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2009_海外サッカー・・前後分断サッカーとベッカム!?・・(ローマvsミラン、2-2)・・(2009年1月12日、月曜日)

どうも皆さん、ご無沙汰してしまいました。このところ、しっかりと「充電中」の筆者ですが、ちょっと興味を惹かれたこともあって、今日は「セリエ」をジックリと観ることにしました。言わずと知れた、デイヴィッド・ベッカム。

 どんな背景があるかは知りませんが、ロス・エンジェルス・ギャラクシーに移籍したベッカムが、この1月から三ヶ月間だけACミランに貸し出されることになったとか。

 まあ、多分その背景には、シルヴィオ・ベルルスコーニ現イタリア首相が動いたこともあったんだろうね。それにしても、流石にベルルスコーニ。次期USA大統領バラク・オバマさんに関する「微妙な表現」も含めて、派手だね〜〜ホントに・・言動が(まあ、彼特有の文化ということですかネ)。

 以前からベルルスコーニは、監督のアリゴ・サッキの下、天才バレージと、ルート・フリット、マルコ・ファン・バステン、そして希代のスーパー・オールラウンダー、フランク・ライカールト(前バルセロナ監督)というオランダトリオを擁して抜群の輝きを放った(自身がACミランを買収して会長に就任してからの)数年間に強い郷愁を抱いていたとか(まあその後も、監督ファビオ・カペッロとバレージ、マルディーニ、コスタクルタ等によって1995年まで黄金期がつづいたわけだけれど・・)。

 要は、オランダトリオのような「美しい」才能が前面に押し出されたスーパーチームの再来を夢見ているということらしい。まあ、監督が、「政治的にも柔軟な」カルロ・アンチェロッティということもあるんだろうネ。ということで実現した「3ヶ月のベッカム・レンタル」。天才を揃えた「美の饗宴」!? そんなこと・・現代サッカーじゃ、あり得ない。でも、そこは「ベルルスコーニ文化」だからネ。

 そしてこのゲームの先発メンバーも、きらびやかなモノになった。前戦は、アレッシャンドレ・パト、カカー、そしてロナウジーニョ。中盤が、ピルロ、セードルフ、そしてデイヴィッド・ベッカム・・。
 こうなったら、サッカーが前後に分断しちゃうのは目に見えているよね。何せ(まあパトは仕方ないにしても)カカーにしてもロナウジーニョにしても、まったく守備をやらないからね。いや、たしかに「追い」はするけれど、それが結局ぬるま湯だから問題。肝心なところで、マークを離したり、間合いを詰めなかったりするわけだから(ドリブルで置き去りにされたり、フリーで決定的パスを出されたり!)そりゃ、周りのチームメイトにとっては迷惑なことこの上ない守備参加っちゅうわけです。

 こんなだから、ベッカムは、中盤での「唯一の汗かきプレイヤー」っちゅうことになっちゃう。中盤の守備的ハーフ・トリオである、セードルフにしてもピルロにしても、チェイス&チェックを忠実にこなしつづけるのではなく、どちらかといったら「インターセプト狙い」をイメージするタイプだからネ。もちろん「追う」ヨ・・でも、本格的な「守備の起点プレイヤー」タイプじゃないということです。

 何度、ベッカムが、何十メートルも全力ダッシュして相手ボールホルダーへ寄せ、(突破ドリブルや勝負パスを阻止するために)必死の汗かきタックルを仕掛けたことか。そんなベッカムのプレー姿勢にはシンパシーを感じるし、心からの敬意を表します。というか、彼にしても、「オレはピエロじゃネ〜ぞ」といったプライドに突き動かされているということなんだろうね。

 それに、彼がボールを持っても、前戦の三人(パト、カカー、ロナウジーニョ)は、まったく、スペースへ走り抜けようとしないしね(スペースへの全力フリーランニングなどまったく無い)。それがなければ、ベッカムを呼んだ意味がないのに。もちろん、右サイド後方からの「必殺クロス」は健在だけれどネ。まあ、中盤には、ピルロやセードルフといった「パサー」もいるわけだから・・フ〜〜ッ・・。

 前戦の三人は、足許にボールをもらい「そこ」から個人技で状況を打開していくという勝負イメージ「しか」もっていない・・。要は、最終勝負のシーン以外では、互いに使い・使われるという組織プレーメカニズムがほとんど機能していないということです。

 だからミランの攻撃プロセスは、前戦の三人プラス両サイド・・といった基本構図になってしまう。

 相手の守備ブロックにとっちゃ、相手攻撃のファウンデーションが、すべて「自分たちの眼前」で流れていくんだから、守りやすいことこの上ないよね。これで、ガンガン、ウラの決定的スペースへ「飛び出す」ようなプレーがミックスされたら(もちろん、ベッカムやピルロからの必殺ミドルパスとのコンビネーション!)相手守備ブロックは確実に崩れるだろうけれどネ・・。

 とはいってもサ、レベルを超えた個人スキルを駆使する「ボールの動き」だけは見事の一言だからネ(もちろん、最終勝負シーン以外では人の動きは、あまり連動しない!)。それを絶対的なベースに、スッ、スッと、ある程度フリーな味方へボールを動かし、そして局面での個人技を駆使した「かわしと突破」を積み重ねていくことでチャンスを作り出してしまうんだから何をか言わんや。

 天才が織りなす自己満足プレーの饗宴!? もちろん「それ」もサッカーの根源的な魅力の一つではあるわけだし、実際にミランは「それ」で、一時は逆転リードまで奪ってしまったわけだからネ。

 それにしても、同点ゴールシーンでカカーが魅せた、美しい切り返しと「二軸動作」の「トット〜ン」というリズムのボールコントロール&ラストパス(トラバース・グラウンダーパス)、また逆転ゴールシーンでパトが魅せた爆発的な超速ドリブルには目を奪われた。そんなシーンを観ながら、こちらは「複雑なバックグラウンド」が内包された大きなため息をつく。フ〜〜〜〜・・

 ホント、ミランは(ベルルスコーニ文化は!?)興味深い「学習機会」を提供してくれているヨ。これからも、このチームがどのようになっていくのか、出来る限りフォローしよおっと・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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