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2009_中村俊輔・・とても素敵なデビュー戦だったね・・(2009年8月5日、水曜日)

立ち上がりの1分。俊輔を、世界レベルの強者とのギリギリの駆け引きという洗礼が待ち構えていた。

 相手右サイドバックのオーバーラップを、全力ダッシュで忠実にマークした俊輔だったけれど、そのサイドバックが、タテへいく振りから、急に方向転換し、スッと俊輔の眼前スペースへ入り込んでタテパスを受けたのですよ。

 まあ、相手のトラップがちょっと大きくなったこともあって、センターバックの上手い対応がピンチを救ったモノの、そのまま中央へ持ち込まれてシュートされた日にゃ、大変なピンチに陥っていたかもしれない。

 そのシーンでは、一瞬ボールウォッチャーになり、相手の急激な方向転換に対応できなかった中村俊輔。またその一分後には、ちょっと足を止めて(集中力を欠いて!?)タテパスを受けたことで、そのトラップを狙っていた相手『二人』の必殺タックルを受けてしまう。結局ファールになったけれど、そんなシーンを観ながら、このようにして世界最高レベルの駆け引きや勝負の体感を積み重ねていくことこそが、俊輔を大きく飛翔させるはずだと期待がふくらんだモノですよ。そう、日本代表のためにも・・ネ。

 しかし、その数分後には、相手のミスからボールを奪い返し、そのまま左サイドのスペースを、全力の「タテのスペースをつなぐ戦術ドリブル」で上がっていくという見せ場を演出する中村俊輔。そして彼がイメージしたとおり(相手ディフェンダーの前に入り込むことで)ファールを誘った。素晴らしい・・。

 まさに、この積極的なプレーが、中村俊輔の、成功裏に進行したスペインデビューのエネルギーにあふれた「助走」になったと思っている湯浅です。

 その後、左サイドでの、ルイス・ガルシアとの素晴らしいワンツーを決めたり、魅惑的なボールコントロールで相手を翻弄し、次の効果的な攻めにつながるパスを回したり。そこで演出される「タメ」は、忠実なディフェンス参加と、忠実なパス&ムーブに代表される、スペース活用という明確なイメージ目標を目指す攻撃でのシンプルプレーリズムがあるからこそ、とても重要な攻撃ツールになるのです。

 ちょっとひいき目で見過ぎているだろうか。いや、そんなことはない。忠実で実効ある守備参加と(忠実チェイス&チェックだけじゃなく、勝負所では、相変わらず、スリのようなクレバーでスマートなボール奪取を魅せる!)また攻撃でのボールがないところでのアクションの量と質(コンビネーションで発揮される実効ある機能性!)という基盤があるからこそ、彼の「天才」が存在感を発揮する。

 そのことは、チームメイト達も、しっかりと認めていると感じられる。試合が進むなかで、より積極的に俊輔を捜す(積極的にパスを回す)ようになったと感じます。攻守にわたる『汗かき組織プレー』。それこそが、天才を、本当の意味で、グラウンド上で光り輝かせる。どんな天才でも、味方の「協力なし」には、まともなプレーはできないからネ。もちろん「あのディエゴ」を除いて・・

 そして、そんなシンプルプレーリズムが、前半19分の先制ゴールを引き出します。最初は、シンプルなタイミングでの正確なクロス・・そして次が、ゴールを決めたルイス・ガルシアへの必殺のダイレクト・スルーパス。前半終了間際の(オフサイドになってしまったけれど)一発ロングスルーパスからのタムードのゴールシーンも含め、ちょっと鳥肌モノだったね。

 正直に言って、本当に中村俊輔がスペインで活躍できるかどうか疑問だったのですよ。でも、この試合を観ていて、確信が深まった。

 ダイジョ〜ブ!! 俊輔は、スペインでも、日本人のアイデンティティー(≒誇り)の基盤強化に大いに貢献してくれる!

 まあ、エスパニョールというチームの事情も、殊の外ポジティブに作用しているのかもしれないね。バルセロナの陰に隠れ、つねにリーガ中位で(昨シーズンは途中まで最下位で降格も心配された!)目立たない存在・・!?

 とにかく、これからの中村俊輔の活躍(彼自身だけではなく、日本サッカーの発展への大いなる貢献も含めて!)が楽しみになってきたじゃありませんか。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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