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2009_ナビスコ・・いまのレッズでは、ポジティブな心理循環が回りつづけている・・(レッズvsジュビロ、1-0)・・(2009年6月3日、水曜日)

「ゲーム立ち上がりから60分くらいは良かったのだが、その後は、疲れもあって、集中が途切れがちになった・・それにしても山岸範宏はよく守った・・」

 そうネ〜〜・・。でも、ジュビロが明らかにゲームを支配してチャンスを作り出しはじめたのは、残り20分くらいからだったから、まあ70分間は、レッズが、あのメンバー(フォルカー・フィンケの表現)でゲームの流れを支配していたといっても過言じゃなかったネ。

 その最後の20分間にジュビロが作り出した絶対的なチャンスは、少なくとも「4本」はあったね。ということで、レッズが作り出した決定機と相殺しても、まあ引き分けがフェアな結果だったかもしれないね。

 それにしても残り20分のジュビロは、素晴らしくダイナミックな攻撃を仕掛けていった。中盤での自信あふれるキープ(タメ)から、スペースのある逆サイドへ展開するジュビロ。そこへ、後方からの十分なサポートが急行してくることで数的に優位な状況を演出し、そこから決定的スペースを攻略して危険なクロスを上げてくる。

 バーを直撃したシーンだけじゃなく、シュートが山岸範宏の「正面に飛んだ」から事なきを得た絶対的ピンチもあった。もちろん山岸範宏も、フォルカー・フィンケが高く評価していたように、素晴らしいポジショニング(だからシュートを正面で受けられた!?)やセービングで失点を防いだわけだけれどネ。

 まあ、サッカーなんて「そんなモノ」さ。そう、偶然と必然が複雑に絡み合う、究極の『自由度』を謳歌するボールゲーム。

 そこでは、偶然ファクターが支配する現象に対して、一生懸命に「必然的な意味付け」をしようとする人たちもいるけれど、まあ、あまり肩肘張らずに、ツキもドラマの内だぜってなノリで鷹揚(おうよう)に構えることも(=心から試合を楽しむことも)錯綜したボールゲームであるサッカーを理解するうえで必要なことかもしれないよね。あははっ・・

 ところで、フォルカー・フィンケの発言にあった「このメンバーで・・」というニュアンス。要は、主力に怪我人が多いだけではなく、日本代表にも主力メンバーを取られているということを言っていたんだろうけれど、それでもレッズは、山田暢久・坪井慶介・鈴木啓太・細貝萌による「中央ゾーンの素晴らしいダイナミックカルテット」にリードされた若手のガンバリもあって、立ち上がりから70分あたりまで、確かにゲームの「コア」をしっかりと牛耳っていた。

 攻め込まれても、肝心なところでジュビロの仕掛けを潰し、攻めては、何度もジュビロ守備ブロックのウラの決定的スペースを攻略したり、決定的クロスが送り込まれたり、高橋峻希(高原直泰、エジミウソンetc.)がドリブルで突破して決定的シーンを演出したり・・

 皆さんもご存じのように、ナビスコカップの底流には、若手にチャンスを与えるというコンセプトがある。その意味じゃ、レッズほど、そのコンセプトに忠実に(コンセプトを活かし切りながら)戦っているチームはないかもしれない。もちろん、そこには「偶発的な(仕方のない)背景要因」もあるわけだけれどネ。

 ということで、レッズの若手。ホントに、どんどん出てくる。原口元気と山田直輝につづき、高橋峻希、西澤代志也、濱田水輝、林勇介・・

 この試合でも、永田拓也が「Jデビュー」を果たした。注目すべきは、彼らは「出てくる」だけじゃなく「実効あるプレー」も披露しちゃうということ。永田拓也にしても、たしかにミスはあるけれど、それによって縮こまってしまう気配など微塵も感じさせず、攻守にわたる吹っ切れたリスクチャレンジで存在感を魅せつける。フムフム・・

 彼らが魅せつづける、不思議とさえ感じる自信の「背景リソース」だけれど、私は、多分に、原口元気と山田直輝のパフォーマンスに拠るところが大きいと思っています。それまでのユースチームの仲間が(まあ学年が違う選手もいるけれど・・)プロでも完璧に通用するプレーで存在感を魅せつけるんだからね。

 彼らが、「そうか〜〜・・それじゃ、オレだって、ビビらず、いつものような吹っ切れた気合いで(楽しんで!?)プレーすればチームに貢献できる(プロでも十分に通用する)に違いない・・」と、自信をもってプレーできるようになるのも道理なのですよ。いまのレッズには、そんな「心理的なポジティブ循環の輪」が確固たる輪郭をもちはじめている。ホント、素晴らしい。

 「選手とコーチの巡り合わせ」など、偶発的なファクターもあるだろうけれど、そんな「ポジティブ心理循環」が、大変な勢いで回りつづけている背景に、フォルカー・フィンケの(若手育成における成功体感を積み重ねた!?)プロコーチのウデ「も」あることは言うまでもないよね。フムフム・・

 そのフォルカー・フィンケだけれど、会見で(今回も!?)こんな興味深いニュアンスの発言をしていた。

 「いま田中達也がもどってきたら、どうなるだろう・・(この試合でも素晴らしいパフォーマンスを披露し、どんどん調子を上げていると筆者が評価している!)高原直泰を外すのかい?・・それともエジミウソンかい?・・また、センターバックとしても素晴らしいリーダーシップと実効パフォーマンスを魅せつづけている山田暢久だけれど、いまの彼ならば、そのまま、そのポジションで使いつづたいと思うのが自然だと思ったりもするんだ(トゥーリオのことか〜〜!?)・・」

 「いまの私は、プロコーチとして、厳しいポジション争いのなかで(誰を使うのかという)決断をすることに対する喜びを感じているんだ・・それは監督として、とても贅沢な悩みと言えるかもしれない・・」

 そう・・そんな決断もまた、本来の監督の仕事なのです。もちろん、その後の、様々なカタチでぶつかり合う『心理的エネルギー』を、あるバランス範囲内に収めるような「巧みな心理マネージメント」なども含めてね。

 チームは「不満」のカタマリなのですよ。そんな、不満という心理エネルギー(≒心理のダークサイドパワー)を、チーム共通の目標を達成するための闘うエネルギーへと変換していく。それこそが、プロ監督の醍醐味かもしれないね。

 それにしても、フォルカー・フィンケの発言には、様々な興味深いニュアンスが込められている。例えば、プロの監督は、選手に対して、マスメディアに対して、そして社長に対してと「三つのタイプの言葉」をうまく使い分けられなければならない・・とか、今日の「チーム内の不満マネージメント」に関する発言とか・・

 流石(サスガ)、世界に冠たるフットボールネーションのドイツサッカー界でも、究極の「アウトサイダー」として特異な存在感を発揮しつづけていたフォルカー・フィンケではあります。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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