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2008_キリンカップ(その1)_コートジボワール対パラグアイ・・また、その他のビッグゲームについても簡単に・・(2008年5月22日、木曜日)

先週末に「J」が中断に入ってから、様々な国際(ビッグ)マッチが行われました。もちろん欠かさず観ていたけれど、どうも筆が進まなかった。でも、自分自身のためのレコードとしては何らかの「内容表現」は残しておきたいナ・・と、取り敢えず簡単にレポートしておくことにしました。ということで、まず、U23日本代表が参加しているトゥーロン国際大会の初戦から。

 反町ジャパンが「1-0」で強豪のオランダを下した初戦だったのですが、正直、ゲームを観ながら、どんどんとレポートする気が失せていったのですよ。とにかく、オランダがヒド過ぎた。

 たしかに個人的には、スピードもあるし、テクニックも素晴らしいモノを持っている。でも、チームとしては、全くといっていいほど機能していなかった。ボールがないところでの動きが有機的に連鎖しないから、しっかりとボールを動かせない。それじゃ、スペースを突いていけるはずがない。これじゃ、日本の守備ブロックが余裕をもって守り切れるのも道理。

 たしかに局面での個人勝負では危ないシーンもあったけれど、グループ戦術的には、まったくといっていいほど日本チームは学習機会に恵まれなかったということです。

 ということで、これから数時間後に行われる第二試合のフランス戦に期待することにしました。相手が優れたサッカーをやってくれなきゃ、フランスまで出向いた甲斐がないってなことになりかねない。とにかく期待しましょう。

 次が「ACL」のアントラーズ。本当に良かった。内容的にも「復調の兆し」が見えてきたしネ。とにかく今は(中断期間をフルに活用して!)しっかりとアクティブな休養を取ることで、コンディションをトップ状態へ戻していかなければいけません。

 グループ最終戦だけれど、私は、本心から心配していたのですよ。北京国安が、タイのクルンタイバンクに「20-0」で勝利を収めてしまうのではないかってネ。でも結局は・・。まあ、もう「そんな時代」じゃないということなんだろうね。とにかく、良いサッカーをやったクラブがグループステージを抜け出すことができて本当によかった。

 そして、日本時間で本日の朝方に決着がついた、ヨーロッパチャンピオンズリーグ決勝。マンチェスター・ユナイテッド対チェルシー。とにかく、死力を尽くした闘いになりました。

 その試合でもっとも目立っていたのは「サイドゾーン」の攻防だろうね。ご存じの通り、モダンサッカーでは、サイドゾーンの攻略が結果を左右するからね。両チームとも、少なくとも「二人」をサイドゾーンに配置するのですよ。マンUでは、前戦のクリスティアーノ・ロナウドとテベスに、サイドバックのブラウンとエブラが絡んでいく。またチェルシーでは、前半のジョー・コールとマルーダに、両サイドバックのアシュリー・コールとエッシェンが押し上げていく。

 この攻防が見応え抜群だった。その攻防の内容が反映するように(!?)前半はややマンUに流れが傾いていたけれど(シュート数はチェルシーだったけれど、チャンスの量と質では明らかにマンUに軍配!)逆に後半から延長にかけては、チェルシーがイニシアチブを握ったとするのがフェアな評価でしょう。

 それにしても、両チームともに素晴らしい守備を展開した。それも、受け身ではなく、あくまでも前へ仕掛けていくような「積極的にボールを奪い返す意志」を前面に押し出したボール奪取勝負チャレンジの積み重ねだからね。互いに、次の攻撃に勢いが乗っていくのも当然の展開といったところでした。

 私は、両チームが展開したボールをめぐる(危険な展開を抑制する)せめぎ合いに舌鼓を打っていました。こんな、世界トップの強者たちのギリギリの闘いはめったに見られるモノじゃないからね。

 まあ、ちょっと落ち着いたらビデオを見直し、戦術的な学習テーマをピックアップしようとは思っています。とはいっても私は、シーズンを通して美しいパスサッカーで世界を魅了したアーセナルと、準決勝のマンU戦で唐突にクリエイティブなサッカー内容が復活した(!?)バルセロナの敗退が残念で仕方なかった。彼らの敗退によって、レポートするモティベーションを殺がれてしまったことも確かな事実だったのですよ。

 もちろんアーセナルとバルサの試合はしっかりとキープしています。そうだね、そのゲームを見直すことで、彼らのサッカーのエッセンスを文章にまとめておくのも悪くないよな。さて・・

