トピックス


2015_東アジアカップ(その7)・・今大会最高のサッカーだった・・でも残念ながら勝ち切れなかった・・それでもいくつかのポジティブポイントはあった・・(日本vs中国、1-1)・・(2015年8月9日、日曜日)

まあ、仕方ない。

でもコレで、今大会のベストチームである韓国が優勝することになった。それは、それで、とても良かったと胸をなで下ろしていた。

それにしても、第1試合の韓国vs北朝鮮戦の内容には驚かされた。

韓国チームは、一体、何度、まさに「100%」っちゅうチャンスを潰しつづけたんだろう。もう数えるのもイヤになった。多分、少なくとも10本以上はあったに違いない。フ〜〜ッ・・

北朝鮮GKの正面に蹴ってみたり(そのGKも何度もスーパーセーブ!)、偶然に相手プレイヤーに当たってゴールマウスを外れてしまったり、はたまた、まったく無人のゴールへ蹴り込むだけの状況でキックミスしちゃったり。

まるで、W杯予選の日本対シンガポール戦を観ているようだったぜ。フ〜〜ッ・・

そして、そのドラマチックな引き分けマッチの1時間後に、日本対中国の勝負マッチがはじまったっちゅうわけだ。

日本チームは、とても良いサッカーを展開した。だから、ハリルホジッチ監督も言っていたように、勝ち切れなかったのは、とても残念だった。

気候条件がよくなったこともあって(!?)、またトレーニングを何日も積み重ねることで(ハリル監督の弁!)、サッカー内容が、本来の「日本らしく」なったんだ。

要は、全体的な「動きの量と質」がアップしたことで、日本が標榜する、攻守にわたる組織サッカーが、とてもうまく機能するようになったというわけだ。

もちろん、まず守備。

日本が得意とする組織的な「連動ディフェンス」が、とても機能性の高いダブルボランチ(山口螢と遠藤航)に落ち着いたことで(!?)、とてもうまく機能するようになった。

そして、だからこそ、次の攻撃にも、勢いを乗せられるようになった。

勢い・・。

もちろん「それ」は、組織プレーと個人勝負プレーが「高み」でバランスするような、高質な「意志のサッカー」のことだ。

「そこ」では、前戦プレイヤーと後方からのオーバーラップが、とてもうまく「タテのポジションチェンジ」を魅せつづけていた。

・・良いサッカーでは、時として、前戦グループと後方グループが、そっくり入れ替わってしまうことだってある・・それでも、次の守備でバランスを崩すことがない・・

そんなニュアンスの内容を、オランダ伝説のスーパーコーチ、故リヌス・ミケルスから教えられたことがあったっけ。

まあ、「それほど・・」ではなかったにしても、前戦の武藤雄樹を中心に、かなりの頻度で、効果的なタテのポジションチェンジ(両サイドバックとボランチの押し上げ!)を機能させていたっけね。

特に、左サイドバックの米倉恒貴がブチかます、タテの決定的スペースへの飛び出しが、目立ちに目立っていた。

まあ、逆の右サイドは、永井謙佑が「フタ」をしてしまっていたから、どうしても丹羽大輝の飛び出しが(不運なことに!)限定されちゃってはいたよね。

やっぱり、タテのポジションチェンジというグループ戦術では、「前戦の選手」が主導権を握らなきゃダメなんだよ。

何せ、後方プレイヤーだったら、誰もが「次の守備」を気にしちゃうからね。そんなふうに、「後ろ髪を引かれない」ようにするのが、前戦のクリエイター(武藤雄樹)のタスクっちゅうわけだ。

ということで、左サイド。

もちろん「そこ」には、「動き」が緩慢で、守備でも「ぬるま湯プレー」に終始する(後述!)宇佐美貴史が陣取っている。

でも、一度「そこ」へタテパスを出して、宇佐美貴史にタメさせたり、そこに、抜群の活動量の武藤雄樹が入ってくることで、相手守備を引きつけられるでしょ。

そして、そこで空いた(相手にとっての!)サイドの背後スペースを突いて、米倉恒貴が「突貫小僧」にヘンシ〜ンっちゅう案配なんだよ。

そして、まさに「そのカタチ」から武藤雄樹の同点ゴールが生まれた。

左サイド裏のスペースへベストタイミングで抜け出した米倉恒貴から、ニアポストの決定的スペース向けた、グラウンダーの「ラスト・トラバース・クロス」が送り込まれたんだ。

