トピックス


2009_ナビスコ準決勝・・様々な意味で、とてもエキサイティングな勝負マッチだった・・久しぶりに時間を忘れて見入ってしまった・・(MvsFR, 1-1)・・(2009年9月6日、日曜日)

期待していた通り、とてもエキサイティングな勝負マッチになった。

 フロンターレ関塚隆監督も、「第一戦で2-0という勝利を収めたからといって、この試合がどうなるかは、まったく五里霧中だった・・とにかく、一点目をどちらが取るかで、ガラッと状況が変わってしまうから」なんて言っていた(わたしも前回のコラムで同じことを書いたよね)。

 その意味で、この勝負マッチは、とても興味深いゲーム戦術コンテンツを内包しながら立ち上がったと言える。

 まあ、フロンターレが置かれている状況からして、また関塚監督の次の一点が勝負という発想からして、フロンターレが、第一戦と(まあ・・その後半の内容と)同じように、しっかり守って(パワーとスピード&テクニックを併せ持つ天才肌スリートップによる!?)必殺カウンターを仕掛けていくというイメージで立ち上がったのは当然だったけれど、対するマリノスが、山瀬功治と坂田大輔をベンチに置き、金根煥を先発させるという布陣でスタートしたのは、ちょっと興味を惹かれた。

 そして案の定、マリノスは攻めあぐみ、逆にフロンターレが、鋭いカウンターを仕掛けていくという展開になっていく。特に前半35分のカウンターシーンは決定的だった。抜け出したチョン・テセが、マリノスGKと一対一になり、その直後には、こぼれ球をジュニーニョがフリーシュートを放った。でも、その両方のピンチを、マリノスGK飯倉大樹が身体を呈して防いだ(スーパー・セービング!!)。

 「あれ」が決まっていたら、(アウェーゴールということも含めて)その時点で勝負ありだったから、ちょっと胸をなで下ろしていた筆者だったのですよ。

 アッと・・別に、どちらかのチームに荷担していたわけじゃありませんよ。こちらは、できる限り長く、エキサイティングな勝負を観つづけたいだけだったのですよ。でも、まあ・・ホッとしたことの「そんな」背景心理は、ギリギリの勝負を懸けている両チームの監督さんにとっては、ちょっと不純な態度だったかもネ。スミマセンね、関塚さん。

 前半のマリノスでは、たしかに金根煥のトップというゲーム戦術は(最初の頃は!?)ある程度の効果を生み出していた。金根煥の強烈なヘディングからのこぼれ球を狙うマリノス・・。だからフロンターレ守備ブロックが、過度に、そんなマリノスの仕掛けイメージに「引っ張られ」て、ちょいとイメージのバランスを崩すシーンがあったかもしれないということです。

 それでも、そんなマリノスの「仕掛けの変化」に対しても、柔軟で強力なフロンターレ守備ブロックは、すぐに対処してしまうのですよ。本当に、よくトレーニングされている守備ブロックだね。たしかにマリノスが試合のイニシアチブを握っているけれど、肝心の決定的チャンスは、うまく作り出せない・・という展開がつづく。

 そんな減退気味のマリノスの攻撃を観ながら、「仕掛けにシオとコショーが足りないナ〜〜」なんて思っていた。そう・・山瀬功治と坂田大輔。

 その二人が、後半の立ち上がりから登場するのです。山瀬功治は、狩野健太との交代。また坂田大輔は、 渡辺千真との交代。そしてマリノスの仕掛けに勢いが乗っていく。

 この交代について、マリノス木村浩吉監督が、「この二人については、後半の勝負所で投入することを考えていた・・」とコメントしていた。それに対して、ちょっと質問してみた。「後半の勝負を懸けるときに、この二人を投入すると言われたが、木村さんにとって、勝負所という表現には、どのような意味合いが含まれているのだろうか?」

 それに対する木村浩吉監督のコメントだけれど、その大事なニュアンスをまとめると、こんな感じになりますかね。

 「彼らは、強引に、ドリブルやコンビネーションで仕掛けていける選手たち・・相手が疲れてきたタイミングを見計らい、相手がもっとも嫌がるこの二人を投入すれば、必ず大きなチャンスが訪れると思っていた・・また、彼らには、特にサイドから崩していくキッカケになって欲しいと指示をし、まさにその通りのプロセスで何度もチャンスを作り出してくれた・・」

 そして遂にマリノスが、後半23分に、値千金の同点ゴール(=大事な、大事な、最初のゴール)を奪うのですよ(まあ確かに、PKで挙げたこの先制ゴールのキッカケは、山瀬や坂田の強引なドリブル突破チャレンジではなく、金根煥への一発ロングパスだったけれど・・)。そして同時に、一発ロングパスに合わせて決定的スペースへフリーで抜け出した金根煥に対するファールで、フロンターレ最終ラインの重鎮、井川祐輔が一発レッドを受けてしまうですよ。

 そんなだから、マリノスに吹く追い風が増幅していくのは当然の流れでした。それまでも、山瀬と坂田の登場によって「イケイケの勢い」に乗っていたマリノスだから、一人多くなったことが殊の外ポジティブに作用するようにもなったのですよ。

 そんな彼らの心理は、・・もう一点奪ってタイにしてやる・・この勢いで攻め込めば三点目ゴールだって難しくないぞ・・ヨ〜シ、このまま勝負を決めてやるぞ・・ってなことだったんだろうね。

 逆にフロンターレは、「やるべきコト」がより明確になったとも言えるけれど、最初は、井川祐輔の退場劇によるポジションの組み替えにちょっと戸惑っていた感があった。同点ゴールの3分後には、守備的ハーフからセンターバックに下がった寺田周平のポジショニングミスが原因で(!?)坂田大輔に、こぼれ球からの100%シュートを打たれたりした。その絶体絶命のピンチは、坂田大輔がシュートを外してくれたから大事には至らなかったけれど・・。

 その後も、長谷川アーリアジャスールや栗原勇蔵といった後方のプレイヤーが押し上げてシュートを打つなど、フロンターレは押し込まれつづけていた。まさに、風雲急を告げるゲーム展開。この時点では、誰もが、マリノス有利と感じていたに違いありません。とはいっても私は、逆に、フロンターレの守備ブロックが、再び強固な「まとまり」を魅せはじめてきたと感じたモノですが・・

 そして後半42分にコトが起きてしまう。(前半の絶対的ピンチを救うなど)素晴らしいゴールキーピングを魅せていたGK飯倉大樹が、フロンターレの天才ジュニーニョの「挑発」に激高し、彼を突き飛ばしてしまうのです。その瞬間、誰もが、グラウンド上で起きたことが信じられずにフリーズしたことでしょう。もちろん一発レッド。フ〜〜ッ・・

 そしてその数分後、「したたかな」ジュニーニョが同点ゴールを奪って万事休す・・ってな顛末に落ち着いた次第。

 サッカーの内容だけでも、興味深くエキサイティングなコンテンツがてんこ盛りだったけれど、それだけじゃなく、退場ドラマによるゲームの流れの劇的な変化といった学習コンテンツもあった。とにかく面白かった。ホント、久しぶりに時間を忘れて見入ってしまいましたよ。

------------------

 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

=============

 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]