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06_ヨーロッパの日本人・・稲本を少しだけ・・そして久しぶりに先発した中村俊輔・・(2006年3月13日、月曜日)

まず稲本からですが、彼のプレーコンテンツは、とても安定していました。もちろん守備的ハーフとしてね。

 チェイス&チェックアクションは例によって忠実で素早い・・次のボール奪取勝負アクションも鋭いし実効レベルも高い(ボールをめぐる競り合いで感じさせてくれるスピード&パワーには本物感がプンプン!)・・危ない場面でのボールがないところの(最後までつづくねばり強い)マーキングも信頼できる・・。なかなかのモノでした。

 とはいっても、攻守にわたって「リスクチャレンジのチャンスを探る」という、主体的に仕事を探すという積極姿勢については、ちょっと不満。チーム戦術というロジックベースでは、たしかに必要条件は満たしているけれど、理想的なパフォーマンスからすれば、まだまだ十分条件を満たしているとは言い難い・・ってな分かりにくい表現になってしまうけれど、要は、もっとボール奪取勝負アクションを積極的に狙ってもいいんじゃないか?!・・もっと、前のスペースへ飛び出していってもいいんじゃないか?!・・というシーンが(探せば見つけられるチャンスが)まだまだあると感じられるのですよ。ちょっと「感覚的な表現」になってしまったけれど、とにかく一点を追い掛けるウエストブロムが、稲本とは別な選手に期待したという(稲本は後半23分に交代)ことは事実だということです。

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 さて、中村俊輔。現在リーグ4位の強豪ハイバーニアンとのアウェーマッチですが、もの凄い気合いでガンガン来るホームのハイバーニアンに、立ち上がりのセルティックは完全に押し込まれてしまいます。とにかく、何としても勝つんだ!というハイバーニアン選手たちの強烈な意志が、画面を通して伝わってくるのですよ。

 そんなホームチームの勢いに、セルティックもタジタジ。だから、中村俊輔も良いリズムでプレーできない(立ち上がりのフリーキックは相変わらず凄かったけれど・・)。そんな、物理的&心理・精神的に押し込まれた状況だからこそ守備が決定的な意味をもってくる。私は、その時間帯、中村俊輔のディフェンス姿勢に目を凝らしていました。そして、ちょっと落胆・・。「行ける」のに、ちょっと逡巡してしまったことで相手に「楽な」パスレシーブを許し、そのままタテへ抜け出されてしまうといったシーンを目撃しなければならなかった(たとえば前半30分のシーン・・彼には、確実に、相手パスレシーブのシーンが脳裏に描写されていたはず・・でも・・)。何せ、前回レポートした、後半18分から登場して魅せつづけた、攻守にわたって抜群に積極的な「実効プレー」のイメージがあったから、ちょっとフラストレーションがたまったというわけです。

 でも今のセルティックには、ロイ・キーンという絶対的な中盤のリーダーがいる。前半24分に先制ゴールを奪われた直後から、キーンを中心に、見る見るうちに盛り返していくセルティックなのですよ。そしてセルティックの同点ゴールが決まり、逆にハイバーニアンの勢いが見る見るうちに減退していってしまう。自ら確信レベルを高揚させ、勢いを加速させたセルティック。逆に、ホームゲームで負けることに対する恐怖感がつのってきたハイバーニアン?! そんなゲームの流れの豹変ぶりに、本物の心理ゲームであるサッカーの複雑さをかいま見た気がしたモノです。

 後半は、全体的にセルティックがゲームペースを握るという展開。そのなかで中村の存在感もアップしていきます。キーンとのワンツーを素早く繰り返す組み立て・・大きく鋭い、逆サイドのマロニーへのサイドチェンジ・・迫力があったドリブル突破&シュートチャレンジ・・勝ち越しゴールにつながった、例の精緻な意図が込められたコーナーキック・・等々。とはいっても、そんな見せ場にもかかわらず、どうも全体としては「単発」という印象をぬぐえない。今の中村ならば、自己主張としてポジションを主体的に変えていったり、自分が(声や表情や態度などを駆使して!)リードするコンビネーションを繰り出したり等々、もっともっと出来るはずだと思っていた湯浅なのです。

 それでも、スコティッシュの激しいサッカーのなかでも、まったくビビることなく闘う姿勢を表現できていたことは特筆に値する変化だと感じていました。まあ・・ね・・自分から、相手をブッ飛ばしたりはしないけれど、それでも、身体や手や足を駆使して中村のドリブルやキープを止めようとする相手に対し、そんなプレッシャーを力強くはねのけたり、互角のぶつかり合いを展開したりなど、なかなかのモノでした。環境こそが人を育てる・・ってことか。




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