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 さて、ということで、本日、横浜の三ツ沢で行われたキリンカップ初戦、コートジボワール対パラグアイについてもショートコメント。

 両チームともに、(主力が掛けているとはいっても)そこそこにまとまった強いチームですよ。こんなに充実した海外チームが来るのも久しぶりだね。

 この試合の立ち上がりは、コートジボワールが、まさに我が物顔っちゅう雰囲気でゲームを支配しました。まさに、素晴らしい組織プレーのオンパレードといったところ。目を奪われました。

 ズバッ、ズバッという小気味よい音が聞こえてきそうな鋭く正確なボールの動き(パス交換)。それが、スペースへのフリーランニングと相まって、どんどんとスペースを突いていくのですよ。とはいっても、パラグアイが展開する「粘りのオーソドックス組織ディフェンス」が崩されたというわけじゃ決してない。パラグアイが魅せつづける粘りのマーキング(カバーリング)によって、最後のところで攻め切れないコートジボワール・・といった展開がつづくのです(それでも、2-3本は、サイドからの鋭いクロスにダイレクトで合わせるというチャンスも演出した!)。

 そんな魅力的なコートジボワールのサッカーを観ながら、こりゃ素晴らしい相手に恵まれた。土曜日の豊田スタジアムでの試合(日本代表vsコートジボワール)は、日本代表にとって素晴らしい学習機会になるに違いないと確信した次第でした。

 でも前半を25分も過ぎたあたりから、形勢が逆転していくのですよ。まさに、スーパーフィジカル&スーパー個人スキルが有機的に連鎖しつづけるスーパー組織サッカーとまで呼べそうなコートジボワールのプレー内容が、徐々に勢いを失っていったのです。それは、守備での勢いと(攻撃での)ボールがないところの動きが減退していったからに他なりません。もちろん時差ボケと移動疲れ。

 コートジボワールのスーパーサッカーは、あくまでもスペース活用が骨子だからね。いくら足許パスを「鋭く正確に」つないだところで、パラグアイ守備にとっては全く怖くない。自分たちの眼前のプレーだから、簡単に「読んで」インターセプトしてしまうのですよ。そして、ボール奪取の内容がアップするに呼応して、パラグアイの攻めが活性化していくのです。やはり、守備こそが、攻撃の(内容の)唯一のファンダメンタルということです。

 ということで、前半も25分を過ぎたあたりから、パラグアイが勢いを増幅させていくのです。まさに、パラグアイらしい「質実剛健なポゼッションサッカー」。

 もちろんコートジボワールも、やられっぱなしじゃない。後半の立ち上がりには、左サイドでの爆発的なフリーランニングと「そこ」への正確なタテパスをキッカケに、ビッグチャンスを作り出すのですよ。そのシーンを観ながら、「そうそう・・ボールがないところでの動きが活性化すれば、おのずとコートジボワールのスーパー組織プレーも復調するよな・・」なんて悦に入っていた。コートジボワールが展開する、抜群の個人能力に支えられた素晴らしい組織プレーに心を奪われていた湯浅だったのです。

 もちろん、パラグアイが展開した、まさに「彼ららしい」粘りのプレーには賞賛を惜しみませんがネ。

 ところでアフリカサッカー。それについて、パラグアイのマルティノ監督がこんな興味深いことを言っていた。「数ヶ月前、南アとのフレンドリーマッチで手痛い目に遭った・・ただ、そこで学習したことが、このゲームに活かされたと思う・・要は、中盤をコンパクトにし、彼らにスペースを与えなければ、そのスピードを抑制できるということだ・・それがあったからこそ、ゲームをコントロールできるようになった・・」

 フムフム・・。でも逆に、中盤でのコンパクトプレッシングが、コートジボワールの素早い人とボールの動きに翻弄されたら、前半立ち上がりのように振り回されてしまうことだってある。要は、しっかりと状況を見ながら対応しなければならないということです。

 全体的にみれば、明らかにコートジボワールの方が上。とはいっても、本物の勝負となったら、パラグアイの粘り強い勝負強さの方が実効を発揮するとも思う。さて・・

 とにかく、今回のキリンカップで来日したコートジボワールとパラグアイは、本当に良いチームだということが言いたかったわけです。日本代表にとって、かけがえのない学習機会となるに違いありません。アッ、U23の日本対フランス戦がはじまった・・。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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