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2015_皇后杯決勝・・レジェンド澤穂希・・そして立派なサッカーを展開したアルビレックス(能仲太司監督)にも乾杯!!・・(アイナックvsアルビレックス、1-0)・・(2015年12月27日、日曜日)

後半28分のことでした。

センターライン付近で、(彼女にしては、とても希な出来事なのだけれど!)澤穂希が、ダイレクトのパックパスをミスってしまう。もちろんボールは、アルビレックス選手の足許へ。

それは、アルビレックスにとって、まさに願ってもない「ショート・カウンター」のチャンスだった。

逆に、アイナックにとっては一大ピンチ。そのことは、ダイレクトパスをミスった澤穂希が、もっとも切実に感じていたはずだ。

・・アッ、しまったっ!!・・こりゃ、ショートカウンターの大ピンチになっちゃう・・

そんな危急状況をイメージした次の瞬間、澤穂希が「爆発」した。

ここでちょっと脱線。

私は、澤穂希のことを、「究極の意志のプレイヤー」と呼ぶことにしている。

そう、攻守にわたって、最高の集中力で、「ボールがないところでの仕事を主体的に探しつづける」プレー姿勢。

それも、澤穂希の場合は、例えばディフェンスでは、体力的に厳しい穴埋め作業(カバーリング)を、まったく厭(いと)わないし、攻撃でも、決定的なパサー としてだけじゃなく、ボールがないところでも、3人目、4人目の「フリーランナー」として、相手の目が届かないスペースに、いつの間にか顔を出して決定的 な仕事もこなしてしまうんだ。

それこそが、(ボランチの基本ポジションへ下がったことも含めて!!)彼女を「世界のサワ」にまで上り詰めさせた絶対的バックボーンだった。

私は、2011年ドイツ(女子)W杯を、最初から最後まで、現地でレポートした。

ここでは、フランクフルトスタジアムの記者席で書き上げた(当日の!)決勝戦コラム、翌日に書いた付加的コラム総括コラムへリンクを張っておきます。

あっと・・冒頭シーンのつづき・・

「爆発」した澤穂希は、まさにフルスプリントで、攻め上がる相手ドリブラーを追いかけ、最後はボールを奪い返してしまうんだよ(相手のファールを誘った!)。

澤穂希は、皆さんもご覧になったとおり、守備のカバーリング(ボール奪取勝負)でスライディングを仕掛けたり、次の攻撃で、まさに「影武者」のように、相 手ディフェンスの裏に広がるスペースへ飛び出したりと、攻守にわたって、まさに縦横無尽に走り回り、結果を出しつづけていた。

この試合での(サッカーの神様が舞い降りてきたかのような!?)ドラマチックな決勝ゴールには、そんな澤穂希の「意志のプレー」のエッセンスが凝縮されていた。

そう、だからこそ彼女を、「You deserve it !!!」という言葉で賞賛したい。

まあ、彼女については、これまでも多くのコラムを書いたから、そちらもご参照アレ。

ことほど左様に、終わってみれば、「澤穂希フェスティバル・・」という雰囲気に包まれたし、彼女にとってもそれは、まさに正当な報酬以外の何ものでもなかった。

でも・・

そう、ゲームの内容自体は、アルビレックスが、攻守にわたる素晴らしい「意志のサッカー」で、アイナックを上回っていたんだよ。

たしかに、個のチカラを「単純総計」したチームの総合力じゃアイナックに軍配が挙がる。

でもアルビレックスの女傑たちは、そんな「物理的な劣勢」を、心理・精神的に(強烈な意志をもって!)はね返しちゃったというわけさ。

その意志は、もちろんディフェンスに、如実に現れてくる。

忠実で、ダイナミックな(これが決定的に重要なファクター!!)チェイス&チェックで相手ボールホルダーに自由を与えないことを絶対ベースに、次の展開を正確に「予測」しながら、忠実にアクションをつづけるんだ。

そして、これまた忠実に、2列目からの飛び出しや、ボールから離れたゾーンでの決定的フリーランニングに対する忠実マークだけじゃなく、次のカバーリング(協力プレスアクション!)もブチかましつづける。

だからアイナックは、そう簡単には、アルビレックス守備ブロックのスペースを攻略する・・なんていう創造性プレーを展開することは叶わなかった。

もちろん何度かは、両サイドからの勝負ドリブルやコンビネーションで(川澄奈穂美と近賀ゆかり、中島依美と鮫島彩など)アルビレックス守備ブロックのウラを突きはしたけれど、最終勝負シーンでは、いつも「アルビレックスの足」が伸びて、シュートを阻まれていた。

逆にアルビレックスの女傑たちは、チャンスを見計らい、敢然と攻め上がっていった。その思い切りの良さに感心しきりだった。

もちろん、そんなフッ切れた攻め上がりだから、チャンスを作り出せないはずがない。彼女たちもまた、何度か、決定的チャンスをモノにしかけたというわけだ。

全体的なチャンスの量と質という視点では、アルビレックスに一日の長があったとするのが多分フェアな評価なんだろうね。

というわけで、私は、アルビレックスのプレー姿勢には、主体的で強烈な意志があった・・とすることに躊躇(ちゅうちょ)しないっちゅうわけだ。

とにかく、最後は、選手たちの「主体的な意志」こそが主題になるべきなんだよ。

何せ、イレギュラーするボールを足で扱うことで、不確実な要素がテンコ盛りのサッカーは、究極の「心理ボールゲーム」だからさ。

繰り返しになるけれど、その視点でわたしは、アルビレックスが、本当に立派なサッカーを展開したと思っているわけだ。

(この試合が最後になった!?)アルビレックス監督のプロコーチ、能仲太司さんを(監督会見で質問したときにも言ったけれど!)心からレスペクトしている筆者なのです。

PS:澤穂希のプレーに触発されたのだろうか、何か、ボランチというテーマを、新連載「The Core Column」で深掘りすることに対する創作意欲が湧いてきた。とにかく、「世界のサワ」は、ボランチへのコンバートから始まったわけだからサ・・。また、当時の、ドイツ(プロ)サッカーコーチ国際会議のレポートにもリンクを張っておきます。当時を思い出して、深い誇りともに感慨に浸っていた筆者でした。

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 最後に「告知」です。

 どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

  自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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