トピックス


05_コンフェデ_8・・ジーコジャパン(64)・・大会のこと・・日本に対する評価のこと・・ナカナカコンビのこと・・(2005年6月25日、土曜日)

この二日間、スポナビの記事を書いた以外はケルンでゆっくりと過ごしていました。友人たちと旧交を温めたり、サッカー人とディカッションしたり。まあそれには、高速インターネットをつなげられないことで、仕方なくアナログ活動をしていたという側面もあったけれど・・。

 私は、大会を通した「インターネット接続サービス」と契約しました。525ユーロだから約7万円。条件としては、「どのスタジアムのメディアセンターでも、決勝の次の日に当たる6月30日まで、24時間の接続サービスを受けられる・・」というもののはずだったけれど(もしかしたら細かな付帯条件があったのかもしれないけれど・・)、ケルンのメディアセンターは、日本対ブラジル戦の翌日1800時までで完全に引き払われてしまった。そういえば、フランクフルトも、2200時でセンターをクローズされ、それ以降はネットを使えなかった・・たぶん他の競技場でも同じような状態だったに違いない・・世界中のメディアが集まる国際大会だから、時間を気にせず仕事ができなければ意味がないのに・・。こちらは、仕方なくダイヤルアップ接続。それでは、メールをチェックするくらいしか出来ませんよネ。

 このことについては、既に何人かの「IT関連のマネージメント関係者」に、冷静に苦情を述べておきました。「・・という状況なのですが、いかがですか?」という具合にネ。彼らは、一様に、「アナタがアンフェアだと感じられることはものすごくよく分かります・・こちらも、大会運営本部へしっかりと報告します・・」という友好的な反応でした。我々は、メディアセンター全体のサービス機能などまったく必要としていません。管理する方が一人か二人いれば、インターネット接続サービスだけならば管理できるはずなのに・・なんて、ちょっと文句タラタラの湯浅だったのです。

 そして、今日の朝方ケルンをスタートしてニュールンベルクに到着し、すぐにネットに入り込んで様々なことをチェックしていたとき、ある読者の方が送ってきた「こんなメール」発見したのですよ。「日本では、ブラジル戦の評価が高く、日本との親善試合を申し出る欧州チームが殺到しているという報道が流れています・・ブラジル相手に立派に闘った日本でしたが、現地での評価は如何ですか?・・そして、日本を叩きのめさなかったブラジルとの試合の湯浅さんの本音の評価は?・・世界にインパクトを与えた日本ですが、コンフェデレーションズカップの意義(プレワールドカップ)をフットボールネーションはどのように活用しているのでしょうか?」

 メディアセンターでキーボードに向かっているのですが、今は、あと4時間ほどでドイツ対ブラジル戦がキックオフされるというタイミング。調べモノもありますが、そんなクリエイティブな質問に創作意欲が刺激されてしまって・・。

 あっと・・来週(?!)発売の雑誌ナンバーの記事や、昨日アップされたスポナビの記事でも、日本代表とドイツ代表についてレポートしています。時系列で読まれれば、面白いかも・・。私はこの半年間、最終予選と「その後」という風に、チーム戦術的に完全に分離してジーコジャパンを観察していましたから・・。

 まあでも、まずコンフェデレーションズカップの意義について。今回のコンフェデは、過去の大会にはなかった各チームのやる気と緊張感にあふれています。そのことについては、ドイツやフランスのベテラン記者たちの意見も一致している。まあもちろん、直接ケガにつながるようなギリギリの競り合いについては、互いに90パーセントまで・・なんていう意識はあるでしょうがネ。そのことは、見ていて感じるし、厳しいファールが少ないことでも分かります。もちろん、世界トップのチームが、ほぼベストメンバーを揃えて集合したハイレベルな大会という背景もありますよね。レベルが高い同士の試合だからファールが少ないという側面もあるということです。そんなマイナス要素を差し引いても、今回のコンフェデには、各チームのリキ(本気)を感じる。

 私は、その背景に、開催国がドイツであること、また来年のW杯のあとに、再びヨーロッパへW杯が戻ってくるまで16年から20年待たなければならないという事実があるとも思っています。何といってもドイツは、世界を代表するフットボールネーションの一つだし、ヨーロッパでもっとも進んだインフラ&ファンダメンタルズを基盤に、運営能力や治安、情報発信能力などが優れているだけではなく、初期情報として、参加する各国が「なるべくベストチームを組む・・」という姿勢であることが伝えられていた等々、参加するチームも、最初から大きなメリットを感じていたということでしょう。

