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2007_ACL決勝の1・・それにしても、本当によく引き分けに持ち込んだ・・(セパハンvsレッズ、1-1)・・(2007年11月8日、木曜日)

そのとき、心臓が止まりそうになった。

 後半ロスタイムに入ったゲーム終了直前にセパハンが繰り出した一発カウンターシーン。GKからの超ロングフィードを受けたリダが、マークするネネを翻弄して持ち込み、決定的なシュートを打ったのですよ。結局は大きくバーを越えたことで事なきを得たけれど。そんなピンチのシーンが何度もあったから、(ラッキーも含め)本当によく引き分けたという印象が強く残る。フ〜〜

 たしかにセパハンはカウンターが得意だよね。もちろんそれは、レッズ守備ブロックが開いている(スペースがある)ということなのだけれど、ワンチャンスでのボールがないところの動き(スペースを狙うパスレシーブの動き)には、獲物を狙う猛禽類のエネルギーがほとばしっていましたよ。

 それにしても、前半と後半の立ち上がりの時間帯(まあ15-20分くらいまで)のレッズは、ちょっと前後の人数バランスがうまくマネージされていなかったという印象が残りました。何せ、酸素の薄い高地だからね、相手のカウンターに対して戻るためには、大変な(身体と意志の)エネルギーが必要になってくるのですよ。そのことも考慮して守備ブロックのポジショニング&人数のバランスを管理するべきだった・・。

 ゲームが行われたイランのイスファハーンは、標高1600メートルいう高原にあります。当然、空気の密度は薄くなる。そのことが、プレーに微妙な影響を与えていたのですよ。要は、(守備でも攻撃でも)一度の全力ダッシュの後の回復、つまり、息が上がった状態からの回復に時間が掛かるということです。

 攻守にわたって「眼前のボール絡み勝負」へはしっかりと対応できるけれど、例えば、(守備において)カバーリングへ全力で戻るプレーとか、抜け出した相手を全力ダッシュで追い掛けるプレー、また攻撃では、サポートへの押し上げプレーとか、スペースへの抜け出しプレーとか、ボールがないところでのプレー内容が明らかにレベルダウンしていたと思うのですよ。だからこそ、攻撃と守備でのポジショニング&人数のバランスに、殊のほか気を遣うべきだったと・・。

 でも、様々な事情で、「高地順応」に時間を割くことはできなかったんだろうね。高地順応とは、簡単にいえば体内で酸素を運ぶ、赤血球のなかのヘモグロビンの量を増やすことだけれど、それには少なくとも数日はかかると言われているからね。それが難しい場合は、とにかくゲームの直前に現地入りのが得策。今回の浦和レッズがやったようにね。フムフム・・

 セパハンだけれど、(慣れた高地であるというアドバンテージをフルに活用した!?)守備でのエネルギッシュで素早い「寄せ」は、うまく効果を発揮していましたよね。その意図は、もちろん高い位置でのボール奪取からの直線的なカウンター。

 彼らはよく知っているのですよ。相手が、「さあ、攻撃だ・・」と前へ重心が掛かりはじめた状況でボールを奪い返すことほど効果的なカウンターチャンスはないということを・・。もちろん、高地ということで、ボールを失った後に全力で戻るには、平地とは比べものにならないほど多くの物理的・精神的なエネルギーが必要になることも含めてネ。

 そんな効果的なボール奪取からのカウンターは、たしかに危険そのものでした。二人目、三人目のボールがないところでの動き(フリーランニング)がしっかりと「イメージ連鎖」する。その爆発的なコンビネーションは、セパハンの絶対的なチャンスメイカーであるナビドキアを中心に、危険なニオイを放散しつづけていましたよ。

 とはいっても、それは、(カウンター状況ということで≒レッズ守備ブロックがしっかりと組織されていないということで)スペースが明確に見えていたからに他なりません。自分たちでスペースを作り出さなければならない(スペースを活用していかなければならない)組織的な仕掛けとなると、そうスムーズにコトが運ぶというわけじゃなかった。

 セパハンは、スペースの使い方は上手くない・・。要は、二人目、三人目のボールがないところでの組織的な動きが鈍重なのです。もちろん(サイドチェンジなど)味方の足許への展開パスはある程度は機能していたけれどね。彼らの場合、組み立てベースの仕掛けでは、「個の勝負」を前面に押し出して攻め込むというのが基本的なイメージなんだろうね。これでは、レッズ守備ブロックの組織を崩してウラスペースを突いていったというシーンが皆無なのも道理でした。もちろんゴリ押しの個人勝負でチャンスを作り出したシーンはあったけれど・・。

 それにしても、ポンテの先制ゴールはスーパーだった。また、永井が放った右ポスト直撃ミドルシュートにも目を見張らされた。そんなシーンを見ながら、「これだ!」と思っていましたよ。これこそが、第二戦のキーポイントになる・・ってね。

 第二戦でのセパハンは、ガチガチに守備ブロックを固めてくるはず。守備ブロックに人数をかけることで、自分たちの「スペース感覚的に足りないところ」を補おうとするに違いないのです。彼らは「人」にも強いから、簡単にはレッズもスペースを使えないでしょう(簡単には、ある程度フリーでポールを持つ仕掛けの起点を演出できない)。だからこそ、セットプレーだけではなく、ロングシュート、アーリークロス(そこからのこぼれ球を狙う!)といったシンプルな勝負イメージ「も」しっかりと持つべきだと思うのです。

 もちろん、サイドゾーンを攻略した「マイナス・クロス」、ポンテを中心にした(後方の長谷部や鈴木も絡んでいく)必殺の組織コンビネーション、ワシントンのポストプレーや「粘りキープ&シュート」、田中達也や永井雄一郎のドリブル勝負といった(まだアタマが回転せず、表現が舌っ足らずだけれど)、レッズらしい攻めをベースにしなければなりません。それがあるからこそ、前述した「意外性のある仕掛け」の有効性がよりアップするというわけです。

 とにかく、来週水曜日の決戦へ向け、(既存のイメージに凝り固まることなく!)できるかぎり可能性を広げるような「イメージトレーニング」を積み重ねて欲しいと願うばかりです。

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 しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(ウーマン)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま四刷り(2万数千部)ですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞、東京新聞の(また様々な雑誌の)書評で取り上げられました。またNHKラジオでも、「著者に聞く」という番組に出演させてもらいました。また、スポナビの宇都宮徹壱さんが、この本についてインタビューしてくれました。その記事は「こちら」です。

 




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