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2008_日本代表・・残念だったけれど貴重な学習機会でした・・それと、この時点でのコアメンバーについて・・(日本vs韓国、1-1)・・(2008年2月23日、土曜日)

残念・・。山瀬のスーパーゴールが決まったとき、誰もが、一瞬「いけるかもしれない」と期待したに違いないはずです。でもまあ、仕方ない。

 「仕方ない」という気持ちのバックボーンは、韓国に、気の(闘う意志の)パワーレベルで明確に一日以上の長があったからです。あれだけ日本が「スマート」にゲームを支配していたのに、結局シュート数では、韓国の後塵を拝してしまったのだからね。

 「スマートなゲーム支配」という表現は、もちろん戦術的な視点がベースです。個人戦術でもグループ戦術でも、日本が上回っていたのですよ。クレバーなボールコントロールを基盤に(中村憲剛の自信あふれる効果的な展開力に拍手!)シンプルにボールを動かしながら、ボールがないところでの(人の)動きをうまくシンクロさせて、スマートに韓国守備ブロックの穴(スペース)を突いていく。

 とはいっても、あくまでも「それ」は仕掛けプロセスにしか過ぎないのですよ。日本チームは、最終勝負に入っても、どうしても(ある程度)フリーでボールを持つ状況を演出できないのです。それこそが、韓国の「粘りマインド」の証明だった・・。

 「甘さが出た・・」。岡田監督が、そんな表現を使いました。それに対して共同通信の記者の方から質問が飛んだ。「監督は、冒頭のコメントでも、先ほどの質問に対しても、甘さということを言われました・・具体的にそれは、どのようなことを意味されているのですか?」

 そんな興味深い質問に対し、岡田監督は、例によって誠実に答えます。「それは非常に簡単なことですよ・・例えばボール際での競り合いの強さ(身体ごと全力でいけているかどうか)・・マーキングを外されたとき、その後に必死に相手に食らいつこうとせずに簡単に行かせてしまう・・(例えば、自分のアタマを越されてパスを通された後などの状況などで)必死に戻らない・・相手パスレシーバーに対して全力で寄せない・・などです」

 興味深い質問に対して、興味深い「表現」が返ってきた。そこには重要なキーワードが満載でした。というのも、まさに「それらのポイント」で韓国が勝っていたからです。それが、あれだけゲームを支配していた日本だったのに、終わってみたら、シュート数で負けていたということの背景にあったのです。

 まあ・・ね、たしかに「それらのポイント」も個人&グループ戦術の基本だから、冒頭に書いたように、日本の方が戦術的に上回っていたという表現は適当ではないかもしれないね。まあ、ここでは、仕掛けプロセスにおける戦術的な発想バリエーションや、それを実行していく際の実効レベルのことと理解していただきましょうかね。

 ところでシュートの内容だけれど、日本が放った「惜しい」シュートは、前半の(右ポストを直撃した)中村憲剛の中距離シュートと、(ブロックされたけれど)その後に飛び出した二本の中距離シュートトライ、そして後半の山瀬功治のゴールと、左に外れた田代のヘディングシュートくらいだったですかね。それに対して韓国は、いくら泥臭くても、最後は何とか「惜しいフィニッシュ」まで持っていってしまうシーンが多かった。フムフム・・。

 中村憲剛だけれど、どうして彼を交替させたのだろうか。攻守にわたって、この試合での彼は「王様」だったのに。まさに、牛若丸・・。私の目には、中盤から彼が抜けたことによって、確実に展開力が減退したと映っていたのですよ。まあ韓国も、中盤の王様(金南一)がケガで交替してしまったからフィフティーだったのかな・・。

 ということで橋本英郎。安田理大の代わりに前気味のハーフとしてスタメンに名を連ねました。でも、うまくゲームに入っていけない。攻守のプレーが中途半端なのですよ。決してお荷物だったとは言わない。それでも、プレーがちょっとビビり気味だったことは確か。相手を背にしてパスを受けたシーン(相手に寄せられたシーン)では、強い気持ちで仕掛けていこうとするのではなく、バックパスや横パスに「逃げ」てしまう。相手も「コイツはビビッてる」と感じていたはずです。

