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2009_中村俊輔・・とても良いスタートラインに着いたシュンスケ・・(2009年8月31日、月曜日)

中村俊輔は期待されているね・・。ボールの動きを観ながら、そんなことを感じていました。

 近くにいれば、もちろんボールを付けるし(その際の、ごく自然に俊輔を探してパスを回すという雰囲気が、彼に対する信頼の高さを感じさせる!)、また逆サイドでゲームを作っている状況では、ルイス・ガルシアとかイバン・アロンソといったところが、しっかりと「タメ」てから(要は、相手ディフェンスブロックをそのサイドへ引きつけてから)逆サイドでフリーになっている中村俊輔へ正確なパスを飛ばしたりする。

 要は、彼がフリーになることを意識してタメを演出し(確実なパスを回し)そこから必殺のサイドチェンジパスを送り込むというイメージ。

 そんな仕掛けサイドチェンジの状況は、何度も観察できた。それは、日頃から、その「仕掛けシチュエーション」を、しっかりとイメージトレーニングしているということの証明でしょう。

 そして中村俊輔は、例外なく「ドリブル勝負」を仕掛けていく。それもまた、どのように仕掛けていくのかというチーム戦術に組み込まれているということです(俊輔も、その状況で自分に何が期待されているかをしっかりと理解しているということ)。

 スピードではなく、特異とまで表現できそうな「天賦の才のボールコントロール」を武器に、局面における「フェイント&逆モーション取り」で、一瞬にして相手マーカーのウラを突いてしまう(置き去りにしてしまう)中村俊輔。その「魔法」は、エスパニョールでも抜群の存在感を発揮している(チーム内で格段の期待感を醸成している)と感じます。

 でも、ゲーム全体の構成や仕掛けの流れなど(ボールの動き方をベースにした組織プレーの実質的なタイプ!?)をコントロールするゲームメイカーという存在では「まだ」ないよね。そこには(この試合には間に合わなかったけれど・・)イバン・デ・ラ・ペーニャもいるしね。

 とはいっても、中盤で中村俊輔がボールを持てば、最前線のタムードだけじゃなく、後方からも、二人目、三人目が、決定的スペースを狙ったフリーランニングを仕掛けていく。そして俊輔から、例によっての「これぞクリエイティビティー!」という、正確で効果的なロング・スルーパスが繰り出されていくのですよ。そんなシーンでの俊輔は、たしかに、チームの中心的なゲーム&チャンスメイカーという雰囲気を漂わせている。

 とにかく、いまの中村俊輔は、まだ、組み立てプロセスでは組織的な駒として、また攻撃プロセスでは、仕掛けフローにおける(重要な!?)個の勝負プレーの駒として、チーム内のポジショニングを確立している最中ということなんだろうね。

 それでも、最初右サイドからスタートした中村俊輔は、時間の経過とともに、サイド方向だけじゃなく、タテ方向でも、ポジションチェンジを演出していった。そして、汗かきのディフェンスにも精を出すようになっていった(相手サイドバックのオーバーラップに対し、予測スタートから、数10メートルも全力で戻ってスペースを埋めた汗かきマーキングプレーなど、とにかく『意志』の内容が広がりを魅せはじめたと感じられた!)。要は、徐々に、攻守にわたるゲームの実質的な流れに乗れるようになっていったということですかネ。

 とはいっても、エスパニョールは、仕掛けプロセスでのコンビネーション(流れるような組織パスプレー)という視点では、まだまだ本当のチームにはなっていないというのも確かな事実。まあ、イバン・デ・ラ・ペーニャの不在ということもあるんだろうけれど、パス&ムーブ(またボールがないところでの動き)の量と質が、まだ効果レベルに達していないと思うのですよ。

 そんなこともあって、中村俊輔に、そのポイントでもっと存在感を発揮してもらいたかった筆者なのです。もちろん、相手にボールを奪われないコントロールとか、局面での魅惑的な「魔法」とか、個のレベルでは、とても魅惑的なプレーを披露したけれど、それだけじゃなく、自分がコアになって、勝負のコンビネーションを仕掛けていく・・とかネ。

 まあ、とはいっても、周りの味方に、そんな組織イメージが出てきていないようだから、中村俊輔が、ちょっと逡巡してしまうのも分かる。何度か、仕掛けのボールキープから「ワンのパス」を出してパス&ムーブを・・なんていう雰囲気の状況はあったけれど、周りの動きが連動しそうもなかったことで(!?)結局は、魔法のフェイント勝負へと切り替えていた。フムフム・・

 とにかく、中村俊輔が、エスパニョールに参加することで、より一層の発展の機会を得たことだけは確かな事実だと思いますよ。

 もちろんこちらは、(前述したように)日本代表チームと同様に、サッカーの流れのコア(イメージドライバー)として、攻守にわたってリーダーシップを握るというところまで早くいって欲しいと願っているわけです。まあ、彼のことだから、エスパニョールでは「まだ駒」・・でも日本代表じゃイメージリーダー!・・という風に、動きの量と質も含め、プレーイメージを使い分けられるはずだけれどネ。とにかく、中村俊輔のこれからが楽しみです。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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