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2008_ACL_決勝の1・・決定力と勝者メンタリティーの発展!・・(ガンバ対アデレード、3-0)・・(2008年11月5日、水曜日)

よ〜しっ! やった〜っっ!! よし、よし、よ〜しっっっ!!! そんな気持ちの昂(たか)ぶりがおさまった後には、シンミリと「とにかく・・本当によかった・・」と胸をなで下ろしていました。

 たしかに(後半ロスタイムの)遠藤のスーパーフリーキックと山崎のスーパートリック反転からの「二つの幻ゴール」は残念だったけれど、とにかくアデレードにアウェーゴールを与えず、そして「3点のアドバンテージ」を、まさにサッカー内容にふさわしい(個人事業主に対する!?)正当な報酬としてもぎ取ったガンバ。私は、彼らを誇りにさえ感じていました。

 とにかく、サッカー内容の差が、そのまま「順当」に結果へ反映されたことが嬉しくてしかたなかったのですよ。というのも、皆さんもご覧になった通り、先制ゴールが決まるまでは、アデレードの「ゲーム戦術」の方に少し分があるようなゲームの流れだったと言えないこともなかったわけだからネ・・

 9人で組織する強力なアデレード守備ブロック。基本的には「引いて」ブロックを作り、ガンバが仕掛けていく最終勝負の流れをことごとく潰してしまうのですよ。ボールへの(パス出しポイントへの)忠実な寄せと、次のボール奪取勝負のイメージシンクロがうまく機能するアデレード守備ブロック。なかなかのものです。

 逆から見れば、そんなアデレードの強力守備ブロックに対し、うまく人数を掛けて組織的に崩していけない(=ウラのスペースを突いていけない)ガンバだったとも言える。もちろんそこには、アデレードのカウンターに対しても「イメージ的にケア」しながら、注意深く攻撃を組み立てていかなければならなかったという側面があったことは言うまでもないわけだけれどね。まあ「前半はガマンしてなるべく安全に」というイメージだったんだろうね。

 とはいっても、左サイドの安田理大は存在感を発揮していた。あんな展開だから、やはり機を見たドリブル勝負は効果的な攻め手なのですよ。

 相手守備ブロックが薄い(サポート体制が薄い)サイドゾーンでの、爆発的でトリッキーなドリブル勝負。効果的でした。でも相手ディフェンスも、安田理大が、高いボールではなく、ニアポストゾーンへの鋭いクロスを狙っていることを明確にイメージしたマーキングを展開していた。まあ、そんな「極限プロセスでの勝負イメージのせめぎ合い」も見所だったということだネ。

 また、サイドからのドリブル勝負以外でも、チャンスを見計らって前戦にスッと飛び出し、惜しい中距離シュートを放った明神智和と橋本英郎、そして遠藤保仁の「ココゾ!の勝負勘」も見応え十分だった。やはり、後方から「相手守備にとって見慣れない顔」としてスペースへ出ていけばチャンスになるということだね。

 ・・とはいっても、たしかにチャンスの芽はあるけれど、どうしても決定的なカタチまではいけない・・まあ前半はガマンというゲーム展開イメージなのだろうけれど、こんな停滞したイメージの流れがつづいたら、後半に勝負を懸けようとしても、チームが一体となってペースアップするのに苦労するんじゃないだろうか・・

 ・・まあ、ガンバのことだから、「乗りはじめたら」急に全体が一つのユニットとして、人とボールが爆発的に動きはじめるとは思うけれど・・それでも、このアデレードは、そんなガンバの「人とボールの動き」を効果的に抑制してしまうだけの守備での有機的なイメージ連鎖能力をもっているとも感じる・・ちょっと怖いな・・

 そんなことを思っていた矢先のことでした、二川孝広の、インターセプトからのルーカスへの一発勝負タテパスが飛び出したのは。もちろんルーカスの「飛び出しタイミング」も素晴らしかった。

 そして、その6分後には、相手が上がっていこうと前へ重心を移している状態で、その逆モーションを取るように佐々木勇人がインターセプトを成功させ、それによって追加ゴールが演出されたという次第でした。演出家は佐々木勇人。そしてそこで生まれたチャンスをしっかりとゴールへ結びつけた主役は、ルーカスと遠藤ヤット。

 このシーンでは、やはり、ゴールを決めた遠藤ヤットの、後方からの全力飛び出しフリーランニングが秀逸だったよね。50メートル以上は全力でダッシュしてルーカスからの横パスを正確トラップし、例によって「冷静に」ゴール右のサイドネットへの「パス」を決めた。本当に素晴らしかった。

 この勝利で、たぶん勝負の趨勢は決まったと思う。よほどのことがない限り、アウェーゲームでの逆転はないと思うのですよ。もちろん、そこは「サッカー」という得体の知れないフレームワークだから何が起きても不思議はないだろうけれど・・

 ところで、ガンバが挙げた三つの得点。それは、必然(ロジカルな帰結)というよりは、どちらかといったら偶然ファクターの方に偏ったゴールだったよね。

 最初の二つのゴールは、アデレードの攻め上がりの途中で(高い位置で)相手のミスパスからボールを奪い返した必殺カウンターだったし、三点目となった安田理大のスーパーボレーシュートはコーナーキック(セットプレー)からのモノだったからね。

 ここで言いたかったのは、ワンチャンス的な機会を逃さずゴールを奪い、自ら結果を引き寄せたという「現象」にこそ(ガンバにとっての)非常に重要な価値が内包されていたということです。

 流れのなかからアデレード守備ブロックを崩してゴールを奪うのは簡単ではないということは、ガンバの選手たちも感じていたことだろうし、だからこそ、千載一遇のチャンスを大きな成果に結びつけられたことには重要な意味があると思うのですよ。「決定力に対する確信レベルの高揚」という意味合いだけじゃなく、勝者のメンタリティーに「着実に実を詰められた」というニュアンスも含めてネ。さて・・

 とにかくガンバには(前段とは少し矛盾するかもしれないけれど)最高の緊張感と集中力をもってオーストラリアへ乗り込んでもらいたいと切に願っている筆者なのです。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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