 彼はディフェンスからゲームに入っていくべきだった。最初の10分間、日本は押し込まれました。そんな時間帯にこそ、前戦からの全力チェイス&チェックで、相手に(もちろんフェアな!)爆発スライディングを一発かまさなければいけません。そんな闘う姿勢を前面に押し出せば、彼自身の「自信レベル」も格段にアップしたはず。そして、次の瞬間から、攻守にわたるプレーが、より積極的なもの(要は主体的なリスクチャレンジ姿勢)へとポジティブに変容していったはずです。でも彼のプレーは、ほとんど高揚することなく、攻撃でも守備でも、インパルスを与えられなかった。

 私は、交替は、憲剛ではなく、橋本だったと思っているのですよ。そのことを質問すべきだったけれど、その前に別な質問をしてしまったから・・。もちろん、憲剛の交替には、風邪の後遺症などフィジカル的なこと等、明確な理由があったに違いないとは思っているのですが・・。

 とにかく今回の大会が、日本代表にとって非常に貴重な学習機会になったことだけは確かな事実です。10日間以上も一緒に寝食を共にしたんたからね。様々な意味で「チームとしてまとまる」有意義なプロセスになったと思うのですよ。もちろん岡田監督の「ウデに対する期待値」も含めてね。またもちろん、他の三カ国が、日本相手ということでシャカリキにぶつかってきたということも、その背景にあったよね。

 まあ、全体としては良かったと思いますよ。岡田監督をはじめとした代表スタッフも、様々な分析を進めるうえで、これ以上ないという貴重な「資料」を手に入れたわけだからね。

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 最後に、徐々にチームの全体像(チーム作りにおける安定&動的ファクターなど)が見えてきつつある日本代表というテーマについて、独断と偏見で突っ込んでみます。

 チーム戦術については既に何度も取り上げてきたから、ここではメンバー構成に集中します。要は、中澤とトゥーリオを中心にしたフォーバック(ツーバック)と、鈴木啓太、中村憲剛、遠藤保仁で構成する中盤のダイナミック・トライアングルは変えられないということです。

 鈴木啓太は、相手の強さやチーム戦術、また日本代表のチーム守備戦術などに応じて「前気味リベロ」になったり、ときには守備的ハーフとして機能したりする。彼はこの大会でも、まさに本物のボランチと呼べるような、見えないところで素晴らしい実効(汗かき)プレーを魅せつづけてくれました。目立たないところでの寄せや忠実なマーキング&カバーリング等々、感動的なプレーを展開してくれた。そんな鈴木啓太の、攻守のダイナミックパートナーが遠藤ヤットと中村憲剛というわけです。とにかく私は、今は、このダイナミック・トライアングルは外せないと思っているのですよ。

 そして、センターバックも含むこの「コア・ブロック」を取り囲むように、サイドバック、(ホンモノの守備意識を備えた)攻撃的ハーフ(≒チャンスメイカー)、フォワード(ワントップやツートップ)などのメンバーが、フォーム(フィジカル&サイコロジカルなパフォーマンス)やチーム戦術、また対戦相手などによって決まってくるというわけです。まあ、中村俊輔が帰ってくれば、コア・ブロックの一員になるというのは大前提だけれどネ。

 その「コア・ブロック」の実効バックアップとしては、今のところは、今野泰幸、阿部勇樹、山瀬功治、羽生直剛、そして長谷部誠や松井大輔などが挙げられますかネ。そのうち、今野と阿部は、もちろん「マルチポジションのユーティリティー選手」という位置づけです。純粋なセンターバックのバックアップについては、また別の機会に・・。

 鈴木啓太のライバルだけれど、それも今野と阿部ということになる。あの、素晴らしい汗かきパフォーマンスを出来るとしたらこの二人しかいないと思うのですよ。とはいっても、鈴木啓太ほどの「実効」が伴うまでには、かなりのイメージトレーニングが必要になるでしょうがね。あっと・・、まあ長谷部もライバルになり得る存在だね。

 稲本潤一については、まだ私は、中盤ディフェンスの重心として「積極的に汗かきの仕事を探しつづける」という姿勢(考え方!?)において、大きな疑問符を抱いています。それ以外でも、「J」がはじまれば、新しい選手が(リバイバル選手も!?)出てくるだろうし、五輪代表の柏木陽介やセルティックへ移籍した水野晃樹なども頭角を現してくるかもしれない。まあ、楽しみです。

 今日はこんなところですかね。さて「J」がはじまる。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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