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2008_日本代表・・多くの時間帯でチリに主導権を握られた(日本のベースアップがままならなかった)試合・・まあ、これからだネ・・(日本vsチリ、0-0)(2008年1月26日、土曜日)

「守備については、クロスを上げられても(中の選手が)しっかりとマークが出来ていたし、プレッシャーを掛けにいったことでカウンターを喰らった場面でも、飛び込まずにしっかりと落ち着いて対応できていた・・相手にフリーでやられたシーンはほとんどなかった・・要は、みんなが共通の意識をもって良いプレッシャーを掛けられていたということ・・」

 岡田監督の弁ですが、まあそれは、全体的なディフェンス内容についてというよりも、最終勝負プロセスでは、チリに完全に崩されるようなシーンを作らせなかったというニュアンスがメインだろうね。ディフェンスのチーム戦術では、前から協力プレスを仕掛けていけるような状況を「できるだけ多く演出すること」がテーマのはずだからね。だから、岡田監督のコメントに対しては、限定的にアグリー(賛同)といったところでした。

 前から協力プレスを仕掛けていけるような状況を作り出すためには、素早く忠実に、そして、相手が心理的なプレッシャーを感じるくらいにダイナミックに「守備の起点」を演出しつづけなければなりません。もちろん「それ」だけじゃなく、周りの味方が「有機的に連動するような」守備アクションを積み重ねることで「二重、三重の守備網」を築き上げていなければなりません。ただ、それがうまく機能しなかった・・。

 爆発的なチェイス&チェックからの守備の起点プレーにしても、また周りの「守備網プレー」にしても、その内容は(立ち上がりの1-2分を除いて!)明らかに中途半端に減退していった。

 たしかに立ち上がりの1-2分は、前からの協力プレスが機能するかに見えたけれど、すぐに、チリの対抗プレスの勢いに(心理的に!)押されはじめ、徐々に足が止まり気味になってしまった。何度、「どうして次を狙っていないんだ!」なんて声が出たことか。それほど、ボールウォッチャーになっている(分かっていながら勝負を逡巡する意識に支配された!?)シーンが目立ったのですよ。

 それは、法律用語でいう「未必の故意」のニュアンスに近いものかもしれない。サッカーでは、「行かなければ」決してミスをすることはないわけだからね。それだけじゃなく、一人でも、次のボール奪取を(要はリスクチャレンジを!)積極的に狙っていかなければ、そんな「未必の故意ビールス」が、すぐにチーム全体に蔓延してしまうのですよ。

 もちろん、岡田監督が言うように、最終勝負シーンでは、キッチリと守れていたけれど、「それ」は、数的に優位な状況を演出し、それをベースに、相手ディフェンスが薄くなったゾーンへ効果的に攻め込んでいくような(効果的なスペース活用!)、人とボールが活発に動きつづけることで相手とのフィジカル接触のない(!?)カウンターも含む爆発的な攻撃のキッカケになるものじゃないからね。

 要は、守備がうまく機能しなければ、次の攻撃が機能することは決してない・・ということです。だから中盤でもうまく前を向けなかったし、クサビが入ってもサポートに行けなかった(ボールなしのアクションが連鎖しなかったから数的優位なカタチをうまく演出できなかった・・などなど)。まただからこそ(数的に優位なカタチをうまく演出できないから)、ダイレクトで、自分の周りのスペースへボールを「動かす」ような流れるコンビネーションも出てこなかった。

 また逆に、ダイレクトでのスペースショートパスを出せるのにボールをコントロールしてしまうシーンも目立つようになっていった。その背景にある心理は、ダイレクトコンビネーションがうまく行かないというイメージに支配されてしまったことで、自信レベルも地に落ちいていた!?

 それにしても、流石にビエルサ監督じゃありませんか。若手主体とはいいながら、素晴らしい「闘うマインド」が深く浸透したチームを送り出してきた。彼の、心理マネージャーとしてのウデを感じます。そして、「前半については、プレスについても、ボールポゼッションについてもチリの方が上だった・・」と、胸を張る。

 まさに、おっしゃるとおり。だからこそ日本代表にとって(岡田監督も、冒頭で、謝意に近いニュアンスで語っていたように)願ってもない学習機会になった。とはいっても、この試合での日本代表は、その機会をしっかりと活用できていたかといえば、大いに疑問符がつくけれどネ。

 後半についてだけれど、たしかに大久保が何度か絶対的チャンスを得たり、遠藤ヤットと中村憲剛のコンビで、チリ最終ラインのウラに広がる決定的スペースを突く場面もあった(やっぱり憲剛の飛び出しイメージは超一流!)。またゲーム終盤では、かなり「前から仕掛けていけた」時間帯もあった。でも私は、全体的なゲーム内容では、前半と同様に、チリに軍配が上がると思っています。チリの「意志」は、最後の最後まで、まったく衰えることを知らなかった。彼らには、本当に感謝しなければいけません。

 「あそこで大久保がゴールを奪い、それですべてが良かったとなるよりはよかったかなと思う・・」

 まあ・・そういうことだよね。また岡田監督は、最後にこんなことも言っていた。「今日グラウンドでやってくれたことは、今の時点でああいうチームに対して我々のビジョンの中で出来るプレーだったと・・まだ我々が共有しているビジョンには追いつかないかもしれないですけど、同じ方向性でやってくれたと思う・・」

 満足したら、進歩が止まってしまう・・。言い古された言葉だけれど、岡田監督からもっと不満コメントが聞けると思っていたから、ちょっと違和感の方が先行した。まあ、それだけ岡田監督の「深層の(本音の)不満」が大きかったということなのかもしれないね。とにかく、これから・・だね。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「五刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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