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2007_オリンピック代表・・(3-0というリードを奪ったからこそ)あとで後悔しないためにも、最後の最後まで全力で闘い抜くという気概(意志)をもつべきだった(加筆もあり)・・(ベトナムvs日本、0-4)・・(2007年11月17日、土曜日)

この試合については、戦術的な分析というよりは、北京オリンピックの出場権をめぐる戦略的な視点をメインテーマにすべきなんでしょうね。要は、カタールと勝ち点で並んだ場合の得失点差(総得点)・・。

 そのポイントでは、後半の、3点をリードしていることでの(!?)満腹感サッカーはいただけなかった。たしかに、完璧に吹っ切れたベトナムの、レベルを超えた闘うエネルギーと、それを組織的な実効プレーに結びつけたサッカーは素晴らしかったけれどネ。

 ベトナム代表だけれど、戦術的にも、身体&心理&精神的にも、本当によくトレーニングされたチームだと思いますよ。ベトナムが初めて最終予選まで駒を進めたこと、また、サウジアラビアだけではなく、カタールとも(内容的にも順当に)引き分けたことは、決してフロックじゃなかった。ベトナムのフル代表監督としても手腕を発揮しているオーストリア人プロコーチ、アルフレッド・リードルの確かなウデを感じます。

 彼とは、今年の7月にアジア四か国共催で行われたアジアカップのときに知り合いました。そのときに発表したコラムは「こちら」

 たしかに、技術・戦術的にもチカラを付けているベトナム代表だけれど、総合力の差を考えれば、やはり日本代表は、もっとゴールを決めなければ(もっと積極的にシュートチャンスを作り出そうとしなければ)ならなかったと思いますよ。

 要は、ボールを奪い返してからの押し上げの勢いが十分ではなかったということです。個人のチカラでベトナム守備ブロックを切り崩していくには限界がある日本だから、やはり組織で崩していかなければならないということです。人とボールがよく動くサッカー。もちろんそれは、仕掛けに参加してくる人数とボールがないところでの仕掛けアクションの量と質によって左右されるわけです。

 たしかに後半での流れのなかからの仕掛けでは、右サイドをワンツーで抜け出した水野のダイレクトシュートや途中交代した梅崎のスーパー中距離シュートもあった。ただ、全体的に見たら、やはり物足りない。もっと吹っ切れた心理でガンガンと押し返していかなければならなかったと思うのですよ。吹っ切れた勢いで仕掛けてくるベトナムのエネルギーをガッチリと受け止め、逆にガンガンと押し返していくだけの「気概」を示して欲しかった。ベトナムが吹っ切れた勢いで攻め上がってきたからこそ、それは、日本代表にとって素晴らしい「学習機会」でもあったと思うのですよ。

 「気概」だけれど、それは、ボールを奪い返した直後の「ボールがないところでのプレー内容」に如実に現れてきます。その勢いは、たしかに物足りなかった。あまりにも様子見のプレー姿勢が目立ったのです。

 まず自分がスペースへ抜け出していく・・。そんなパスを呼び込むボールなしの動きさえ出てくれば、それが周りの仲間を突き動かすものなのですよ。そして、ボールなしの動きが重なり合うようになる。それこそが、人とボールの動きを活性化させるものなのです。

 要は「意志のレベル」の問題。意志さえあれば、おのずと道が見えてくる・・。ただし、明確な意志がなく、様子見になってしまったら、全体のエネルギーレベルは、確実に減退し、負のスパイラルに押し流されていく・・。

 いま夜中の0時を回ったところです。この後1時間ほどで、サウジアラビア対カタール戦がはじまります。もしそこでカタールが勝った場合、最終戦(カタール対ベトナム、日本対サウジ)で雌雄が決することになります。そこでの(ゲームに臨むにあたっての)大前提は、ホームのカタールが、(メンバーを落とすに違いない!?)ベトナムに勝つということです。だから日本もサウジに勝たなければならないけれど、このベトナム戦での結果が、そのとき大きく(ネガティブに!?)効いてくるかもしれない。

