トピックス


06_ヨーロッパの日本人・・さて「本物のボランチ」へ向けて発展をつづける稲本潤一・・(2006年2月1日、水曜日)

「来るゾ・・来るゾ・・」。そのとき、期待がわき上がってきましたよ。そして、まさにイメージしたとおりの「前でのボール奪取勝負」に、押し上げた稲本がチャレンジしてきたのです。「堪えられないネ」なんて、快哉を叫んでいた湯浅だぜ。

 それは前半9分のこと。ハーフウェイラインからちょっと自陣に戻った左サイドのポイントから、ウエストブロムのグリーニングが、最前線のキャンベル目掛けてくさびのロングパスを入れる・・このとき、同じ「高さ」の中央サイドゾーンにいた稲本は、このパスがキックされるのと同時に、前線でのサポートをイメージして高速ダッシュをスタートする・・ただ、ロングパスに合わせたキャンベルのヘディングによるタテパスは、コースがずれたために相手にカットされてしまう・・しかし、サポートのために上がってきていた稲本は、すぐにイメージを切り替え、今度はボール奪取勝負に入る(相手選手にボールがわたったシーンを映し出すテレビ画面のなかに、全力で寄る稲本が急に入ってきた!)・・そして、効果的なアタックを仕掛けてボールを奪い返してしまう・・。残念ながら、カットされたボールが誰もいない最前線スペースへ転がってしまったことで相手ボールになってしまったけれど、そのシーンは、稲本の、攻守にわたる積極プレーイメージを象徴するものでした。

 この試合でも、基本的には中盤ディフェンスを中心にする「センターハーフ」といったニュアンスの仕事をこなす稲本。チェイス&チェック(守備の起点を演出する汗かきプレー)をベースに、次のボール奪取勝負をイメージした有機的連鎖プレーにも鋭さがあふれ出しています。もう、以前には頻繁にみられた「無為な様子見のプレー空白シーン」が目立つことはまったくありません。彼の「タメ」からは、次のボール奪取勝負に対する明確な自信がうかがえるのですよ。次のボール奪取勝負を明確にイメージした「タメ」からの、タイミングを見計らった爆発アクションスタート・・ってな具合。

 それにしても、稲本が展開する実際のボール絡みシーンでは、まさに「日本人離れ」といった力強さを感じますよ。もちろん、この「力強さ」の背景に、ボール奪取勝負アクションをつかさどる「駆け引きイメージ」の積み重ねがあることは言うまでもありません。身体の使い方の駆け引き・・アタックアクションフェイント・・相手のアクションをスタートさせる誘発プレー・・そして最後のタックルへのアクションフロー・・等々。それにしても、フットボールネーションの強者たちにも決して引けをとらない力強さは本物です。

 冒頭のボール奪取勝負アクションだけではなく、右サイドや相手ペナルティーエリア前で、抜群のボディバランスで繰り出したスライディングによってボールを奪い返してしまったシーンも素晴らしかった。また前半31分には、一度は、チャールトンの(相手チームの)ベントとスメルティンによるダイレクトパス交換で置き去りにされてしまった稲本がすぐに振り向いて反応し、ドリブルで突進するスメルティンを「効果的な追い掛けコース」でシュートコースを限定しながら(ドリブルするスメルティンは、稲本の足音と息づかいを明確に感じていた=稲本が心理的なプレッシャーを与え続けた!)、最後のシュートの瞬間に効果的なタックルを仕掛けることで(そのタックルをスメルティンが意識しプレッシャーに感じていたことで)シュートミスを誘発したというシーンもありました。もちろんそのシュートミスの背景には、実際のシュートコースが、稲本の「追い掛け」で狭められたということもあります。素晴らしい全力での「追い掛け」・・素晴らしく効果的な(物理的&心理的な)プレッシャー・・それはまさに、自分主体のクリエイティブ守備でした。稲本のチームメイト、アルブレヒトセンが、最後の最後のタイミングで効果的な爆発スライディングを仕掛けて倒れ込んでいる稲本に対して、「サンキュー!」という拍手を送っていましたよ。

 センターハーフとか攻守のバランサーといった感じの稲本。ボール絡みだけではなく、次のボール奪取勝負イメージを描写するボールがないところでの「タメ」や、ボールがないところでの穴埋め(ボールなしシーンの実効マーキング)、はたまた協力プレスを狙いつづける猛禽類のプレー姿勢など、ディフェンス面での実効レベルだけではなく、しっかりとしたボールキープからの組み立てパスやタテへのリスキーな仕掛けパス、タイミングを見計らった「タテのスペースをつなぐ迫力ドリブル」やミドルシュート狙いなど、攻撃での機能性も順調にアップさせています。「中盤の底」として、その攻守にわたるプレーコンテンツが本格的なボランチ(本物のゲームメイカー)の領域に達しようかという稲本。このままのペースを維持した発展が大いに期待されるじゃありませんか。

 ところで、この試合でもウエストブロムのスーパーGK、ポーランドのクシュチャクは素晴らしい活躍でしたね。前々節のウィガンとのアウェーゲームでも「神になった」クシュチャクだったけれど、とにかく、あんな素晴らしいゴールキーパーを持つ最終ラインは心理的に楽だろうね。




[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]