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2009_ナビスコ・・レッズ若手の台頭が、ホンモノの勢いを持ちはじめた・・(サンフレッチェvsレッズ、1-0)・・(2009年3月25日、水曜日)

フムフム・・。負けちゃったけれど、レッズのサッカー内容は、確かな進歩(ポジティブ)ベクトルに乗りつづけているね。

 ポジティブなベクトル? 現象的には『縦方向』へボールを動かすことに対する「瞬時の迷い」が少なくなっている・・っちゅうことですかね。要は、ボールコントロール、パス、パス&ムーブという一連の「ボール絡みの組織プレー」が、周りの味方の動きと、うまく有機的に連鎖しはじめているということです。

 エッ!?・・分かり難い!? じゃ、こんな感じではいかが??

 以前は、パスを受けてから(タテを)見て、考えるというスローダウンシーンの方が目立っていたのに対し(組織プレーの流れがスピードダウンしてしまうから相手に狙われて仕掛けのタテパスの多くがミスになってしまう!)、周りとのイメージがうまくシンクロしはじめていることで、徐々に、タッチ(トラップ)&パスのリズムが、素早く、そして正確になってきているということです。

 また、次のプレー(展開イメージ)に対して迷いがなくなってきている・・とか、もっと言えば、ボールを受けたときのパスイメージを、より素早く描けるようになっているとも表現できるかもしれないね。

 だからこそ(要は、次のパスレシーバーが、ある程度フリーな状態でボールを持てるから!)突っ掛けドリブルやタメキープといった、局面での「個のエスプリプレー」にも冴えが見られるようになるのですよ。この「個のエスプリプレー」については、新人を中心に後述します。

 ということで、進歩をつづけている(特にタテ方向への)組織パスプレー。

 もちろん「それ」はトレーニングの賜物です。イヤになるくらい繰り返し、繰り返し、人とボールの動き(それを司るイメージ)をトレーニングすることで、自然と周りが見えてくるのですよ(周りとのアウンの呼吸・・有機的なイメージのシンクロ状態の高揚・・などなど)。

 だから、パスを受ける前から、「その次」のパスイメージが明確に描写されるようになるし、結果として、人とボールが、素早いタイミングで、広く、正確に、そしてスムーズに(そして、仕掛けのタテ方向へも!)動きつづけるようになるというわけです。

 とはいっても「組織プレー」では、サンフレッチェに一日の長がある。もちろんその象徴は、ボールがないところでの動きの量と質。

 例えば、サンフレッチェの方が、明らかに、三人目、四人目がスペースを活用するというイメージが深く浸透している・・とかね。この試合でも(たしかにカウンター的な流れが多かったけれど)より多くの決定的なシュートチャンスを作り出したのはサンフレッチェだったというのが正しい評価でしょう。

 サンフレッチェについては、先日の「Jリーグコラム」を参照してください。そこでは、彼らが魅せつづける素晴らしい組織パスプレーの描写にトライしました。

 レッズだけれど、全体的な運動量を上げることで、攻守にわたって出来る限り多く数的に優位なカタチを演出するという基本線も含め、たしかに組織プレーの質は向上していると思う。でもまあ、フォルカー・フィンケ監督がイメージする、確実なポゼッションからの、急激なテンポアップを基調にした仕掛けコンビネーションという創造的な攻撃の変化を演出するのは、まだ次の段階ということだね。

 とはいってもサ、組織プレーのシオ&コショーとも言える、タイミングの良い個人勝負プレーの内容(組織プレーと個人勝負プレーのバランス!?)では、明らかにレッズに軍配が上がる。私はそれを、局面での「個のエスプリプレー」と呼ぶ。

 この試合では、とにかく、原口元気が繰り出すダイナミックで繊細な(そしてもちろん抜群の実効レベルを魅せる)ドリブル勝負と、後方から、まさに突貫小僧のように、爆発的な勝負ドリブルやワンツーコンビネーションなどで最前線へ飛び出していく山田直輝の「活きの良い」ダイナミックプレーが印象的でした。

 ヤツらは、17歳と18歳だぜ。そんな彼らについては、シーズン前にアップした「このコラム」も参照して下さい。

 原口元気については、シーズンスタート当初から、どうも「大事にプレーし過ぎている」という印象の方が強かった。要は、ミスをしたくない・・という後ろ向きのプレー姿勢。

 そんな煮え切らない(斜に構えた)ぬるま湯プレーを観ながら、フザケルナよ!・・もっと積極的に勝負しろ!!・・失敗することを怖がっていたら、オマエの才能がどんどんと縮こまっちゃうじゃないか〜〜っ!!!・・なんて、怒り心頭に発していたものです。でも、この試合のプレー内容を観ていて、ホッと胸をなで下ろした。

 そうそう・・アンタの監督さんは「あの」フォルカー・フィンケなんだゼ・・彼は、強い意志に支えられた主体的なリスクチャレンジを高く評価するはずだよ・・リスクチャレンジのないところに進歩なし!・・この格言は、アンタのような天賦の才にこそ当てはまるんだよ・・もしアンタのマインドが、日本のネガティブな組織体質のフレームワークに組み込まれてしまうようだったら、オレの役割として、とにかくズタズタに批判しなければならない、なんて思っていたところだった・・とにかく、良かった・・

 そして山田直輝。90分を通し、守備でも攻撃でも、衰えを知らない素晴らしい「意志の爆発」を魅せてくれた。とにかく、攻守にわたる彼の積極プレーが高い実効レベルにあることは、観ている多くの人々が認識したに違いありません。

 何度、後方からの勝負ドリブル&ワンツーコンビネーションが、サンフレッチェ守備ブロックをズタズタに切り裂いたことか(オレは、アンタのソデが引っ張られていたのをしっかりと目撃しているよ・・ありゃ、明らかにPKだった!!)。

 レッズの若い才能たちが、日本のトップサッカーレベルでも実力を「着実に」発揮しはじめていることは確かな事実だよね。そう、それも、フォルカー・フィンケの、プロコーチとしての確かなウデの証明なのですよ。

 たしかにまだ時間はかかるでしょ。でもレッズが正しいベクトルに乗っていることは確かな事実だし、(これが一番大事なことだけれど・・)選手が「そのこと」をしっかりと自覚しているからね。とにかく期待がふくらむね。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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