湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第2節(2016年3月5日、土曜日)

 

ものすごくエキサイティングな勝負マッチだった〜っ!!・・(フロンターレvsベルマーレ、4-4)

 

レビュー
 
あ〜〜あ、ホントに面白かった。

こんな、攻守にわたるダイナミックなせめぎ合いマッチって、そうそう観られるモノじゃない。

もちろん、決してノーガードの打ち合いってな低次元ゲームじゃないよ(まあ、後半ロスタイムの、ただ一回の両チーム攻守シーンを除いて・・かな!)。

たしかに、個のチカラの「単純総計」としてのチーム総合力では、フロンターレに一日の長がある。

だから、局面(球際)での「せめぎ合い」で優位に立つフロンターレが、全体的なゲームのイニシアチブを握るのも自然な流れではあった。でも・・

そう、とにかくベルマーレが、立派な、本当に立派な「意志のサッカー」をブチかましつづけたんだよ。

それも、今シーズン「も」、何人もの主力選手を他チームに引き抜かれたにも関わらず・・だぜ。

本当に、チョウ・キジェは、大したヤツだ。

私は、そんなベルマーレのサッカーを観ながら、チョウさんがベルマーレに残ってくれたことを「サッカーの神様」に感謝していたっけ。

・・アンタは、気まぐれなイタズラや、誰もが想像だにしないドラマを演出したりするばかりじゃなく、日本サッカーに良いこと「も」やってくれるんだ〜・・

へへっ・・

とにかく、タイムアップ後には、まさに爽やかな「情緒」で心が満たされていた筆者でした〜。

ということで、まず、攻守にわたって「立派な意志のサッカー」を展開したベルマーレから、テーマを拾っていきましょう。

彼らは、とにかく全員が、決して休んだり(思考停止に陥ったり!?)サボッたりすることなく、攻守にわたって、主体的に「仕事を探し」つづけていた。

もちろん、パスやマーキングなどでのミスも多いけれど、全体的には、ほぼ全てのプレーに、強烈な「意図と意志」が凝縮されていたんだよ。

だからこそ、「あの」強いフロンターレを、タジタジにさせられるだけのダイナミックサッカーが展開できたっちゅうわけだ。

キャプテン高山薫を中心にした、まさに流れるような攻守ハードワークの積み重ね。

彼らは、フロンターレ選手の「巧さ」に翻弄されるコトなんてお構いなしに、次、その次・・ってな粘り強い攻守ハードワークを積み重ねていくんだよ。

そんなサッカーが、観る者に感動を与えないわけがネ〜だろ。

もちろん「その感動」は、迸(ほとばし)る意志だけじゃなく、しっかりとした展開からブチかましていく、美しくさえある(!?)カウンターや組織的な仕掛けにも秘められている。

ベルマーレの「意志のサッカー」については、新連載「The Core Column」において、2年前に「こんなコラム」を発表したことがあったから、そちらもご覧あれ。

ベルマーレについては、あと二つ、聞いて欲しいポイントがある。

まず、全体的なサッカーの進化と深化。

今シーズンで彼らは、「J1」の3シーズン目を迎えたことになるわけだけれど、その都度、彼らのサッカーが、どんどんレベルアップしていると感じるんだよ。

もちろん、レベルを超えた「ストロングハンド」、チョウ・キジェの手腕によるトコロが大きいのだけれど、そのバックボーンに、選手たちの強烈な自覚(意識と意志≒インテリジェンス)もあると感じるんだよ。

まあ、その自覚(極限で維持する強烈な意志!?)もまた、チョウ・キジェの手腕に拠るわけだけれど・・サ。

そして、その選手たちの強烈な自覚というのが、二つ目のポイントなんだよ。

例えば、山田直輝と岡本択也。

この2人は、レッズからの移籍組だよね。

その彼らが、まさにイメチェンの活躍(意志の=正しい自己主張の=プレー)をしているんだ。

レッズ当時のコトを考えれば、まさに目から鱗だよね。そう、チョウ・キジェの手腕。

まあ山田直輝については、復調した・・っちゅう表現が正しいのかもしれないけれど、それにしても、この2人のプレーでは、「正しく前向きな自己主張マインド」が光り輝いているんだよ。

このポイントについては、前に何度か書いたことがあった。

要は、「脅し」では、選手たちのパフォーマンスを極限まで引き上げられない・・というポイントのこと。

だからこそ監督は、選手をホンモノの大人へと脱皮させるだけじゃなく、彼らの自覚(闘う意志!)を極限まで高揚させられるような心理マネージメントに尽力しなきゃいけないんだ。

そこでは、「選手マインドの解放・・」とか、いろいろな表現はあるけれど、とにかく、選手たち「自身」が、「こんなサッカーがやりたい・・」と、心から主 張する(欲する)ように、チーム全体の雰囲気とか、健全なライバル関係マネージメント等などの「心理環境」を整備していくんだよ。

さて、ベルマーレ。

もちろん、今シーズンがどうなるかなんて誰にも分からない。

でも、今のベルマーレが、様々な視点で、今シーズン「J」の(意志のプレー基盤のサッカー内容で!?)台風の目になるに違いないと確信している筆者なのでした〜。

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あっと・・フロンターレ。

例によって、人とボールが、「素敵なリズム」に乗って動きつづけるような、とても高質なサッカーを魅せてくれた。

まあ、前述したように、爆発的な協力プレッシングを、忠実に、粘り強く、そしてダイナミックにブチかましてくるベルマーレが相手だから、そんなに自由にプレー出来たわけじゃないけれど・・ネ。

それでも、彼ら(風間八宏のコンセプト!)が秘める、とてもハイレベルなアイデアが、(特に後半になってから・・)存在感を迸(ほとばし)らせつづけたと思う。

特に、ボールを失った「直後」から、まさに爆発的にブチかます「協力プレス守備」が目立ちに目立っていたっけ。

もちろん昨シーズンでも、そんな、前戦からの協力プレス守備がツボにはまるシーンはあった。でも今シーズンは、「それ」に対する意識と意志が、かなり増幅したと感じたんだよ。

だから、風間八宏さんに聞いた。彼は、それに対して軽く頷いていたっけね。

そして、こんな(ニュアンスの!)素敵なコメントを残してくれた。曰く・・

・・ボールを失った次の瞬間に優るチャンスはない・・その事実を、選手たちに、より強く意識させるようにしている・・そして、そのイメージをシェアできているからこそ、そんな前戦プレッシングのイメージが共有され、それが効果的なアクションの連動につながっているんだ・・

フムフム・・

もちろん組み立て(遅攻)になったら、例によっての「動きのリズム」が存在感を発揮する。

そう、たまには、心を奪われてしまうほど魅力的な、ダイレクトパスや勝負ドリブルを効果的に織り交ぜた、決定的スペースの攻略プロセス。

この「ダイレクト・パス」というテーマについては、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」をご参照アレ。

また、フロンターレが展開する、人とボールの「動きのリズム」というテーマについて「こんなコラム」も書いたから、そちらを参照して頂ければ幸いです。

そこじゃ、バルセロナの「動きのリズム」に似通っているというニュアンスでフロンターレを採り上げたっけ。それほど、フロンターレ(風間八宏)のサッカーイメージは高質なんだよ。

とにかく、ものすごくエキサイティングな「せめぎ合い」になったこの勝負マッチに、心底「入り込んで」いた筆者だったのであ〜る。

へへっ・・

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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