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ジーコジャパン(56)・・南米のツボにやられてしまった日本代表・・そこで呈示された何らかの示唆を機会とせよ!・・(日本vsペルー、0-1)・・(2005年5月22日、日曜日)

これは、仮想バーレーンとしても意味のある試合になりそうだ・・ホント、この親善ゲームには予想外の価値がある・・。観はじめてすぐに感じたことです。何せ、事前インフォメーションでは相手のペルー代表にはまったく主力は含まれていないということだったけれど、フタを開けてみたら、それはそれで南米特有のチカラを備えたチームだったですからネ。そして終わってみれば、ギリギリの勝負イメージという視点でまさに最高の学習機会になったという次第。ワンチャンスをキッチリとゴールに結び付けられる南米・・。その視点でも、バーレーンに相通ずるモノがある・・?!

 ペルー代表は、役者が揃っていないとはいえ、やはり南米のチームでした。テクニックはしっかりとしているし、個人での突破力も十分。そして、ロスタイム決勝ゴールで証明したように、歴史に支えられた(?!)ここ一発の集中力もある。もちろん組織プレーには限界があるけれど、とにかく個の突破(直線的なドリブルでの突っかけプレーなど)を足がかりに仕掛けてくるというポイントでは、たしかに仮想バーレーンそのものだと思っていた湯浅なのですよ。

 またもう一つ、「仮想」という視点で大事なポイントがありました。それは、ペルー代表が、チャンスとなったら、どんどん中距離から危険なシュートを打ってくるという事実です。これもまた、まさにバーレーンそのものじゃありませんか。前回のホームでの対バーレーン戦でも、オウンゴールで日本にリードされた後にバーレーンが魅せた個人勝負をコアにした仕掛けでは、ペナルティーエリアの外ゾーンから、ズバッと危険なシュートを打たれたものです。ラッキーなことにGKの正面だったけれど・・。

 この試合でのペルーは、カウンター気味の流れから、最後は、とにかくコースが空いたらシュートというシンプルなイメージで攻撃をフィニッシュしようとしていました。そして実際に何度か、そのカタチでのフィニッシュを演出してしまうペルー。川口の正面に飛んだから事なきを得たものの・・。私が言いたいことは、ゴール前20-25メートルゾーンでは、決して相手にシュートを打たせてはならないということです。これには、しっかりとしたイメージトレーニングと集中力トレーニングが必要です。本当に、ちょっとした集中切れが致命傷になりかねませんからネ。特に、肉を切らせて骨を断つというワールドカップ予選においては・・。

 この試合での日本の攻撃コンテンツですが、例によって、流れのなかで相手守備ブロックのウラスペースを突く(それを起点に明確なシュートチャンスを演出する)というチャンスは十分に演出できませんでした。抜け出した大黒へのスルーパスが決まりそうになったシーンや二列目選手がコンビネーションで押し上げたシュートシーン等はあったけれど、相手ディフェンダーの守備イメージのウラを突いたチャンスを十分に作り出したとはとても言えない。もちろん日本代表は、組織パスプレーを基調に仕掛けていくけれど、ボールがないところでのパスレシーブの動きが不十分など、その流れが単発すぎるということで、どうしても人数を掛けたペルー守備ブロックに読まれて正確に対処されてしまうというわけです。要は、ドリブルなどの個の勝負で相手を抜き去れないから、仕掛けに変化をつけられないということなんだけれどネ・・。

 ということで、この試合での主体的チャンスメイクは、サイドからのドリブル勝負やコンビネーションが成功したときとセットプレーということになりました。その視点で、前半での三浦淳宏の積極的なドリブル勝負には目を見はらされました。サスガに往年の天才。素晴らしいテクニックとスピードをベースにした思い切りのよい仕掛けの流れは見所十分でした。とはいっても、後半のパフォーマンスが大きく減退したことも確かな事実。ワールドカップ予選では、とにかく互いに疲れてくる後半に、どのくらいの運動量と集中力を発揮できるか、また味方を鼓舞する吹っ切れた勝負プレー(≒リスクチャレンジプレー≒心理的な刺激プレー≒本物のリーダーシップ!)を繰り出していけるのか勝負の分かれ目なのですよ。だからこそ、ベテランの三浦淳宏には、2000年シドニーオリンピック、スロバキア戦で魅せた左サイドのドリブル突破(そこからの必殺クロスが中田英寿のヘディングゴールにつながった!)の再現を期待したい湯浅なのです。

 サイドからの仕掛けでは、3月31日にホームの埼玉スタジアムで行われたバーレーン戦の後半にアレックスと加地が魅せた吹っ切れたドリブル勝負もよかった。ハーフタイムにジーコからの具体的な指示(暗示?!)があったらしいけれど、とにかく後半の彼らのドリブル勝負は、前半とは見違えるほどの危険度を魅せつづけていました。それがあったからこそ、日本の攻撃にも勢いが乗ったというわけです。とにかくこの時点での日本代表は、全方位で攻撃の変化を演出しようとするよりも、ポイントを絞り込んだ仕掛けツールに「徹する」ことを優先する方がいいのかもしれない・・なんてことを考えていた湯浅でした。

 それにしても、ペルーが魅せた一発カウンター決勝スルーパス&ダイレクトゴールは素晴らしかった。何が素晴らしかったのかって・・? そのチャンスメイクが偶発ではなく、カウンターに参加した全てのペルー選手たちが、最後の「ピンポイント」まで明確にイメージしながら、確信をもって全力アクションをつづけたことですよ。それこそ「南米のツボ」というわけです。これから、肉を切らせて骨を断つ闘いに臨む日本チームにとって、何らかの貴重な示唆になったことを願って止みません。もちろん「それ」で、必要以上に注意深くなることなく・・ネ・・。

 



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