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2008_日本代表_W杯最終予選・・意志の内容こそが評価基準・・(バーレーンvs日本、2-3)・・(2008年9月7日、日曜日)

たしかに「あの」2失点は余計だったけれど、内容的には、チーム戦術的な「レベルの差」を明確に感じさせてくれた日本の順当勝利といえるものでした。

 たしかに、流れのなかでのチャンスメイク(決定的スペースを突いていく)という視点では課題もあったけれど、守備を固めてカウンターを狙う(個のチカラでは勝るとも劣らない)バーレーンとの勝負マッチでは、いつもこんなギリギリの展開になるからね。

 岡田武史は、自分が志向するコンセプトにこだわりつつ、勝負に「も」徹したサッカーをしっかりと表現できていたと思います。彼は、よい仕事をしている。

 この試合でのポイントは、何といっても暑さという厳しい気候条件でした。もちろんそれは、全体的な「運動量」の減退を意味します。そのなかで日本代表は、素早い攻守の切り替えをベースに(前からの積極的な)全員守備と(人数を掛けた)全員攻撃というコンセプトを「いかに上手く表現」していくのか、そして、いかに確実に勝負をモノにするのかという二つのテーマに取り組んだわけです。

 そして日本代表は、その二つのテーマの両方で成功を収めた。要は、効率的に(!?)チームコンセプトをグラウンド上に投影できていたということです。あの気候条件じゃ、フルパワーでの仕掛けを長い時間つづけられるはずがないからね。だからこそ、「ペースを上げるところ」と「落ち着くところ」をメリハリよく切り替えながら、しっかりと勝負の流れも呼び込んだということです。

 前述した日本代表のコンセプトは、言い換えれば、攻守にわたる優れた有機的プレー連鎖(イメージ連鎖)とも表現できます。攻撃でも守備でも、「仕掛けプロセス」に入ったら、なるべく多くの選手が「コンビネーションの流れ」に乗る組織サッカー。守備では、相手からボールを奪い返すという目的を達成し、そして攻撃では、シュートを打つという目的を果たすために。

 ちょっとハナシが難しくなってしまった。要は、あの厳しい気候条件では、そんなにたくさん走れるわけじゃないから、落ち着いた流れのなかで、守備や攻撃の勝負所では、しっかりと全員がアクションを起こすということです。

 例えば「ボール奪取プロセス」。そこでは、もちろん最前線からのチェイス&チェックがスタートラインになるわけですが、玉田圭司と田中達也による、全力ダッシュでのチェイス&チェックがスタートしたら、その動き(守備の起点プレー)に合わせ、周りの味方が、相手の次のパスレシーバーを追い込んでいくのですよ。

 とにかく、この試合で玉田圭司と田中達也が魅せた、攻守にわたる存在感は抜群だった。彼らが最前線から繰り返すチェイス&チェックの「流れ」に乗り、中村俊輔が、長谷部誠が、はたまた遠藤ヤットが、どんどんと次のボール奪取勝負の「輪」を縮めていくのですよ。もちろん全力ダッシュを積み重ねながらネ。守備こそが全てのスタートライン・・なのです。

 そしてボールを奪い返したら、最前線のスペースへ動きつづける玉田と田中達也をターゲットに、すぐさまタテへボールを動かしていく。受けた玉田圭司や田中達也は、小回りの効いた勝負ドリブルを仕掛けていったり、ドリブルで勝負するフリをして、上がってくる味方へパスしたり、はたまたクリエイティブな「タメ」を演出したり。それこそまさにメリハリが効いた仕掛けじゃありませんか。

 ということで、攻守にわたって「キレキレ」の玉田圭司と田中達也。

 小兵の「小回りくんコンビ」!? 彼らの場合は、まさに「ゼロトップ」といった感じでしたね。小回りの効く二人が、前後左右にポジションを入れ替えつづけるのですよ。そのダイナミックな「動き」に、中村俊輔や松井大輔だけじゃなく、両サイドバックや、タイミングよくオーバーラップしてきた長谷部誠や遠藤ヤットが絡んでいく。そして、まさに有機的なプレー連鎖の集合体といったダイナミックなコンビネーションの流れが形作られていくのです。

 田中達也と玉田圭司のトップコンビだけれど、そのプレーイメージとして、「動きのある仕掛けの起点」とか「動きのあるポストプレーヤー」という表現はどうだろうか。

 ポストプレイヤーが軽快に「動きつづける」ことで、彼らの前戦でのプレーには、ドリブル突破、上がってくる味方を使うポストプレーやスペース作りなど、新鮮なプレーイメージがわき上がってくる。いや、ホント、ゼロトップという発想は面白いね〜〜。

 ちょっと眠気が襲ってきた。今は、ここまででアップしておくことにします。後でビデオを見返しながら、その他のポイントについてレポートを書き足すかも知れません。ということで、ここまでの最後のポイントは、勝負に徹する岡田武史というテーマ。

 わたしは、その「徹底度」が具体的に現れてきた岡田監督のアクションとして、松井大輔を外して中村憲剛を入れた選手交替を挙げたいと思います。

 例によって、チェイス&チェックなども含めた守備での勢いが乗っていかない(強い意志が見えてこない!)松井大輔。

 たしかに何度かは鋭いドリブル突破チャレンジは魅せたけれど、攻守にわたる全体的パフォーマンスとしては、(彼が秘める才能からすれば!)まだまだ足りない。ボール奪取勝負プロセスでの貢献度の低さは言うまでもなく、攻撃でのドリブル勝負にしてもパスにしても、決定的な価値(彼を使う明確な意味)が見えてこない。

 それに対し、中村憲剛がグラウンドに登場してからは、(中村俊輔との優れたコンビネーションも含め)人とボールの動きが大きく向上した。もちろん相手が一人退場になったということはあったけれど、それでも、様々な意味を内包する「動きの勢い」が、「牛若丸」の登場によって大きく向上したのは確かな事実でした。

 岡田監督も、その「変化」を明確にイメージしていたからこそ(勝利を決定づけたかったからこそ)松井の代わりに「ケンゴ」を投入したと思うのです。

 やはり、いまの日本代表チームを評価する上でのもっとも重要な視点は、互いに使い、使われるというメカニズムを深く理解し、攻守にわたって全力で仕事を探しつづける(そして全力でリスクへもチャレンジしつづける)ための「強い意志」にあり・・ということです。 

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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