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2009_ナビスコ・・若手の実効ある発展による期待の高まり・・(レッズvsアルビレックス、2-0)・・(2009年5月30日、土曜日)

「ロングスパンという視点でも、今日のゲームには、我々にとって重要なコンテンツが詰め込まれていた・・なかでも(レッズの将来を担う希望である)若手に、発展の確かな手応えを感じたことは大きい・・」

 記者会見の冒頭でフォルカー・フィンケが、「ロングスパンという視点でもポジティブな内容があった・・」という趣旨の発言をした。それに対して私が、「その内容だが、具体的には?」と質問したのだけれど、それに対して彼が、冒頭のニュアンスの発言をしたというわけです。

 例によって、フォルカー・フィンケの言葉を、とてもスムーズで正確にまとめるコーチ「モラス雅輝」さんの通訳が心地よい。

 先日のコラム(11節のジェフ対サンフレッチェ戦)で、サンフレッチェ通訳の「杉浦大輔さん」の優れた仕事について書いた。その「コラム」も参照して欲しいのですが、それに対して、すぐに「杉浦さんはサッカーマン・・ドイツでプレーしていたところを広島にスカウトされた・・いまでは、実質的にはコーチ兼任・・」といった詳しい情報が寄せられてきた。フムフム・・

 でも、ドイツ語コミュニケーターとしてのウデでは、やはり「モラス雅輝」さんが第一人者だろうね。彼自身(本場のライセンスを取得した)プロサッカーコーチであり、ドイツ語圏であるドイツとオーストリアをベースに活動していたところを、レッズに請われて来日(帰国)した。そんなモラス雅輝さんだから、フォルカー・フィンケが意図するニュアンスまで(たまにはそのバックボーン的な部分も含めて)しっかりとした日本語にまとめて発信できるのも道理だね。

 そうそう・・。この『コミュニケーター』というテーマについては、後日、わたしのHPで採りあげることにしよう。とにかく彼らは、単なる通訳じゃないし、わたしも、当時の読売サッカークラブで、コーチとしてだけではなく、コミュニケーターとしても機能していたからね。これは面白い記事になるかもしれない・・

 あっと、またまたハナシが逸れた。というわけで、レッズの若手というテーマ。

 この試合でのレッズは、強いアルビレックスを相手に(もちろん押し込まれる時間帯もあったけれど)全体としては立派なサッカーを展開し、順当な勝利をもぎ取ったと言えるでしょう。その流れのなかで、レッズの若手が、さまざまな視点で「深〜い体感」を積み重ねられたことは、フォルカー・フィンケが言うように、とても大きな意義があったはずです。

 例えば、「J」での初ゴールを決めた西澤代志也。そのゴールだけではなく、それを決める直前には、25メートルはあろうかという(相手ゴールのバーを直撃する!)弾丸ミドルシュートをぶちかました。

 皆さんも観られていた通り、彼は、そんな派手なシーンを(意を決して≒主体的に!?)作り出す前には、何度も大きなミスを犯していたのですよ。

 明かなタテパスのミス・・相手の決定的なカウンター攻撃のキッカケになったミスパス(これを決められていたら勝負がどうなっていたか分からない!)・・それにボール奪取勝負でのミス・・などなど・・

 それは、彼が中途半端な心理でプレーしていたから起きたミスに他なりません。強烈な意志を込めた確信のプレーではなく、「逃げのマインド」も内包する中途半端なプレー。それが大きなミスの原因だった。

 もちろん外部の者に正確に分かるはずないけれど、西澤代志也は、そんな大きなミスで「縮こまって」しまうのではなく、「これじゃイカン!・・もっと思い切りプレーしなければ後悔するばかりになってしまう・・とにかくチャンスを活かさなきゃ・・等々!?」と、逆に吹っ切れたのかもしれない。そして攻守にわたるプレーのダイナミズム(力強さ)が格段にアップしていった!?

