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2014_国際マッチ・・自信と確信のアップと同時に、ティム・ケーヒルという不安材料の存在も忘れちゃいけない・・(日本代表対オーストラリア、 2-1)・・(2014年11月18日、火曜日)

まずは、「アギーレの采配」というテーマから入るしかないね。

彼は、前半の30分を過ぎたあたりから、遠藤保仁の「プレーイメージ」を、少し「下げること」で、限りなく、守備的ハーフコンビ(ダブルボランチ)・・というカタチにしたよね。

そしてゲームの流れが、明らかに変わっていった。

もちろん、その背景には、アギーレが会見で言っていたように、オーストラリアの「プレッシングの勢い」がダウンしていったこともあった。

それにしても、オーストラリアが、立ち上がりからブチかましてきた「プレッシングサッカー」は、迫力満点だった。

そのことで、人とボールを動かしつづけるという日本の組織サッカーが、うまく機能しなくなり、そして徐々に足も止まり気味になっていった。

とはいっても、全体的なディフェンスの機能性までも失われることはなかった。

そう、守備でのハードワークは、しっかりと機能していたんだよ。

だからこそ、オーストラリアの激烈なプレッシングサッカーに対しても、決して、ウラの決定的スペースを攻略されることはなかった。

でも、たしかに、次の攻撃へ繰り出していくべき「人数」が、少し足りなくなった・・というのも確かな事実だった。

たしかにオーストラリアにゲームのイニシアチブは握られていたんだ。でも彼らに、「それ」に見合ったチャンスを作らせたわけじゃない。まあ、立ち上がりの1本くらいだったですかね。

そのシーンでは、放り込みのアーリークロスを、ゴール前でのヘディング競り合いで「落とされ」、それをファーサイドスペースへ走り込んできた選手に、左足で叩かれた。チト、冷やっとした。

あっと・・アギーレの采配というテーマだった。

とにかく、ことほど左様に、ゲームのイニシアチブを握られていた日本だったんだよ。でも、そんな雰囲気のなかで、アギーレが、冒頭のように、柔軟に「動いた」というわけだ。

そう、それまで、1人で「前気味リベロ」のタスクをこなしていた長谷部誠の「中盤の底ライン」に、遠藤保仁を参加させたんだ。

これは、絶妙だったね。

サッカーは、その全てが、ディフェンスからスタートする・・

そう、オーストラリアが牛耳っていたイニシアチブのバックボーンは、中盤での積極ディフェンス(プレッシング守備)だったんだよ。

前述の、「全てがディフェンスから・・」というクダリを、もっと突き詰めたら、全ては「中盤ディフェンス」から始まる・・ってなことになるね。

だからアギーレは、ゲームのイニシアチブを「握り返す」ためにも、そして、そのことで(自信と積極性を取り戻した!?)日本代表が、攻撃に、より多くの人数を繰り出していけるように、中盤ディフェンスを強化したっちゅうことだ。

ゲームの流れを、着実に、そして効果的に把握し、素早く、そして柔軟に対応する。まさに、勝負師アギーレの「真骨頂采配」じゃないか。

誉めすぎかもしれないけれど、私は、そう解釈し、これからの評価ベースにしようと思っている。

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次のテーマが、アギーレがイメージする基本的な攻撃のやり方。

もちろん、ゲームの趨勢が(前述のように・・)日本へ傾きはじめてからの分析だよ。

要は、オーストラリアがイニシアチブを握った前半30分あたりまでの時間帯を経て、日本のフォーメーション(チーム戦術的プレーイメージ)の効果的なチェンジによってゲーム内容が日本へ傾いてからというニュアンスです。

言いたかったことは、中盤からトップにかけての縦横無尽のポジションチェンジ・・。

私は、それこそが、ザッケローニとの一番の違いかもしれないと思っているんだよ。

そう、「本題圭佑のお家」との決別・・。

特に後半は、武藤嘉紀(乾貴士)、本田圭佑、香川真司、岡ア慎司(豊田陽平)、そして後方から「交替に」攻め上がってくる長谷部誠と今野泰幸が、まさに縦横無尽のポジションチェンジを繰り広げた。

ものすごく爽快だった。

だからこそ、本田圭佑や香川真司、はたまた武藤嘉紀や乾貴士の、スピードを落とさずにパスを受けた体勢からの(だからこそ効果的な!)勝負ドリブルが、抜群の効果レベルを発揮した。

何度も、何度も、オーストラリア守備ブロックを(ウラの決定的スペースを)攻略してしまうのも道理ってな展開なんだよ。

もちろん追加ゴールを奪えなかったことは残念だったけれど、爽快ではあった。

数日前のホンジュラス戦コラムでも書いたけれど、アギーレの「やり方」が、どんどんと明確な輪郭を持ちはじめていると思う。そして、彼に対する興味&期待レベルも、どんどんアップする。

その試合コラムでは、「決してアギーレは、守備を固めてカウンター・・などといった後ろ向きのサッカーを標榜しているわけじゃない・・」とか、彼の発言として、「攻撃は、自由に、積極的にやれ・・走らなかったり闘わない者は使わない・・」などもあったコトなどを書いた。