 だからこそ、3-0という大量リードを奪った後半の日本代表には、あとで後悔しないためにも、極限の危機感と、最後の最後まで全力を出し切るという気概をもって闘い抜いて欲しかった。もっともっと、一人ひとりが強烈な意志を示すことで、ベトナムのエネルギーを凌駕するほどにチーム全体が相乗エネルギーに包まれて欲しかった。もちろんそれが具体的なゴールに結びつかなかったとしても、最低でも全力を出し切って闘ったという自負は残るはずだから・・。

 そんなギリギリの気概さえあれば、チームは、ホンモノの闘うグループへと脱皮していったはず。私は、そんな若武者たちの「ブレイクスルー」の証人になりたかった。でも結局は、彼らのプレー姿勢からは、3-0でリードしているという「満腹感」をより強く感じてしまった。さて・・。

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 さて・・ということで、サウジアラビア対カタール。

 ホントに日本はツキに恵まれた。結局その試合は「2-1」でサウジが勝利を収めるという結果に終わったわけだからね。それも、ドラマチックなプロセスを経て・・。これで、カタールの予選落ちが決定。そして日本にとっては、最終戦のサウジアラビア戦を引き分けても北京オリンピック予選通過というシナリオが出来上がった。そうです。神様のワナという「悲劇のドラマ」の要素も内包する構図・・。

 ところで、ドラマチックだったサウジ対カタール戦。全体的な構図は、勝たなければならないサウジが攻め上がるけれど、守備ブロックを固めるカタールにことごとくはね返され、逆に危険なカウンターを仕掛けられて四苦八苦するというもの。

 サウジアラビアの攻めは、例によって「ボール絡みで勝負を決める」という、個の勝負に偏った仕掛けイメージなのですよ。サッカーでは、パスコンビネーションを駆使して「ボールがないところで勝負を決める」という仕掛けイメージ「も」大事なのに・・。要は、攻撃の変化の演出が決定的に重要だということなんだけれど、サウジの攻めは、個の勝負をゴリ押ししていくだけという体たらくなのです。これじゃ〜ね。まさに、カタールの「ゲーム戦術イメージのツボ」に完璧にはまり込んだ試合展開ということでした。

 そして後半の20分過ぎ、まさに誰もがイメージしていたとおりのボール奪取&カウンターから、カタールが先制ゴールを決めてしまうのですよ。さてこれで、最終戦については(前述した)思っていた通りの危険なシナリオになったな・・なんて覚悟を決めた次第。そのとき、本当に、ベトナム監督のアルフレッド・リードルへ「メール」を出そうか・・なんて考えてしまった。今まで通りのしっかりとしたサッカーをやってくれよな・・日本全体がそれを期待しているぜ・・ってね。

 でも、ここから大変なドラマがはじまるのです。カタールの一人が退場になり、その直後にサウジがPKを得て同点・・そして試合終了間際には、コーナーキックから決勝ゴールを挙げてしまう。それも、クロスをヘディングしたボールが、相手に当たって(その選手の)足許にこぼれ、それを難なくカタールゴールへ蹴り込むというラッキーなもの。そのシーンを見たとき、思わずガッツポーズが出た。これでアルフレッドにメールしなくても済んだ・・。

 さて、神様のワナという「悲劇のドラマ」の要素も内包するサウジアラビアとの最終戦。そこでは、例によって、ギリギリの闘う意志が試される。中盤の(特に守備に関する)リーダーシップというテーマも含めてね。反町監督の、心理マネージャーとしてのウデに期待しましょう。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま四刷り(2万数千部)ですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。NHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました(その記事は「こちら」)。サボティスタ情報ですが、最近、「こんな」書評がインターネットメディアに載りました。

 




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