 たぶん西澤代志也は、一つの試合で、何度も「地獄と天国」を体感したのでしょう。それもまた、フォルカー・フィンケが言う、ロングスパンで活きてくる「蓄積」ということなんだろうね。

 山田直輝、原口元気、高橋峻希、西澤代志也、濱田水輝、林勇介・・などなど。そんな才能あるヤングパワーが、若手を効果的に発展ベクトルに乗せることで「も」定評があるドイツのプロコーチと運命的な出会いをする・・。そのことは、レッズマネージメントが意図するところだった!?・・さて・・

 ところで、類(たぐ)い希(まれ)なる天賦の才に恵まれたセルヒオ・エスクデロ。皆さんも観られたとおり、良くなっていますよ、ホントに。

 もちろんゴールを決めたからではありません。守備(ボール奪取勝負)への絡みにしても、そこでの結果にかかわらず、味方が「納得」できるような内容(意志)が込められているし、攻撃でのボールがないところのプレーにしても、パス&ムーブに代表される忠実な汗かき組織プレーに対する「意志」も着実にアップしていると感じる。

 もちろん、まだまだミスも多いし、運動量も足りない。また「サボリ癖」も直っていないところもある。それでも、そんな「攻守にわたる忠実プレー」を基盤にしているからこそ、彼の才能が「より効果的に」迸(ほとばし)るのだと思う。

 彼もまた、フォルカー・フィンケと運命的に出会ったということなのかもしれないね。チームのなかには(タスク的に)彼のライバルは多い。だからこそ面白い。そのポジション争いからは目が離せないね。

 そんなセルヒオに対して、アレックスの出来は惨憺たるモノだったね。部分的には才能を感じるし、クロスボールにしても、独特の実効コンテンツが内包されている。でも、彼の本来的な能力を評価基準にした「実効レベル」という視点じゃ、とても合格点をつけられない。守備でも、肝心なところでマークを離してしまうなど(実際に彼の怠惰なプレー姿勢によって、何度かチームが大きなピンチを迎えた!)チームメイトからの信頼もガタ落ちでしょう。

 彼は、とても能力の高い選手です。全力で守備に入れば、相手はほぼノーチャンスだし、攻撃でもフルパワーの仕掛けを繰り出すシーンでは、とにかく相手が震え上がるほどのパフォーマンスを魅せる。

 この試合でも、何度か、ものすごく力強いボール奪取シーンを魅せたり、大迫力の勝負ドリブルや(彼がコアになった)コンビネーションも繰り出した。でも逆に、そんなポジティブなイメージを食い潰してしまう「気抜けシーン」が多すぎることで、全体パフォーマンスに対する評価では大きな疑問符がつく。

 いまの彼には、効果的なイメージトレーニングを課すしかないのかもしれない。世界一流プレイヤーやレッズチームメイトの攻守にわたる汗かきプレーと、それがあるからこそのスーパープレーが互いに作用し合う「相乗効果メカニズム」をしっかりと意識させるのですよ。繰り返し、繰り返し、何らかの刺激をともなったカタチで「イメージトレーニング」を繰り返すのです。

 とにかく、このままじゃ、アレックスの才能が潰れてしまう。心配だね・・

 最後に、フォルカー・フィンケが多用する『ボールオリエンテッド』という概念について。それは、攻撃でも、守備でも、ボールに込められた(ボールホルダーの)意図をしっかりと読む(攻撃側ではボールホルダーとの仕掛けイメージをシンクロさせる!)ということです。

 そこでのキーワードは、やはり何といっても「意志をもってプレーする」ということでしょう。

 要は、ボールがプレーされてから反応するような「リアクション・プレー」ではなく、守備では、相手の次のパスを読んだ(美しい)インターセプトに対する強い意志(イメージ)を持つとか、攻撃では、決定的な勝負パスを「呼び込む」ような(味方ボールホルダーにパスを出させるような!)爆発フリーランニングを繰り出すとか・・

 この『ボールオリエンテッド』なプレーについては、今後も、機会をみて、具体的な例を挙げながらディスカッションしていくつもりです。ということで、今日はこんなところです。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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