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2007_オリンピック代表・・意志のチカラを高揚させられなかったことに対しては大いに不満・・(日本vsベトナム、1-0)・・(2007年8月22日、水曜日)

なんでパスを出さないんだ・・。何度そんなことを心のなかでつぶやいたことか。

 国立競技場で行われた、オリンピック最終予選の日本代表vsベトナム代表。日本代表は、守備を固めるベトナムを攻めあぐんでいました。そのことを反町監督は、クローズドなゲームになったと表現していた。私は、そのコメントを聞きながら、「だからサ・・試合前から予測されていたクローズドなゲームを、いかにしてオープンなものに変容させていくのかが、このゲームでの明確なテーマだったんだよ・・」なんてことを思ったモノです。フムフム・・。

 たしかにスペースをうまく作り出せないし、そこにあるスペースにしても、相手が手ぐすね引いて狙っているから、そう簡単には使えない。とはいっても、だからといってチャレンジしなければ、本当に何もはじめられないのも確かな事実。そのことが、冒頭の心のボヤキの背景にあったというわけです。

 どうして、もっと積極的に最前線プレイヤーにズバッというパスを付けないんだ・・それで平山や李が潰されても、そのことで何かが動くはず・・というか、そんなチャレンジパスが出れば、自然と、周りも反応してアクションを起こしていくハズなんだ・・キッカケがあれば、後方からのサポートも、そこで起きるかもしれない「何か」をイメージするハズだしね・・そんな狙い(意志)さえあれば、確実に何らかの「コト」は起きるはずなんだ・・でも、そうではなく、(この試合のように)主体的に何らかの「動き」を演出しようとしなければ、まさに立ち往生状態ということになってしまう・・。

 なんでパスを出さないんだ!と思った背景には、この試合で先発した柏木陽介が、何度も、何度も、決定的スペースへ向けて爆発ダッシュを繰り返していたこともありました。ボールがプレーされているのとは逆のサイドから、自分をケアーしている相手選手がボールを見た瞬間を見計らって爆発ダッシュで抜け出していくのですよ(相手マーカーにとっては、典型的な消えるプレー!)。素晴らしいフリーランニング。でも、肝心のパスが出ない・・。

 ボールを持っている味方(パサー)が、柏木の決定的な動きに気付いていないというケースもあったけれど、気付いていても、勇気がないから、柏木が狙う決定的スペースへチャレンジパスを出せず、結局は安全な横パスに「逃げて」しまうというケースがほとんどだったように思います。フ〜〜。

 ところで柏木陽介。この試合では、彼を中心に、なかなか興味深いプロセスがありました。柏木は、ゲームが進んでいくなかで、チーム内のポジションをアップさせていったのですよ。

 立ち上がりの時間帯では、梶山や水野など、これまでのリーダー格がボールの動きでの(組み立てでの)イニシアチブを握っていた。そこでは、流れのなかで動きつづける柏木が、良いカタチでボールに触れるシーンは希でした。ただ時間の経過とともに、徐々に流れが変わっていったのです。そして前半の最後の時間帯には、選手たちが柏木を「探す」までになったのです。これは、なかなか興味深い出来事だと思っていましたよ。とにかく、柏木の攻守にわたる積極的なプレーコンテンツと、そこでの高い実効レベルが、チームに完璧に受け入れられ、最後は頼りにされるまでになったということです。ホント、興味深いプロセスではありました。

 ちょっとハナシが逸れてしまった。さて、リスキーな仕掛けパスがうまく出てこない日本代表というテーマ。もちろん選手たちは、「タイミングを計っているんだよ!!」と主張するんだろうけれど、やはり、そこには「エイヤッ!」の勢い(決断力や勇気など)がなかったのは確かな事実だと思いますよ。

 リスクチャレンジのないところには、決して進歩もない・・。それは大原則です。流れのなかで「強化された守備ブロック」を崩していくというのが難しい作業であることは誰もが分かっている。だからこそ、チャレンジのやり甲斐があるのに・・。

 相手が(味方も!?)度肝を抜かれるようなリスキーなパスやドリブルを仕掛けていく。そんな「変化」があってはじめて、味方のボールがないところでのアクションや次のチャレンジプレーが有機的に連鎖しはじめるのですよ。仕掛けていかなければ、絶対に何も起きない(起こせない)のですよ。そしてチームは、「意志の停滞」という奈落に落ち込んでいく。もちろん、梶山のワンツーからの突破ドリブルや、柏木の仕掛けドリブルといった積極的なリスクチャレンジプレーもあったけれど、全体の流れからすれば、やはり単発というイメージを払拭できないのです。

 それでも、後半30分あたりに、家長と岡崎が入ってからは、たしかに大きな動きが出てきた。それには、同点を狙うベトナムが、より積極的に仕掛けてきたという背景もあります。要は、クローズドな状況から、ゲームが「オープン」なものへと変容していったということです。だから、家長や本田圭佑の左サイドからのドリブル突破や、水野による右サイドの突破といった効果的な仕掛けを繰り出せるようになった。

 まあ結局は、(最少得点だったとはいえ)圧倒的にゲームを支配して勝利を収めたということになりました。肉を切らせて骨を断つというホンモノの勝負だから、満足すべきことではあります。それでも私は不満。主体的に、クローズドマッチをオーブンなモノへと変容させられなかったことに対して、もっと言えば、主体的に、チャレンジャブルなサッカーを展開できなかったことに対して大いに不満だったのです。

 それは「意志」の問題ですからね。だからこそ不満がつのったというわけです。まあ、次に期待しましょう。

 今日はちょっと疲れ気味。ということで、ここまでにします。明日、フル代表と「U17」のビデオを観てレポートします。それでは・・。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知もつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。

 




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