仕掛ける!?)が上がっていくんだ。

わたしは、そんな強者どもの「極限の闘う意志」を感じながら、ヤツらに、そして監督のルイス・カレーラスに、心からの賞賛の拍手をおくっていたものさ。

わたしは、基本的には現場の人間だからネ、そんな鳥栖の強者どもの「闘う意志」のリソースが何であるか、分かっているつもりだからサ。

かなり前のハナシになるけれど・・

わたしは、ドイツ・プロコーチ養成コースで同期だったヤツらが、2部や3部リーグで監督を務めていた当時の苦労(心理マネージメントプロセス)を体感しているんだ。

ヤツらは、選手たち自身で考え、彼ら自身で闘う意志を高揚させられるまでに成長させようと、七転八倒しながら、様々にチャレンジしていたんだよ。

今日の鳥栖の強者どもも、まさに「そんな感じ」で、やられても、やられても、決して諦めることなく、攻守にわたって、自分主体で(!!!)最後まで闘い抜いたんだ。

会見で、カレーラス監督が、「あの、強いマリノスに対して、しっかりと最後まで闘い抜けた・・選手たちを誇りに思う・・」と、胸を張っていたっけね。

そう、アンタは、素晴らしい仕事をやっている。

ところで、マリノス・・

冒頭で書いたように、ポステコグルー監督は、ホントに、良いチームを創りあげている。

例によって、攻守ハードワークとリスクチャレンジ溢れる、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションと、効果的な個の勝負プレーが、高みでバランスした、優れたサッカー。

それもまた、「質実剛健サッカー・・」っていう表現で賞賛するに値するね。

でも・・

そう、あれほどのチャンスを創りだしながら、結局は、ノーゴール。

実は、そんな現実(真実)について、こんな質問を投げてみたかったんだ・・

・・よく国際会議で、仲間のプロコーチ連中とディスカッションすることがあるんですよ・・

・・絶対チャンスをゴールに結びつけられない「不運」を、どのように自分のなかで整理するのかっていうディスカッション・・

・・そこには、物理的ロジックもあるだろうし、心理・精神的な部分もあるでしょ・・また神様ドラマってな側面もある・・

・・ポステコグルーさんは、この不運を、どのように(哲学的に!?)整理するだろうか?・・

まあ、時間が押しているということで、結局、その質問はボツになったけれど・・さ。

以前、ドイツの伝説的ゴールゲッター「ゲアハルト・ミュラー」が、こんなコトを言った。

・・チャンスになりそうな流れを感じれば、どのポジションへ入ればいいのか見えてくる・・

・・そして実際のシュート場面では、打つ前から、ゴールに入っているボールが見えるようになるんだ・・

フムフム・・。

まあ、彼が言いたいことは、そんな次元に到達するまで(効果的な!?)トレーニングを積まなきゃダメだということなんだけれど・・

たしかに、そんな個人戦術的(物理的)なロジックもあるだろうけれど、それでも、ヤツ(ゲアハルト・ミュラー)にしたって、何度も、絶対的チャンスを外しまくったことがあるんだよ。

もちろん、「その失敗こそが次のゴールを生み出す糧になった・・」なんて、「きれい事」を言うのは簡単さ、でも実際は・・

そう、やっぱり、どう考えても、腑に落ちない「不運」はつきまとうんだよ。

だから、こう考える・・

シュートチャンスを、高い確率でゴールに結びつけられる「何らかの実効ある感覚」を研ぎ澄ますトレーニングを積み重ね、実際に、「何か」を突き破るまでその感覚を深化させる。

それでも、シュートを打つ瞬間にボールがイレギュラーしたり、「自信や確信がブレたり」等など、様々な要因でシュートが入らないコトだって、多々あるさ。

そのときは、神様ドラマだと割り切る!?

さて〜〜・・

ところで・・

この「決定力」っちゅうテーマについては、「The Core Column」で、かなり以前に「こんなコラム」をアップしたから、そちらもご参照あれ。

まあ、この試合については、こんなところですかネ。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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