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2008_ナビスコ・・ヴェルディとレッズを中心に、考えるところをまとめました・・(2008年3月23日、日曜日)

まず、スタジアム観戦したヴェルディ対エスパルス戦から。

 これで、ヴェルディを観戦するのは、既に今シーズン三試合目ということになります。そのヴェルディだけれど、この試合でも、先日のアントラーズ戦と同様に、積極的な「仕掛けサッカー」を展開してくれました。確かに、まだ多くの課題は抱えているけれど、攻守にわたって積極的に仕掛けていくプレー姿勢(リスクチャレンジ姿勢)は、発展するための最も大事な「基盤」だからね、期待できます。

 特に、新加入した那須大亮と福西崇史がうまくはまっていると感じる。まあ、福西の「サボリ癖」は解消されていないけれど、攻撃になったら、彼のキープ力や展開力が効果的に発揮されるからね。また、ここぞのボール奪取勝負でも、素晴らしい感覚を魅せつけるシーンも目立ちました。

 やはり福西の才能レベルは高い。彼が、鈴木啓太のような「優れた汗かきマインド」を備えていれば・・なんてネ。まあ、天は二物を与えず・・ということか。あっと・・、でも「それ」はプレー姿勢だから、基本的には意識の問題。出来ないはずはないけれど・・。フムフム・・(ちょっと『・・』が多すぎて失礼)

 まあ福西が、多大なエネルギーを必要とするチェイス&チェックはそこそこに、効率的なボール奪取勝負「ばかり」狙えるのは、富沢清太郎という守備的ハーフのパートナーがいるからに他なりません。富沢は忠実な汗かきプレイヤー。中盤で、効果的に「守備の起点」を演出しつづけます。わたしは、富沢が守備的ハーフに入った試合を記憶していないのだけれど、それが、柱谷監督による「ストッパーから守備的ハーフへのコンバート」だったとしたら、ちょっと拍手してしまいます。アントラーズ戦でも、かなりの頻度で、彼のところでアントラーズの攻撃が「止められて」いましたからね。

 後半の立ち上がり15分くらいは、エスパルスに攻め込まれたヴェルディ。そんな展開を観ながら、「さて、エスパルスとの実力の差が白日の下にさらされはじめたかな・・」なんて思っていたのだけれど、あにはからんや、その時間帯をしのいだヴェルディが、どんどん盛り返していったのですよ。ちょっとビックリしながら、その力強さに目を見張っていました。

 盛り返したヴェルディは、ボール奪取の後の積極的な押し上げをベースに、船越のアタマを狙ったロングパス攻撃や、サイドを起点にした効果的なクロス攻撃を仕掛けていくのです。例によって、サイドハーフとサイドバックとのタテのポジションチェンジ(オーバーラップの繰り返し)。もちろん、タテのポジションチェンジがうまく機能せずにサイドに危険なスペースが空いてしまったら、例によって、富沢が忠実にカバーに入る。

 とにかく、ヴェルディは、前向きの発展ベクトルに乗っていると感じます。柱谷監督は良い仕事をしている。とはいっても、(廣山や福西に代表される!?)ちょっとした「気抜けプレー」が致命傷になりかけたシーンは何度も目撃したけれどね。だから、全体的な印象は「まだまだ中途半端」ということになるわけです。

 対するエスパルスだけれど、前述した後半立ち上がりの時間帯だけは、私が期待する「エスパルス・イメージ」を充足してくれた。そこで彼らが魅せつづけた(攻守にわたる)ダイナミックな組織プレーの有機的な連鎖こそが、私がエスパルスに期待するサッカーなのですよ。

 でも、そんなポジティブな流れを高みで安定させるという視点じゃ、大いに不満が残りました。攻守にわたる迫力プレーが、以前のようにスムーズに、有機的に連鎖しつづけなくなっていると感じるのですよ。さて、それはいったい何なのだろう。

 伊東輝悦の衰え!? いや、彼はまだ十分な実効レベルを魅せていると思いますよ。それじゃ、フェルナンジーニョの「エゴプレー」が過ぎるようになったから!? また藤本淳吾のパフォーマンスも減退傾向にあるから!? それとも、ベテランの西沢が以前のようなパフォーマンスを出せなくなっているから!? フム〜〜

 私が感じた、エスパルスの「エネルギーレベルの沈滞」という雰囲気はいったい何なのでしょうか。ちょっと(スカパーで)他のゲームも観察してみることにします。

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 さて、テレビ観戦した京都サンガ対レッズ。

 まず、「1-3」という劣勢にもかかわらず、ホームチームとして、最後まで全力の誇り高き「闘い」をやり通し、大逆転勝利は目前(!?)というところまでレッズを追い詰めたサンガに対して、大いなる拍手をおくります。

