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2006_ヨーロッパの日本人・・高原直泰、松井大輔、そして中村俊輔・・(2006年10月2日、月曜日)

まずは、高原直泰から。

 前回レポートでは、闘う姿勢(意志)のレベルが大幅にアップしている・・リスキーな勝負パスや勝負ドリブル、コンビネーションの起点、スペースへの飛び出し(パスレシーブの決定的フリーランニング)、シュートへの積極的な姿勢、また前線からの積極的なディフェンス参加など・・吹っ切れたマインドが目に見える・・良いね・・と書きました。でもこの試合では、その「意志パワー」が、ちょっと安定指向へ傾きはじめたと感じました。古巣のハンブルクとのホームでの対戦なのに・・。

 まあ、それにはハンブルクが良いチームだという背景もある。ハンブルガーSVは、攻守にわたって優れた組織プレーを展開するし、そのこともあって、フランクフルトが簡単に(人数をかけて)攻め上がれるわけじゃないからね。高原が、フリーでボールを持ったり、厚い味方サポート得るなんていう状況を演出するのは難しいのですよ。

 まあそれでも何度かは、ボールを持って振り向くというドリブル勝負のチャンスを作り出したけれど、結局は相手を抜き去るというところまではいけない。スピードとドリブル勝負の「だまし合い」で優位に立てないことは明白な現実でした。まあ、ちょっと相手のマークを横に外してクロスを上げるという気の利いた実効プレーはあったけれどね。

 前節のゲームでは、ボールがないところでの効果的な動きも目立っていたけれど、この試合では、どうも「パスを待つ」という状況の方ばかりが目に付いていた。また前線からの守備にしても、ちょっとお座なりという印象。もっと前からチェイス&チェックを仕掛けていけば、ボール奪取状況から移行する次の攻撃でも、(流れにうまく乗れることで)もっともっと良いカタチでボールを持てたはずなのだけれど。

 とはいっても、ゲーム終了間際には、この試合でのベストチャンスを演出します。それは、高原が、相手のプレッシャーをものともせずにボールをキープして右サイドへ展開したパスから生まれたから、彼自身が演出したチャンスとも言える。その右サイドへの展開パスからセンターゾーンへ戻されてきた決定的なクロスボールを、パス&ムーブの全力ダッシュでゴール前スペースへ飛び出していった高原自身ががフリーでダイレクトシュートを放ったのですよ。でもそのシュートは、僅かにゴール右へ外れてしまう・・。

 ツキにも見放された高原ってな具合。そのゴールが入っていれば、再び、発展へのモティベーションをステップアップさせたに違いないからね。とはいっても、悔しさもまた、確実に次のステップへのモティベーションになるはずだから・・。

 ここでテーマにしているのは、もちろん「意志」。最後は自由にプレーせざるを得ないサッカーは、意志のボールゲーム(本物の心理ゲーム)ともいえるからね。意志のコンテンツによって、プレーが何倍も活性化したり、地に落ちたりするのがサッカーだということです。

 まあ、とはいっても、サッカーは本物のチームゲームでもあるわけで、周りの出来が悪いときに自分だけ優れた積極プレーを展開することほど難しいチャレンジはないというのも確かな事実。周りのネガティブな流れに巻き込まれることなく、目指すべき目標へ向かって自分の意志でギリギリまで闘う。それこそが、個人事業主のプライドが内包する本物のチャレンジ姿勢というわけです。

 その視点で、このところの松井大輔のプレー姿勢(意志のコンテンツ)には、ちょっと落胆させられている湯浅です。攻守わたる闘う意志が、まったくといっていいほど前面に押し出されてこない。そんな彼のプレーコンテンツに対しては、コメントに値しないと憤ることだってしばしばなのですよ。シーズン当初は、彼について情熱的なコラムを書きました。当時の松井大輔のプレーからは、明確なイメチェンの臭いを感じていたのです。

 たしかに、松井が所属するルマンでも、チームプレーに逆行する「ネガティブなエゴイスト」がいることは確かです。組織コンビネーションに対するイメージなどハナから持ち合わせていない自分勝手なドリブラー。でも、だからといって、左サイドに張り付き、歩きながら様子見になってしまうことへの言い訳にはならない。

 もちろん、自分がパスを受けられる状況では、爆発的なフリーランニングでしっかりとスペースへ走り込むし、良いカタチでボールを持ったら、リスキーなドリブル勝負にチャレンジしたり、センスあふれる勝負パスも供給する。また守備でも、ボールが奪い返せる状況では、彼本来のハイレベルなセンスを感じさせる効果的なボール奪取アタックを仕掛けていったりする。でも、そんな攻守の勝負を仕掛けていく頻度が低すぎる。自らチャンスを演出しようとする「意志」が明確に見えてこないのですよ。だからこそ、その才能が本当に惜しいと思うのです。

 たしかに、松井大輔の仕事環境(チーム戦術な事情)にはちょっと偏りがある。でも、そんな厳しい状況にしても、自らの意志でポジティブに変容させられる可能性は常に残されているわけだからね。後は自分自身で闘うしかないというわけです。

 最後に中村俊輔についても短く。

 フォルカークと対戦した今節(昨夜)のリーグ戦でも、良いパフォーマンスを魅せてくれました。彼の場合は、自らチャレンジしつづけることで、仕事環境をうまく好転させていると感じます。グラヴェセンが加入してきてからも、しっかりと、自分がコアになった仕掛けの流れを演出できていると感じるのですよ。

 特に前半の存在感は格別でした。数日前のチャンピオンズリーグ(CL)での好調をそのまま維持していると、頼もしく感じていた湯浅でした。そのCLレポートについては「こちら」を参照してください。

 動きのなかで展開する、シンプルな組織プレーとドリブル勝負やタメ(そこからの勝負パス)などの個人プレーのメリハリある使い分け。もちろん、ココゾのコンビネーションも冴えわたる。守備でも、しっかりとした実効プレーを展開する中村にボールが集まるのも道理という流れでした。そんななかで魅せた、マークする相手を翻弄してのシュートシーン(前半)や、右サイドを深くえぐる勝負ドリブルからの決定的クロスシーン(後半)は殊の外素晴らしいアピールでした。

 とはいっても、チャンピオンズリーグの試合と比べれば、ボールがないところでの、強烈な意志が込められた全力ダッシュの量と質という視点では、ちょっとパワーダウンしたかな。だから、中村が絡んだ仕掛けには、ちょっとスピードダウンしてしまうという傾向が感じられた。

 要は、人とボールをしっかりと動かす組み立てだけではなく、(相手守備ブロックが整わないスキを狙った)直接的なタテパスを駆使したカウンター気味の素早い仕掛けも大事だということです。それらをうまくバランスさせるというイメージ。それがあって初めて、本当の意味での攻撃の変化を演出できるのですよ。

 攻守にわたって、高みで安定したプレーを展開する中村俊輔。まだまだ発展キャパには大きな余裕がある。これからも、攻守わたって、飽くことを知らないチャレンジをつづけて欲しいモノです。




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