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2009_日本代表・・中盤では立派なプレーを魅せた日本代表・・でも最終勝負では「世界との最後の僅差」が見え隠れする・・(オランダvs日本、3-0)・・(2009年9月5日、土曜日)

フ〜〜ム・・相手よりも動けている時間帯までは、ある程度「互角かそれ以上」のサッカーを展開できるけれど、結局は、体力の限界に近づく時間帯になったら(チェイス&チェックと、次のディフェンスがうまく連係しなくなり、相手の仕掛けフローを効果的に抑えきれなくなることで!?)勝負を決められてしまう・・。

 そのポイントにこそ、世界トップとの「最後の僅差」の本質が内包されている!? まあ、そのように分析するのが自然だよな・・

 要は、勝負所でゴールを奪えるか・・ということが大事なポイントになってくるということです。日本は、中盤で、あれだけゲームを支配し、オランダ陣内の深いゾーンまで攻め込みながら、結局は、決定的なチャンスの量と質という視点では、オランダに凌駕されてしまった。

 皆さんも観られたとおり、セカンドハーフの半ばあたりまでの日本代表チームは、素晴らしい「動きの量と質」でオランダを圧倒し、攻守にわたって(まあ、基本的にはディフェンスだけれど)常に数的に優位なカタチを作りつづけるという(岡田武史監督が浸透させた!?)チーム戦術イメージを、グラウンド上に忠実に投影しつづけた。本当に素晴らしい「意志のサッカー」だった。

 そこでは、彼らが志向する「組織ディフェンス」が素晴らしく機能しつづけた。トゥーリオが中心になって(!?)最終ラインを積極的に(高く)コントロールすることで、主体的に中盤ゾーンをコンパクトに「マネージ」し、最前線からの全力チェイス&チェックをベースに、次、その次と、協力プレスベースのボール奪取勝負を仕掛けつづけたのですよ。

 そんなゲーム展開を観ながら、こんなことを考えていた。

 ・・やはりオランダは、深層心理では、日本を甘く見てゲームに入ったということだな・・もちろんファン・マール・ヴァイク監督は、選手の気持ちを引き締めたに違いないけれど、格が違う日本が相手ということで、選手にギリギリの闘う意志を期待するのは難しいのが現実だったということか・・とにかく、オランダチームのプレーぶりからは、強烈な闘う意志は感じられなかった・・もちろん、局面勝負では、個の強さは魅せていたけれどネ・・

 ・・そんな「気抜けサッカー」では、攻守にわたって、ボールがないところでのプレー内容が締まらなくなるのは当然の成り行き・・そして、イメージ通りに組織プレーが回らないことで(人の動きが単純すぎるから、次のボールの動きを日本の組織ディフェンスに読まれてボールを失いつづける!)ボールがないところでの忠実な動きに対する「意志」が減退しつづけていく・・そんなジリ貧の流れになったら、いくらオランダチームでも、効果的な「意志の再生」は難しいよな・・何せサッカーは、究極のチームゲームであり心理ゲームなのだから・・

 ・・(オランダにとって)フラストレーションが溜まりつづけるゲーム展開・・そんなだから、オランダの強者たちが「フザケルナよっ!」と、アタマに血がのぼるのも自然の成り行き・・とはいっても、その「闘う意志」が、組織的にうまく噛み合っていかない・・だから、局面での無理な競り合い(ゴリ押しの勝負ドリブル)ばかりが目立ってしまう・・

 ・・難しいよね・・優れたサッカーは、高い次元のイメージシンクロ・コンビネーションを、強烈な闘う意志をベースに「冷静に積み重ねて」いかなければ決して実現できないわけだからね・・激烈な闘う意志はあっても、「そのプレーイメージ」がうまく重なり合わなければ、決して実効レベルを高揚させることは出来ないわけだから・・

 ・・こうなったら、もう日本はゴールをぶち込んで勝つしかない・・そんなことを思っていた筆者だったけれど・・セカンドハーフも半ばを過ぎるあたりから、徐々に日本チームの動きの量と質が「減退」しはじめ、それに伴って、オランダが、うまくスペースを使いはじめる(人とボールの動きが、スムーズに連係しはじめる)・・そして・・

 結局最後は(組織プレーや個人勝負プレーで)三つのゴールをぶち込まれてしまったわけだけれど、そんなゲーム展開で注目すべき一番のポイントは、やはり「最終勝負の実効レベル。そう、仕掛けプロセスとシュートチャンスの「質」、そして、それを実際のゴールに結びつけるチカラ(まあ・・決定力・・)ということですかね。その視点で、やはり日本とは「有意の差」があったと言わざるを得ないのですよ。

 言葉を換えたら、オランダは、最終勝負をゴールに結びつけるプロセスでは、組織パスプレーでも、個人勝負プレーでも、そしてそれらの組み合わせコンビネーションでも、日本とは、一日以上の差があった・・ということか。

 中盤での攻守にわたる組織プレーコンテンツでは互角でも(日本が明確に上回っていたとしても)、結局は、最終勝負のコンテンツで「有意の差」が明白になる・・。

 そのバックボーンは、強者たちが、体感し、蓄積してきた、世界トップレベルの最終勝負コンテンツ(ギリギリ勝負を勝ち抜くためのフィジカル能力、テクニックと感覚とセンス、そして心理・精神的な強さ)そのものということだね。

 例えば、ファン・ペルジーの、鋭い切り返しから(勝負ドリブルや勝負クロスといった)次の勝負プレーに入っていくときの「落ち着き」とか、ここが勝負!というシチュエーションでフンテラールが魅せた、決定的スペースへ入り込んでいく「消える動き」と難しいダイレクトシュートをキッチリ決める落ち着きとか(もちろん正確なラストクロスも含めて!)、また、フッと落ち着くことでタメを演出し(日本ディフェンダーの動きをフリーズさせ)次の瞬間に、小さなスイングで、日本ゴールの右上角に決めたスナイデルの中距離シュートとか・・

 やはり、冷や汗が出るような決定的シーン(ものすごく重要な勝負マッチにおける決定的チャンス)での成功体感の積み重ね・・っちゅうことかもしれないね。

 日本代表は(攻守にわたる組織プレーのコンテンツは)着実に発展している・・でも(疲れが出てくる時間帯での!?)守備での集中力とか意志のチカラとか、最終勝負における(言葉で表現するのは難しい!?)小さなコトの積み重ねとか、まだまだ「世界との最後の僅差」という大きな課題を抱えている。もちろん世界のベストフォーを目指していくためにネ・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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