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2007_U17と中村俊輔・・両方とも、期待通りのコンテンツで良かった・・(2007年8月19日、日曜日)

まず、韓国で行われている「FIFA U17ワールドカップ」から。

 とにかく日本代表は、本当によく闘い、素晴らしい勝利を収めました。昨年彼らがアジアチャンピオンに輝いたときと同様に、ちょっとした感動に浸ったモノです。城福監督は、良いチームを作り上げました。

 この試合は、対照的なゲームになりました。「人とボールを動かす」組織プレーを前面に押し出す城福ジャパンと、個人勝負プレーを中心に仕掛けていくハイチ。

 ハイチだけれど、もちろん彼らもパスを使いますよ。組み立て段階では、しっかりと(素早く&広く)ボールを動かすのです。でもまあ、基本的にそれは足許パスばかり。要は、次の「個の勝負シーン」を仕掛けていくシチュエーションを探るための「仕掛けゾーンの移動」といったイメージですかね。そして一人がドリブル勝負に入ったら、周りの味方は、そこからの展開の可能性を見極めるために様子見になるというわけです(ドリブラーにパスの可能性が出てきたら、もちろん動きはじめるけれど・・)。

 ちょっと「個」に偏りすぎのサッカー。でも、彼らが仕掛けてくる、ものすごい迫力の勝負ドリブルや中距離シュートをみていたら、その武器を使わない手はないと思えてくる。特にカウンター状況では、抜群の威力を発揮しそうです。

 彼らは、ボール扱いは上手いし、速いし、パワフル。そしてシュート力も抜群(まあ上手さは感じなかったけれどネ)。中南米カリブ地域の大会で優勝して今大会に臨んできたということだけれど、そんな彼らのプレーを観ていたら、彼らがどのようなプロセスで優勝したのかが手に取るように分かるよね。しっかりと守り、素早いカウンターや中距離シュートで蜂の一刺しを見舞う・・。

 そんなハイチに対し、あくまでも日本代表は、組織プレーをベースに(パスとフリーランニングを基盤に)スペースを攻略していこうとする。人とボールを動かしつづけるなかで、(小さなワンツーやスルーパスだけではなく、後方からの一発ロングパスも駆使して!)ハイチ守備ブロックの背後スペースを突いていこうとするのですよ。

 もちろん、組織プレーのなかに、流れるようなドリブル勝負もミックスしていく。それは、誰もが納得するタイミングの勝負ドリブルだから、ハイチのように、周りの選手の足が止まってしまうこともない。なかなかうまく、組織と個がバランスしていると感じていました。

 とはいっても、ハイチの守備ブロックは強力です。最初は、日本の素早く広い動き(ボールの動きと、ボールなしの人の動き)にウラを突かれるシーンもあったけれど、徐々にイメージ的に対応できるようになっていくのです。

 そんなゲーム展開だったから、前半42分に日本代表が、フリーキックから(うまいアイデアで)先制ゴールを奪ったことは本当に重要な意味がありました。それによって、後半のハイチがより積極的に攻め上がっていかざるを得なくなったからね(守備ブロックが開いてスペースが出来るようになった!)。だから、日本の組織的な仕掛けも(組織プレーでのスペース攻略も)うまく機能するようになっていったと思うのです。

 そんな傾向は、後半26分にハイチがスーパーロングシュートを決めて同点に追い付いてからも大きく変化しなかった。そこが大事なポイントだったと思います。それがあったからこそ、水沼もフリーでパスを受けて勝負ドリブルを仕掛けていけたし(それが勝ち越しゴールにつながった)、三点目シーンでの河野から柿谷への素晴らしいスルーパスもうまく決めることができた・・。

 とにかく、「組織」を前面に押し出すことで、どこまで世界に対抗していけるのか。それに対する興味は尽きることを知りません。水曜日のナイジェリア戦が楽しみです。

 あっ・・、その日は、オリンピック代表やオシム日本代表のゲームもあるんだった。ということは、朝方までレポートを書きつづけなければならない!? フ〜〜。

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 さて、中村俊輔についても、簡単にレポートしておくことにします。

 中村俊輔は、この試合でも(素晴らしくエキサイティングな試合になったアバディーン戦)まずチームの組織プレーリズムを演出し、それを確立するというイメージで立ち上がります。もちろん守備を絶対的なスタートラインとしてね。

 中村俊輔のプレーイメージは、味方も頼りにしている。だから彼にボールが集まるというわけです。もちろん俊輔がボールを持っても、周りの足が止まることはない。彼らは、組み立て段階での俊輔が、常にボールを有機的に動かすことを強く意識してプレーしていることを知っている(そのことに対して絶対的な信頼感がある)ということです。

 シンプルにボールを動かし、間髪を入れずに次のスペースへパス&ムーブ。チームのクリエイティブリーダーによる、そんな組織プレーの繰り返しが、チームに良いリズムを与えないはずがありません。まさに俊輔は、セルティックの中盤のイメージリーダーになっているのですよ。天才ドリブラーのマクギーディーに、どのタイミングでドリブル勝負を「させる」のかというポイントも含めてネ。

 そして次に出てくるのが、このところのメインテーマである、組織プレーと個人勝負プレーのバランス。この試合では、何度も、個の勝負プレーを魅せてくれました。例えば、先制ゴールを奪われた直後の、右サイドでの「魔法」。ドリブルで突っ掛け、ちょっと切り返して逆サイドのゴール前スペースへ飛び出してくる味方へピタリの決定的クロスを決めたプレー。惜しくも、ヘディングシュートは決まらなかったけれど、まさに天才的なチャンスメイクでした。またゴール正面からのドリブルシュートというシーンもあった。右と左の二回・・。惜しかった。

 それにしても、俊輔が放つ「決定的スペースパス」は本当に素晴らしいよね。例えばクロスボールだったら、走り込む味方のアタマにピタリと合わせられるし、決定的スペースへ通されるスルーパスや、相手守備ブロックのウラを突くようなサイドチェンジパスなども破壊力抜群です。もちろんフリーキックも含めてね。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著(日本人はなぜシュートを打たないのか?・・アスキー新書)の告知をつづけさせてください。本当に久しぶりの(ちょっと自信の)書き下ろし。それについては「こちら」を参照してください。

 




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