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2008_ACL_準決勝の2・・「意志のパワー」こそが全てのバックボーン・・(レッズ対ガンバ、1-3)・・(2008年10月22日、水曜日)

この試合からピックアップすべきテーマは、サッカーは意志のボールゲームだということですかね。要は、意志の内容によって、サッカーがまったく違ったモノになってしまうということです。

 この試合でレッズが展開したサッカーは、数日前のヴィッセル戦とはまったく次元の違った素晴らしいモノだったのですよ。

 とにかく全員の守備意識が特筆でした。高い緊張感と集中力、そして強い意志。それがあったからこそ「様子見」になど陥ることなく、相手ボールホルダーへ素早く寄せることで(忠実なチェイス&チェックによって!)守備の起点を演出し、次、その次のボール奪取勝負を効果的に仕掛けられていたのです。だからこそ(特に前半は)明確にゲームを支配し、先制ゴールだけではなく、何度もチャンスを作り出すことが出来た。

 意志のレベルが低かったら、チェイス&チェックの勢いは地に落ちてしまい、その後のボール奪取勝負だってうまく機能しなくなる。そんな消極ビールスは、すぐにでもチーム全体に蔓延してしまうものです。そして、相手ボールホルダーへの「寄せ」が甘くて正確で危険なパスやクロスを通されても、誰も文句を言わないという「倦怠の雰囲気」が支配してしまう。そう、数日前のヴィッセル戦・・。

 要は、サッカーは、究極の「有機的なプレー連鎖の集合体」だということです。意志のレベルが低ければ、チェイス&チェックに勢いを乗せられないし、ボール奪取勝負だって効果的に展開できなくなってしまう。そして「悪い雰囲気」がチーム全体を冒していく(心理的な悪魔のサイクル)。そして誰も「消極プレー」に対して文句を言わなくなり、消極ビールスが「有機的に連鎖」してしまう。

 ただ、この試合のレッズには、そんな気配は微塵も感じられなかった。そこには、素晴らしい「意志の有機連鎖」があったのですよ。前半だけではなく、同点ゴールを入れられてからも・・。まあ、ツキに見放されたレッズ・・といったところですかね。

 対するガンバだけれど、二点目を取るまでは、持ち前の(相手のウラスペースをスムーズな組織パスプレーで突いてしまうような)創造的なボールの動きが観られたシーンは数えるほどしかありませんでした。まあ、レッズのダイナミックな守備に抑え込まれていたということです。

 でも、二点目のゴールを入れてからは、とにかく素晴らしい人とボールの動きが目立ちに目立っていましたよ。特に遠藤ヤット(保仁)。彼のセンスには脱帽です。

 西野監督は、「彼は、我々の想像力を超えたプレーをする・・」と表現していたけれど、とにかく攻守にわたる彼の実効プレーは見事の一言です。シンプルにボールを「さばき」ながら、決定的なスペースへボールを動かしてしまったり、自分自身が勝負スペースでパスを受けたり(そう三点目シーンのように・・)。とにかく、ガンバの創造的でダイナミックな「ボールの(人の)動き」のコアには常にヤットがいる・・といっても過言じゃない。本当に素晴らしい選手です。

 ということで、このガンバにも、前述の「意志」というテーマを当てはめてみよう。要は、ゴールを入れるまでの彼らは、どちらかといえば消極的なプレー姿勢に終始していたと思うのですよ。チャレンジャブルな仕掛けのスペースパスではなく、味方の足許への安全パスを「選択」してしまったり、(レッズのプレッシングが厳しいこともあって)自信が持てないから慌ててボールを離そうとしたり・・。

 まあ、サッカーは相対ボールゲームですからね、ガンバの攻撃がうまく機能しなかったというのと、レッズの守備が素晴らしく機能したというのは、ほぼ同義というわけです。まあ、後は「ウエイト」の問題かな・・。

 ということで、レッズにとっての2008年アジアチャンピオンズリーグは終焉を迎えました。とにかく今は、その事実を素直に受け容れましょう。サッカーは、勝つこともありゃ、負けることもあるサ・・。ある、ヨーロッパの超有名なプロコーチが、そんなワケの分からないことを言ったことがある。でも真理。サッカーは、偶然と必然がせめぎ合う究極の真理ゲームだからね。

 さて、ここからは、気持ちを入れ替えて「リーグ戦」に集中しましょう。何せ、まだ優勝戦線は混沌としているし、来年のACLの席を確保できているわけでもないからね。

 レッズは、ガンバとの準決勝2試合も含め、今年のACL戦のすべてにおいて、高い集中力と強烈な闘う意志で素晴らしいサッカーを展開しました。ただ「リーグ」では、ものすごく不安定な闘いしか出来ていない。たぶんそれは、厳しいスケジュールということだけではなく、様々な意味を内包する「意識」を集中させることが出来ず、そのことで「意志のレベル」を高みで安定させられなかったからだと思う。決して「リーグの試合や相手を軽んじていた(甘くみた)」わけじゃないとは思うけれど・・。

 でも、ここからはハナシは違う。「意志のパワー」を傾注すべきターゲットが一つに集約されたわけだからね。彼らは「意志」によって、サッカー内容がガラッと変わることを知っているはずです。だからこそ、ここからは言い訳は許されないのですよ。

 意志のパワーは、守備でのチェイス&チェックや「寄せ」の勢いに如実に現れてくる。また攻撃でも、ボールがないところでの動きの量と質や、ボールを持ったときのチャレンジ姿勢などでも判断できる。「自ら考えて闘わない、走らない」など、「意志のレベル」が低い選手は、プロとしてプレーする資格さえありません。まあ、わたしが言う必要もないことだろうけれどネ・・。

 最後に、決勝でアデレードと当たるガンバに心からのエールをおくります。日本サッカーの代表として、内容あるサッカーで勝利を収めることを心から願っています。とにかく、強い気持ちで、瞬間的に変化しつづけるサッカーを「とことん楽しんで」欲しいと思うのですよ。彼らには、「それ」だけのバックボーンが備わっているからね。後は「気持ち」だよ・・「意志」だよ・・。ガンバレ、ガンバ!!

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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