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2014_国際マッチ・・内容と結果という相反要素に対する「バランス感覚」・・(日本代表対ホンジュラス、 6-0)・・(2014年11月14日、金曜日)

「ブラジル戦でも、このメンバーでやってほしかったな〜・・もちろん、ブラジル相手にゴールを決めるのは難しかっただろうけれど、それでも、内容的には、少しはマシなゲームになったに違いないよな〜・・」

記者会見場へいくエレベーターのなかで、同僚のジャーナリストの方々が、そんなことを話していたっけ。

そりゃ、誰だって、そう思うよ。そう、このメンバーで・・。

要は、遠藤保仁と長谷部誠という、中盤の底に君臨する「大人のセンターハーフ(リンクマン!?)コンビ」が復活したというのが、「骨子」だね。

あっと・・、「アギーレのこれまで」と比較するだけじゃなく、ザッケローニが持ち込んだチーム戦術との「微妙な差異」についてね。

微妙な違い・・。

まず、アギーレ特有の、「前気味リベロ」というタスク。

前述したように、遠藤保仁と長谷部誠が、センターハーフコンビを組んだとも言えるけれど、まあ、実際には長谷部誠が、多くの時間「引いて」最終ラインの前でプレーしたよね。

でも私は、それを「アンカー」とは呼ばない。

そのポジション(戦術タスク)は、これまで森重真人や細貝萌が務めたけれど、アギーレが求める戦術的イメージを、最高のカタチで「体現」できるのは、やはり長谷部誠だった。

このことについては、以前から確信していたしコラムでも書いた。アギーレの「前気味リベロ」という戦術タスクの「内実」を明確にイメージできるからこそ、長谷部誠。

その、前気味のリベロ。

それは、最終ラインの前ゾーンで、攻守にわたって、自由に、そして効果的にチームの「コア」として機能できる能力を秘めた選手のこと。

決して、守備に比重が置かれ過ぎるのではなく、攻撃でも、後方のゲームメイカーや「リンクマン」として、最高の「目立たない機能性」を魅せつづけられる選手というイメージだね。

あっと・・、ザッケローニとの差異だった。

その前気味リベロもそうだけれど、それ以外の「大きな違い」としては、何といっても、武藤嘉紀というドリブラーを組み込んだことと、「本田圭佑のお家」を解体したこと(後述)が挙げられるよね。

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ところで、アギーレが志向する「チーム戦術」。

彼は、決して、守備を固めてカウンター・・などといった後ろ向きのサッカーを標榜しているわけじゃない・・と思う。いや、ここにきて、そう思いはじめている(そう期待しなきゃ、やってられない!?・・あははっ・・)。

私は、ブラジルW杯のときから、友人の欧州プロコーチ連中に、アギーレについての基本情報を尋ねていた。そして、その多くが、守ってカウンター・・ってなニュアンスを匂わせていたんだよ。

そりゃ、最初、少し「構え」気味に、アギーレを観察するのも道理だったよ。

でも、「攻撃は、自由に、積極的にやれ・・走らなかったり闘わない者は使わない・・」などの言動に象徴されるアギーレの仕事ぶりから、決して彼は、守備を固めてカウンターを仕掛けていくといった前時代的なサッカーをやろうとしているわけじゃないと思えるようになった。

そうではなく、「進化」の絶対的ベースである攻撃(積極)サッカーという基本ベクトルは崩さず、状況に応じて、勝利を追求する究極の戦術サッカー「も」徹底させられるような、柔軟なアイデアの持ち主だと思えるようになったんだよ。

もちろん、誰もが感じている通り、1回だけ招集され、その後まったく呼ばれなくなった若手選手たちが何人もいるとか、ブラジル戦での、「疲労が溜まってい るから・・」という理由で若手を先発させ、案の上の惨敗を喫したことについては、「?」は消えていないけれど、まあ・・ネ・・。

とにかく私は、様々なニュアンスを内包する「バランス感覚」という視点で、アギーレに期待するようになったんだよ。

アギーレは、理想と現実を、しっかりと使い分けられる・・。

前述のヨーロッパ情報のなかで、私がもっとも信頼するプロコーチが、そんなニュアンスの内容も言っていたんだ。

そうだよね・・

いくら良いサッカーを標榜し、その実現にチャレンジしたところで、今回のブラジルW杯のように惨敗を喫してしまったら、やはり発展ダイナミズムは減退してしまうからね。

そのこともあって、アギーレに対して、発展のための「内容重視サッカー」と、究極の「勝負優先サッカー」を、しっかりと使い分けられるプロコーチかもしれない・・という期待「も」ふくらんできたということかもしれない。

