湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第6節(2010年4月10日、土曜日)

 

またまた連チャン観戦・・両ゲームとも引き分けたけれど見所は豊富でした・・(MvsC, 0-0)(FCTvsA, 1-1)

 

レビュー
 
 今日も、二連チャン観戦ということになりました。日産スタジアムと味スタ。でも今日は、前回と違って、まだまだ元気・・だけれど・・

 とはいっても、移動には、かなりエネルギーを遣った。土曜日ですからネ、第三京浜を下りてからの環八は、まさにギッシリといった大渋滞でした。もちろん、こちらは単車だから、渋滞の「端っこ」をすり抜けてはいくけれど、間の悪いことに、この日に限って、それも警察の交替時間を過ぎた1830PM(夜)だったにも関わらず、白バイがピタリと私に付いてくるんですよ。

 私の単車の方が白バイよりも「大きい」けれど、それが気に入らなかったのかもしれない。赤色灯を点滅させたり、ピタリと私のケツに付けたり。アタマに来た。これじゃ渋滞の間を「すり抜けて」いけないしね〜〜。あと30分でキックオフだぜ。フ〜〜・・

 ・・なんて思っていたら、その白バイ、急に左折していなくなった。たぶん所轄の警察署へ帰っていったんだろうね。まあ・・仕方ない・・何せ今は「春の交通安全運動週間」だからネ。こちらも、気をつけなくちゃ。

 あっと・・短くまとめて書くつもりが、またまた導入部が長くなっちゃった。ではまず「マリノス対セレッソ」から・・

 正直、とても退屈なゲームでした。中村俊輔が出てくるまでは・・。

 ゲームは、マリノスが完璧に支配していましたよ。シュート数も、マリノスの「20本」に対し、セレッソは、たったの「3本」。マリノスは、例によって、素晴らしく忠実でクリエイティブなダイナミック守備を絶対的なベースに、その後も、しっかりと人とボールを動かす組織プレーに、タイミングよく個人勝負プレーをミックスしていく。とても良いサッカーです。でも私は、どうも、彼らのサッカーが、積極的ではあるけれど、「全体的なリズム」は単調に過ぎると感じていました。

 途中で、セレッソのマルチネスが、スパイクの裏をみせた両足タックルを栗原勇蔵に見舞ったことで一発レッドを喰らったこともあって、もう完全にマリノスがゲームを支配している・・でも、本物のチャンスを作り出すことが出来ない・・要は、セレッソ守備ブロックの「眼前」で仕掛けていくばかりで、彼らの「ウラの決定的スペース」を突いていけないのですよ・・フムフム・・

 山瀬功治が、渡辺千真が、はたまた狩野健太や(交替出場した)斉藤学が、ある程度フリーでパスを受けたことで、有利なカタチからドリブルシュートにチャレンジする。でも、ことごとく、セレッソのディフェンダーの足で止められたり、セレッソGKの防がれてしまう。

 そんな「寸詰まり」の状況で、中村俊輔が登場してきたのですよ。そして、それまでの「単調な仕掛けのリズム」に大きな変化を演出してしまう。

 パスを受けた中村俊輔・・ゆったりとしたリズムで、相手でフェンダーへ向かってドリブルしていく・・もちろん相手は、簡単にはアタックを仕掛けられずに後ずさりするばかり・・次の瞬間、俊輔が、スッ、スッとスピードアップし、二度、三度と、相手ディフェンダー振り回す・・セレッソ守備ブロックの意識と視線は、完全に中村俊輔のアクションに引きつけられ、ボールウォッチャーになってしまっている・・そして、そんな状況で中村俊輔は、逆サイドでフリーになっていた味方へ、まさに「ピンポイント」のラスト(サイドチェンジ)クロスを送り込んでしまう・・フ〜〜・・

 そんな感じのチャンスメイクが、少なくとも3回はありましたかね。その全てで、セレッソ守備ブロックは、完全に、ウラの決定的スペースを攻略されてしまったというわけでした。

 このゲームからピックアップしたテーマは、もちろん「仕掛けの変化」。

 たしかにマリノスは、組織コンビネーションあり、勝負ドリブルあり・・と、とても「種類の変化」に富んだ仕掛けを繰り出してはいくけれど、そこでの「リズム」は、とても単調だった。たしかにアップテンポだったけれど、単調だったのですよ。だからセレッソ守備ブロックも、簡単に対応できた・・。

 それが、中村俊輔という「天賦の才」によって演出されたシンプルなリズムの変化によって、それまでのセレッソ守備ブロックのバランスが簡単に崩されてしまったのです。とても興味深い現象ではありました。

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 さて次が、FC東京vsアントラーズ。こちらは、ものすごくエキサイティングな仕掛け合いになりました。

 ゲームの立ち上がりは、FC東京が素晴らしい勢いで仕掛けていった。「昨シーズンは、アントラーズと戦った2ゲームともに、立ち上がりにゴールを割られたことで、そのまま立ち直れず、押し切られるという無様な展開になってしまった・・だから今日は、とにかく立ち上がりからアントラーズを押し込み、出来れば先制ゴールを奪うというイメージでゲームに入っていった・・そして、まさに思い描いたとおりの立ち上がりを演出できたのだが・・」

 前半4分。FC東京の平山がPKを決めて先制ゴールを奪ったのです。そしてFC東京は、その後も、決して引くことなく攻め上がっていった。もちろんアントラーズも積極的に攻め上がっていったから、ゲーム自体は、ものすごくエキサイティングなものへと大きく変容していった。いや・・ホント・・とても面白かった。

