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2009_天皇杯四回戦・・「ガンバレ木村浩吉!」ってなニュアンスのコラムになってしまった・・(MvsFR, 1-2)・・(2009年11月15日、日曜日)

「木村さんが言うように、選手は、最後の最後まで、全身全霊で闘いつづけていた・・わたしは、過去二年間の木村さんの仕事を高く評価しているのだけれど、辞めることが決定しているにもかかわらず、チームが一つにまとまり、いつものような高いモティベーションで闘いつづけたことは(そのこと自体が)木村さんの優れた仕事を、如実に物語っていると思う・・とはいっても、あと三試合でチームを去ることになる・・そこで、もっとも心残りなコトはなんだろうか?」

 ちょっと微妙ではあったけれど、リーグ残り三試合は、たぶんマリノスの試合は観られないだろうから(木村浩吉監督と記者会見で対峙することもないだろうから)最後の機会ということで、木村浩吉監督に、何か話す機会をもってもらいたくて、そんな質問をした。

 「心残り・・それは、とても多いんですよ・・一言ではまとめられない・・まあ、選手個々の理想的な組み合わせなども含め、チームの最終形を見いだせなかったということが、もっとも心残りなコトですかネ・・私はもう指揮を執らないけれど、選手たちは、来年のアジアチャンピオンズリーグへ参加したいという意欲や、このチームで、一試合でも多くやりたいという強い意志で、最後の最後まで闘ってくれた・・」

 木村浩吉監督は、たしかに言葉をうまくまとめられないでいるようだ・・。でも最後に、とても大事な一言を発することは忘れなかった。

 「でも、まあ、これで私のキャリアが終わるわけじゃありませんから・・(次の機会には、より早く、強固で実効レベルの高いチーム最終形を見出すというテーマも含め、かならずもっと大きな成果をあげてやる・・というニュアンス!!)」

 そんな言葉を聞き、思わずこちらも、「そうだ・・その通り・・」なんていう言葉が、口をついてしまった。私も、「失業中のプロサッカーコーチ」だからネ。急に個人事業主同士の仲間意識が頭をもたげたっちゅうわけです。他のジャーナリストの方々には申し訳なかった。ご容赦アレ。あははっ・・

 ところで、失敗は成功のもと・・という普遍的なテーマ。

 木村さんの二年間は、たしかに目立った結果は残せなかったけれど、 総体的にみたら、 決してマイナス評価が先に立つような低次元の仕事内容じゃなかった(前述したように、私は高く評価している)。

 でも、そのプロセスでは、多くの、小さな戦術&心理マネージメント的な失敗や修正を(要は、学習プロセスを!)積み重ねたに違いないし、良い外国人に恵まれなかったという、クラブマネージメント的な不運なども含め、プロの現場で、深く、動的に学習しつづけたに違いありません。

 私は、木村浩吉は、とても学習能力の高いプロコーチだと思っているのですよ。だからこそ『次のステージ』では、必ず、より優れたパフォーマンスを発揮してくれるに違いないと確信するわけです。

 彼は、日本サッカー界が育てていかなければならない貴重な人材・・。そのことが言いたかった。

 ということで、最後に、簡単に試合を振り返りましょうかネ。そこでは、全体的なサッカー内容で、マリノスが勝っていたことは確かな事実だったネ。要は、徹底した組織プレーが、個のゴリ押しサッカーを上回った・・

 もちろんフロンターレも、例によっての素晴らしいディフェンスをベースに、攻撃では、個のチカラを前面に押し出しながら危険な仕掛けを繰り出してはいたけれど、その絶対的ベースである(絶対的なベースでなければならない!)組織プレーの内容が、ちょっと減退気味だと感じられたのです。だから、ツボにはまれば圧倒的なパワーを発揮するフロンターレだったけれど、攻守にわたる組織プレーのコノテーション(言外に含蓄される意味)という視点では、課題の方が目についた。

 そう・・攻守にわたる組織プレーのコンダクターである牛若丸(中村憲剛)のケガによる不在・・という事件のことです。

 これは、日本代表でもそうだけれど、フロンターレと二っては、とても、とても大変な事態なのですよ。何せ、アントラーズやガンバと優勝を争うリーグも、残り3試合というところまで押し詰まっている状況で、組織プレーマインドのコンダクターを失ってしまったのだから・・

 そんなフロンターレに対して、マリノスは、最後の最後まで、組織プレーと個人プレーが、とても素敵にバランスしつづけていました。たしかに同点ゴールは、山瀬功治のスーパー勝負ドリブルシュートだったけれど(そこで山瀬が魅せた、素早いフェイント&抜け出し&正確なシュートには舌を巻いた・・岡田武史も、一度ビデオで確認すべきだね・・)それにしても、そこへ至るまでのプロセスでは、局面での力強いボールハンドリングをベースに、小気味よく人とボールが動きつづけるのマリノスだったのです。

 そんな攻撃にしても、もちろん、チームが内包する『優れた守備意識』という絶対的な基盤に支えられていることは言うまでもない。

 フロンターレも良かったけれど、マリノスも素晴らしい。だから守備では、互角のせめぎ合いが展開された・・という表現が妥当だろうね。でも、攻撃では・・

 そんな、高質なマリノスのサッカーだからこそ、わたしは木村浩吉を高く評価しているのです(アッと・・もちろんフロンターレの関塚隆監督もネ)。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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