 特に、交替出場したアタリバと林丈統。攻守にわたり、本当にインプレッシブな「闘い」を披露してくれました。そこでは、林丈統のイメチェンに目を見張っていた。まあ、長い時間プレーしたわけじゃないしテレビ観戦だったから正確な評価はできないけれど、相手を抜き去ってしまうドリブル突破だけじゃなく、最前線から爆発的なチェイス&チェックに入り、それでレッズ堀之内のプレーを効果的に邪魔したシーンなどは印象深かったですよ。そこでは、味方にパスカットさせようとパスコースを制限したにもかかわらず、例によってボ〜ッと突っ立っているだけで、「次のパス」を全く狙っていなかったチームメイトの田原豊に対して文句を言っていたしね。ジェフ時代は、そんな文句は彼に向けられたモノが多かったのに。いやホント、イメチェン・・。

 さてレッズ。守備ブロックが安定していない。前半で達成した「3-1」のリードにしても、パープル守備ブロックを崩し切った(ウラの決定的スペースを攻略した)というよりは、ツキなどの偶発的な要素の方が目立っていた。また全体的なゲーム展開にしても、イニシアチブを取れていたとは言い難い内容だった。

 まだまだ、ボールがないところでのアクションの量と質のレベルが低いのですよ。守備でも、攻撃でも。

 特に後半は、パープルサンガの選手が1-2人多いといった印象まで持ってしまうようなジリ貧の展開になってしまった。要は、パープルサンガの方が、積極的にボールを奪いにいっていた(前から仕掛けていた)し、その後の攻撃でも、多くの選手が、どんどんサポートに上がってきていたということです。そしてボールを奪われたら、素早く戻って守備につく。レッズ選手たちの動きは鈍重だから、攻守にわたり、パープル選手たちに「タテに追い抜かれ」つづけていたのです。これじゃ、相手の人数が多く感じられるのも道理です。

 エジミウソンや梅崎司も良くなっている。もちろん、まだまだだけれど、良くなっているということだけは確かな事実だからポジティブに評価したいと思います。

 それにしても後半の梅崎は「闘う意志」を大きく減退させていた。そんななかで、自分がマークしつづけなければならない相手に決定的スペースでパスを受けられてしまったシーンもあった。それは、許されることじゃない。とにかく梅崎は、もっと責任を持って守備をしなければならないし、もっと「強い意志」をもって、ボールがないところでのアクションをつづけなければなりません。

 彼ほどの才能の持ち主なのだから、その部分での「意識&意志」を高揚させられれば、必ずインターナショナルレベルでも活躍できる選手へと脱皮していく(ブレイクスルーを果たす)はず。もし、これまでのような「サボリぐせ」を繰り返すようだったら、そのときは強烈に批判します。まあ、私がやらなくても、目の肥えたレッズファンから大音響のブーイングが飛ぶだろうけれどね。浦和は甘くないよ、梅崎司・・。

 それにしても永井雄一郎の「意識と意志」のレベルアップは心地よい。いままでは「甘え」が先行していたということなんだろうか。それが、チームの危機を目の当たりにして覚醒した!? フムフム・・。

 最後に、数日前のナビスコカップ戦レポートの内容を再利用することにします。

 やはり、まだまだ「ボールがないところでの動き」に対する「意志」が足りない。もちろん、シーズン開幕戦や第二戦ほどひどくはなかったけれど、それでも、まだまだ足りない。その意志を活性化するためには、チーム全体が、一つのユニットとして(心理・物理の両面で!)活発に「動き」はじめることが必要です。だからこそ「ストロングハンド」としての監督のウデ(戦術&心理マネージメントの優れた能力)が大事になってくる。

 わたしは、ゲルト・エンゲルス監督を、プロコーチとして高く評価しています。知識はもちろんのこと、人心を掌握するパーソナリティー、チームを「一つの戦術で徹底させる」ドライブフォース(コーチング&ファシリテイト能力)など、彼のウデを高く評価しています。

 それでも、彼がチームをテイクオーバーしたのは本当に難しい状況だったから、心配の種は尽きない。彼が、チームの「和の雰囲気」のなかに、個人事業主のグルーブが優れたパフォーマンスを発揮できることに対して不可欠な「緊張感や闘う意志のエネルギー」を本当の意味で注入できるまでにはまだ時間が必要だと思うのです。

 ゲルト・エンゲルス監督は、「和」のニュアンスを、個人事業主で構成されるグループが、一つの目標へ向けて、前向きに(自分の主張に対する!)様々な妥協を繰り返しながら、全力で、汗かきプレーやリスクにもチャレンジしていくこと(闘う意志を高揚させていくこと)に対する「本音の合意」だと解釈しているはずです。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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