 とはいっても、そこは王者アントラーズ。何度かのチャンスメイクの後、粘りの同点ゴールを決めてしまうのですよ。まず、小笠原満男がミドルシュートをブチかます・・それをFC東京GKの権田修一がキャッチできずに前へこぼしてしまう・・それを、しっかりと前へ詰めていた興梠慎三がキッチリと決めた・・ってな同点ゴール。

 私の脳裏には、そのゴールが、まさにアントラーズ的な「勝負強さのコノテーション(言外に含蓄される意味)が込められた」モノだったという強烈な印象が残りました。あのタイミングで、素晴らしいミドルシュートを小笠原満男がブチかましたこと・・そして「そこ」に興梠慎三がいただけじゃなく、その彼が、キッチリとゴールを決めたこと・・。やはりアントラーズは、ただ者じゃない。

 「そこ」に興梠慎三が「いた」という現象だけれど、その同点ゴールを観ながら、それこそが、アントラーズの勝負強さの本質的を表しているのかもしれない・・なんてことを思っていた。

 それは、FC東京が、サイドゾーンを切り崩すことで、何度もチャンスを作り出したにもかかわらず、そのチャンスを、とても「淡泊」に終わらせてしまう(結局チャンスをゴールに結びつけられない!)という残念なシーンが連続したからです。

 サイドゾーンを切り崩し、素晴らしいクロスを送り込むFC東京・・身を挺し、必死にクリアするアントラーズ守備ブロック・・でも(クロスボールの質がとてもハイレベルだから!)遠くまでクリアすることが出来ず、そのクリアボールの多くがバイタルエリアに残ってしまう・・普通ならば、FC東京の大チャンス(アントラーズの大ピンチ)となるべきシーン・・でも結局は、「そこ」に東京の選手がいたというケースは、まったく見られなかった・・

 要は、FC東京のハーフ陣の押し上げ(=ボールがないところでのリスクチャレンジの動き)が、消極的に過ぎたということです。

 それに対してアントラーズは、チャンスになりそうな雰囲気が漂った次の瞬間には、何人もの選手がFC東京ゴール前の決定的ゾーンに押し上げてくるのですよ。何度彼らが、「こぼれ球」をフリーでシュートするシーンを演出したことか・・。

 それこそが、アントラーズが備えている「抜群の勝負強さ」の、もっとも大事な要素の一つだと思っているわけです。もちろんFC東京の場合は、米本と梶山という絶対的な守備的ハーフコンビをケガで欠いていることも大きいよね。彼らがいれば、相手ゴール前のこぼれ球をピックアップできる「頻度」は、このゲームの比じゃなかっただろうからネ。タラレバのハナシだけれど、とにかく「最終勝負の厚み」という視点では、FC東京は、まだまだだということが言いたかったわけです。

 とはいっても、絶対的な主力選手が欠けているにもかかわらず、FC東京は、フロンターレ同様(調子が上向きのフロンターレというテーマについては、このコラムを参照してください・・また彼らは、今節も、立派なゲームでサンフレッチェに勝利した!)、とてもしっかりとした足取りでサッカー内容を充実させはじめていると感じます。

 「このところのFC東京は、フロンターレと同じように、かなり調子が上向きだと感じる・・両チームともに、絶対的なコアの選手を欠いているわけだが、そんな厳しい状況でもチーム状態を引き上げられている要因は、どこにあるのだろうか・・簡単なキーワードをつかって説明してもらえないだろうか・・?」。そんな私の質問に対し、城福浩監督が、例によって、真摯に答えてくれた。

 「・・そのように高く評価していただけることは嬉しいのですが、我々は、まだまだ、自分たちが目指すサッカーに近づこうと努力している最中だと思っているのですよ・・一つの例ですが、様々な意味のバランスという視点でも、やはり、常に、どこかアンバランスな方向に振れているケースが多いと思うわけです・・それもまた、我々がまだまだ途上にあることの証なわけですが・・」

 「・・わたしは、時計の針が1200時を指しているのが理想的だと表現することで選手たちのイメージをうまくバランスさせようとします・・それでも、アンバランスになるケースも多い・・例えば、プレーが1000時の方向へ、ちょっとバランスを欠いて振れてしまった場合・・それを1200時へ戻すためには、1200時レベルの措置だけじゃ足りないケースも多いですよね・・だから、1400時の方向性という、ちょっと極端な策を講じることが必要になるケースもあるわけです・・そんな努力をすることで、徐々にではありますが、バランスの取れたサッカーを出来る時間帯が増えつつあるということでしょうか・・ご質問の答えになっているでしょうか・・」

 そうね〜〜・・まあ、分からないではありませんがネ〜〜。わたしは、選手たちの(誰かに頼るのではなく、結局は自分たち自身がやるしかない・・という)自覚の深化とともにプレーの充実度がアップし、そのことで自信も深まっていく・・という善循環が回りはじめたからだと思っているわけです。あっ・・この表現も具体性を欠きますかネ、あははっ・・。

 ちょっと疲れてきたから、この二ゲームについては、ここまでにしますかネ。後で、アルビレックス対レッズ戦のビデオを観て、簡単にレポートしますので・・

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 ところで、三年ぶりに新刊を上梓することになりました。タイトルは『サッカー戦術の仕組み』。池田書店です。この新刊については「こちら」をご参照ください。

 



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