そして、この試合でしょ。

その期待が、具体的なカタチを描きはじめているって、感じられたわけだ。

今回のキリンチャレンジでのメンバーは、もちろん、来年1月にオーストラリアで開催されるアジアカップへ向けたものだよね。

それは、世代交代も含めた進化のための改革と、勝つための安定という、ある意味背反する要素をうまくバランスさせた陣容だと思う。

そして、そんな「クリエイティブな融合チーム」が、完璧なサッカーで、「あの強い」ホンジュラスを一蹴しちゃった。

アジアカップに優勝すれば、2018年ロシアW杯の前年(2017年)に行われるコンフェデレーションズカップに、アジア代表として参加できる。それは、ものすごく大事なことなんだよ。

「内容と結果」という相反するファクターを、いかに上手く高みでバランスさせるのか。勝負師ハビエル・アギーレのお手並み拝見というところだね。

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あっと・・、ここからは「個人」に関するテーマ・・。

まずは、香川真司と本田圭佑の、組織コンビネーション。

素晴らしかったじゃありませんか。

まあ、香川真司がブチかました、爆発的な、超ロングの勝負ライナーパス(ピタリと決まった!!)については、まさにイメチェンだから、これからも注視して いくけれど、ここでは、彼と本田圭佑が織りなした、互いに「使い・使われる」という秀逸な組織コンビネーションを採りあげたい。

ザッケローニ時代だったら、「本田圭佑のお家」にボールが収まったら、香川真司が再びボールに触るためには、もう、決定的なスペースへ走る(ハードワークする!)しかなかった。

それが・・

そう、この試合では、シンプルなタイミングで本田圭佑にパスを「付けて」も、すぐに、ボールが「戻されて」くるんだよ。

そう、人とボールの動きが、「誰かさんのお家」のせいで停滞することが、大幅に減ったんだ。

これは、とても興味深い現象だった。

だからこそ、素晴らしい人とボールの動きが回りつづけたし、本田圭佑や武藤嘉紀、はたまた香川真司や岡ア慎司たちがブチかます、(スピードのなかでパスを受けてからの!!)ドリブル突破も、抜群の効果レベルを魅せつづけた。

次が酒井高徳。

相手が、個のチカラに長けたホンジュラスの強者たちだったからこそ、酒井高徳の「1対1」の強さが際立っていた。

また、次の攻撃でも、とても巧みで効果的な「流れ」を演出したし、たまには、自分自身も、最終勝負シーンで、効果的な個人勝負プレーをブチかましたっけ。

もちろん長友佑都も復帰してくるだろうから、これからは、サイドバックのポジション争いからも目を離せないよな。

乾貴士。

フランクフルトでの好調を、高みで維持している。でも、ボールがないところでの動きの量と質では、チト不満な部分もあった。もっと、もっと、自分から仕掛けていっていい・・ってな印象もあったんだよ。帰宅してから、ジックリとビデオで観察しよう。

武藤嘉紀。

良かったと思う。まさに、突貫小僧。

相手が誰でも、臆することなく、「まず」チャレンジする。その積極的な姿勢は、チームに元気を与える。良かった、よかった。彼と柴崎額は、まさに「アギーレ・チルドレン」だからね。

そして、遠藤保仁と柴崎岳。

この2人を比較するは止めよう。でも・・

そう、この2人については、攻守にわたって、クレバーに「勝負どころを狙う」という、ボールがないところでのプレーが、とても似通っている。

だから、彼らの評価は、「何を狙っているのか・・」、「そこでの実行力と実効性」、そして「その狙いの量と質」等などといった要素で決まってくるでしょ。

このテーマについても、帰宅してからのビデオ評価の対象だね。そう、自分自身の学習機会としても・・ネ。

いま、伏見という駅に向かう地下鉄のなか。電車のなかで書いているから、どうも、酔いはじめてしまったかもしれない。もう止めよう・・

ということでホテルに帰ってきたけれど、もう今日はチカラがない。帰宅して、ビデオで観察してから、「The Core Column」の連載を、久しぶりにアップしよう。

では、また〜・・

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ところで、先日、高円寺のパンディットという「トークライブハウス」で、ブラジルW杯の「ナマ対談本」に絡めて、後藤健生さんと対談をやったんですよ。

アナウンス(事前の告知)が足りず、参加していただいた方は少なかったけれど、その対談全体が、「You Tube」にアップされましたので、お知らせします。

2時間近くも話しまくったのですが、その第一部が「こちら」で、その第2部が「あちら」です。

また、下記の「ナマ対談本」についても二人で語っている部分があるのですが、編集部が、それを、このように「編集」したのだそうです。まあ、ということで「こちら」もご参照アレ。あっと・・ 新刊の基本情報については、「こちら」をご参照ください。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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