帰国してからビデオで確かめたいけれど、この瞬間に、米倉恒貴と武藤雄樹のあいだで、どんなコミュニケーションがあったのだろうか。

とにかく武藤雄樹は、そのニアポストスペースへ、まさにベストタイミングで抜け出し、そしてダイレクトで、米倉恒貴からのラスト・トラバース・クロスをゴールへ流し込んだ。

その瞬間、「これは、行ける・・昨日のチャレンジなでしこの再現だ〜っ!!」なんて、心のなかで叫んだモノでした。

でも・・

そう、その後は、ものすごくパワフルで高さもある(また戦術眼にも優れた!)中国ディフェンスに、最後のところで「止められて」しまうシーンがつづくんだよ。

たしかに、決定的チャンスの流れは何度も作り出した。でも最後のところで、中国ディフェンダーの、忠実なマーキングやカバーリングに「止められて」しまう。

一度などは、中国ディフェンスを崩し切って送ったバック(ラスト)パスを、まったくフリーで上がってきた選手(誰だったっけ!?)が、フリーシュートを 放ったけれど、それも、ギリギリのタイミングでスライディングしてきた中国ディフェンダーの足で、はじき飛ばされてしまった。

溜息が出た。

ことほど左様に、この試合での日本チームは、サッカーの内容と結果を「一致」させられるだけの質実剛健ゲームを展開したんだ。

ハリルホジッチ監督も、これが今大会のベストゲームだったと、とても残念がっていたっけね。

まあ、結局は最下位で帰国することにはなったけれど、それでも、ハリルホジッチがアジアのサッカーを直接的に体感したり、彼が日本選手のチカラを見極めるプロセスも含めて、様々な収穫はあったとするのが妥当な評価でしょ。

その意味でも、この結果を、貴重な学習機会として、次につなげて欲しいモノです。

________

ここからは、ちょっとだけ、個人の評価をしましょうかね。

まず、前述した宇佐美貴史。

キックオフ直後に魅せた、まさに我々が期待するシーンそのものっちゅう感じの、中盤での「抜け出しドリブル」からの創造的な(危険な!)パス。

それを観て、「よ〜しっ!!・・今日のウサミは違うぞ〜っ!!」なんて、大いなる期待がアタマをもたげたモノでした。でも・・

そう。その後は、攻守にわたって、まったく鳴かず飛ばず。

特に、守備への(相手ボールホルダーや次のパスレシーバーへのアプローチ≒チェイス&チェック)が、まさに「ぬるま湯の極み」だった。

それじゃ、チームメイトの信頼だって勝ち取れない。

もっと、メリハリの効いた「意志のハードワーク」をブチかまし、それが実効につながっていけば、確実に次の攻撃プレーにも「活力」が湧いてくるのに。

そう、守備こそが、全てのスタートラインなんだ。

彼の場合は、そのいい加減なディフェンス姿勢が、そのまま次の攻撃プレーにも「根っこを張って」しまっていると感じられた。

あれじゃ、チームの誰も、彼の才能に頼ろうなんてしなくなるのも道理。

ホント、ガンバでのこれからが心配になった。

彼は、本当に、心を入れ替えなきゃいけない。あれ程の才能の持ち主なんだから・・。

とはいっても、監督が「強要」しても、彼のハードワークの内実が、本当の意味で向上するわけではない。

そう、最後は、自身の自覚なんだよ。

そのあたりのメカニズムについては、フラストレーションを吐き出しながら書き上げ、一昨日にアップした、「The Core Column」の「このコラム」も参照してください。

モデルは、サンフレッチェの森保一監督。

強いサンフレッチェの、基本を全力で「やり切る意志のサッカー」は、選手たちの自覚(こういうサッカーをやりたい!!)がなければ決して実現しないからね。

あと、(代表の常連組を除いて!)前戦のクリエイター武藤雄樹だけじゃなく、ボランチの遠藤航、サイドバックの米倉恒貴、などなど、「代表の新顔」が素晴らしい可能性をアピールしてくれたことも、とてもポジティブな出来事ではありました。

まだまだ、選手のプレー姿勢も含めて、言いたいことは山ほどあるけれど、まあ、今日は、こんなところでお開きにしましょう。

では、また、日本で・・。

============

 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]