でも骨子は、「理想と現実のクリエイティブなバランシング能力・・」というテーマだった。

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次は、今野泰幸。

とにかく、トリハダモノだった。この交替もまた、ハビエル・アギーレの「真骨頂采配」の一端ということだね。

この試合では、どちらかといったら、攻守にわたる決定的な仕事をイメージし、それを、「ある程度のハードワークのなかで狙いつづける・・」タイプの遠藤保仁とか柴崎岳ではなく、今野泰幸をグラウンドへ送り出したアギーレ。大正解だった。

(後出しジャンケンになっちゃうけれど!?)私も、その交替については前半からイメージしていた。

もちろん遠藤保仁や柴崎岳といった、攻守にわたる「クリエイティブに決定的仕事を狙いつづけ」、「そこ」から、決定的なゲームメイクを魅せちゃうようなプレイヤーは、とても大事な存在だ。

でも、このような、局面で激しくぶつかり合う、フィジカル要素が前面に押し出てくるようなタイプのゲーム(!?)では、クリエイティブで(より)ダイナ ミックなハードワーカータイプ選手の方が、ゲーム展開を逆流させ、そのイニシアチブを取り戻すために、より実効あるインパクトを与えられるモノなんだよ。

だからこそ、勝負師ハビエル・アギーレ・・というわけだ。

今野泰幸は、そんなアギーレの期待を、まさに120%満たしたと思う。

何度、中盤での相手タテパスを、(もちろん予測ベースの!!)電光石火の「寄せ」でカットしてしまったことか。

そして、「そこ」からスタートする、必殺の(ショート)カウンター。

今野泰幸がブチかました、攻守にわたって、極限の積極性で「仕事を探しつづけるプレー姿勢。素晴らしかった。ホントに・・。

まあ、彼についても、帰宅してからビデオを観察し、より深く分析しよう。

あっと・・、そういえば、今週の土曜日には、(Jリーグの)今シーズン最大の山場となる頂上決戦があったっけ(レッズ対ガンバ)。

フフフッ・・楽しみ〜・・

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それにしても、オーストラリアのゲーム戦術。

前から・・前から・・という、積極プレッシング(チェイス&チェックというハードワークの積み重ね)。とても上手く機能した。最初の30分間は・・。

アギーレも、90分間は持たないだろうと考えていた。まあ、私も(後出しジャンケン!?)。

でも、日本のような「器用で上手い組織サッカー」の勢いをダウンさせるためには、まず何といっても、人とボールの動きを「抑制」しなきゃいけない。

そのためのプレッシング。とにかくオーストラリアは、ボールホルダーだけじゃなく、次のパスレシーバーまで、素晴らしい勢いでプレッシャーを掛けつづけた。

でも、私は、アギーレ同様に、こんなハイテンポのプレッシングは続かないと思っていただけじゃなく、そのハードワークの割りには、次の攻撃で、「それ相応のチャンス」を作り出せているわけじゃないという事実も見つめていたっけ。

でも・・

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そう、ティム・ケーヒル。

前半も含め、まったくといっていいほどチャンスを作れなかったオーストラリアだったけれど、最後の最後で、ティム・ケーヒルの「アタマ」という必殺兵器が光り輝いた。

ご存じのとおり、これまでティム・ケーヒルには、何度も煮え湯を飲まれた。

だから日本にとってティム・ケーヒルは、「トラウマとして深く刻み込まれている・・」といっていい程の存在なんだ。

来年1月のアジアカップでは、勝つことが求められる。要は、勝負マッチが続くなかで、いつかは、「一発勝負」をモノにするための絶対兵器が必要になってくるっちゅうわけだ。

その、ティム・ケーヒルがブチ込んだ失点シーンでは、いかに彼が「フリーになった」のか・・というのも大事なテーマになってくる。

もしかしたらヤツは、日本マーカーの視線を「盗む」だけじゃなく、手を使ってマーカーを押したり引いたりしたかも(・・1998フランスW杯クロアチア戦でのシューケルのように・・ネ)。

そんな、極限の競り合いシーンの「内実」を確かめるだけじゃなく、ティム・ケーヒルのヘディングの強さ、巧みさについても、しっかりとビデオで確認しておく必要があるよね。

想像してみてくださいよ・・

・・オーストラリアとのアジアカップ決勝・・後半40分・・そのタイミングで、必殺兵器ティム・ケーヒルが送り込まれてくる・・

そのことを考えるだけで冷や汗が出てくる。フ〜〜・・。

まあ、とにかく、ビデオを駆使したイメージトレーニングが大事なんだということ「も」言いたかったということでした。

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内容で凌駕し、結果も出すことで深化する自信と確信。

この試合では、「それだけ」じゃなく、ティム・ケーヒルという、容易には超えられない「不安テーマ」も与えてくれたオーストラリア代表に感謝しましょう。

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ところで、先日、高円寺のパンディットという「トークライブハウス」で、ブラジルW杯の「ナマ対談本」に絡めて、後藤健生さんと対談をやったんですよ。

アナウンス(事前の告知)が足りず、参加していただいた方は少なかったけれど、その対談全体が、「You Tube」にアップされましたので、お知らせします。

2時間近くも話しまくったのですが、その第一部が「こちら」で、その第2部が「あちら」です。

また、下記の「ナマ対談本」についても二人で語っている部分があるのですが、編集部が、それを、このように「編集」したのだそうです。まあ、ということで「こちら」もご参照アレ。あっと・・ 新刊の基本情報については、「こちら」をご参照ください。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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