 だからこそ、特に現場にとっては、準備試合(プレ大会)としての意義が深いトーナメントということです。特に、予選が免除されるドイツ代表にとってはこの上なく大事。もしかしたら、今回のプレ大会の充実度を上げるために、かなりの政治力が動いていたのかもしれません。ドイツの政治家は、多くがサッカーファンであるだけではなく、サッカーの大きな存在意義(社会的価値)を心底体感&理解している人たちですからネ。もちろん政治力を行使するうえでベースとなる経済的バックボーンについても、ドイツは申し分ないし・・。まあそんな「うがった見方」も出てくるほど、今回のコンフェデレーションズカップに、プレ親善トーナメント以上の意義が内包されていると感じている湯浅なのですよ。今回の大会は、本物の勝負としてのコンフェデレーションズカップ元年になる?! さて・・。

------------------

 ということで、大会自体の「本格感」に支えられるように、日本が展開した攻守にわたるハイレベルな組織プレーも、こちらのエキスパートたちに「本気で」高く評価されていました。いくらアウェーでチェコに勝ったとしても(昨年4月・・そのときのコラムはこちら)、そこには確実に、「まあね・・」というフレンドリーマッチ以上独特の「注釈フレーズ」が付いて回ります。それは、チェコ戦の後ドイツを回った私も体感していたことです。とにかく、体感レベルで比較したときの、今回のコンフェデレーションズカップに対するこちらの人々の「評価の本気度」は格段に高いことだけは確かな事実なのですよ。これで私も、ヨーロッパでの仕事がやりやすくなる・・。

 ブラジル戦についての私の本音・・?! 誰が見ても、ブラジルの方が一枚も二枚も上手なことは一目瞭然でしょう。それに、ブラジルチームの後半の選手交代も、勝ち切るというマインドとは逆行したものだったし・・。まあバレイラ監督は、あの攻めの内容だったら、日本に同点ゴールを入れられることはないな・・なんてイージーに考えていたフシもあります。要は、やはり甘く見られていてたということです。まあ仕方ない・・。

 とはいっても、日本が吹っ切れた攻撃サッカーを展開できたことも確かな事実。もちろんそれは、中盤での積極クリエイティブディフェンスがうまく機能したからに他なりません。

 ブラジルの攻撃でのキーワードは、「相手守備ブロックをボールウォッチャーにしてしまう!」というものだと思うのですが、そのベースになるのが、突っかけるドリブルやギリギリのタメなどに代表される「個の仕掛けプレー」。そこで相手ディフェンスの視線と意識を引き寄せた次の瞬間に、スッとボールを動かされた、そのバイタルゾーンとはまったく違う場所で勝負を決められてしまう(ノールックの斜めラストパスや、抜くぞ!抜くぞ!という突っかけから放たれるギリギリのスルーパス等々)。だからこそ、1974年アメリカワールドカップでの展開された、イタリア守備の天才バレージによるカバーリングが、伝説的なスーパー守備プレーとして今でも語り継がれているというわけです。

 日本は、そんなブラジルの攻撃に徐々に慣れ、特に後半は(まあブラジルが選手交代したこともあったけれど・・)、比較的うまく組織的な守備を機能させられていました(だからこそ、人数をかけた組織的な仕掛けもうまく機能した!)。ということで、総体的な評価は、自信レベルを高揚させられたという意味でも二重丸ということになるのです。この二重丸は、日本選手たちが、自分たちはまだまだ世界の二流の域を明確に抜け出せていないという事実をしっかりと認識することで、はじめて次の発展のベースになります。満足してしまった次の瞬間には、確実に進歩は止まるのです。

 ところで中田ヒデと中村俊輔。彼らについて、ドイツ人のエキスパートたち(ジャーナリストやサッカーコーチ連中)から色々な質問を受けました。面白かったのは、ヤツらのなかでは、中田派と中村派に「好み」が二分していたこと。まあ彼らのプレーコンテンツは、比べること自体が馬鹿げたことなのですがネ。とにかく今回の大会で、彼らのコンビネーションが素晴らしかったこと(どんどんとプレーイメージのシンクロレベルが高揚しつづけたこと)は特筆の現象だったと思っている湯浅なのです。

 相互レスペクト関係の深まり・・?! そのレスペクトの根本は、もちろん「汗かきプレーの実効度」に他なりません。要は、攻守にわたって自ら仕事を探しつづけるプレー姿勢(≒クリエイティブな守備意識)の発展をベースにした信頼関係の深化というわけです。目立たないボールのないところでの守備をサボったり、勝負所でアリバイプレーにはしった瞬間に信頼関係はガタガタになりますからネ。もちろん、少しは「遊び」はあるけれど、それも彼らのレベル独特の評価基準の範疇に入るものですがネ。とにかくその意味で、ナカナカコンビが魅せたつづけた攻守にわたる協力プレーのコノテーション(言外に含蓄される意味)はどんどん発展したのです。

 中村俊輔は、自分のワザを表現するために、守備も含む、準備段階での汗かきプレーを惜しまなくなった・・まあ昨シーズンのスタートからの本格的なイメチェンだけれど、それがあるからこそ、チームプレーにおける自信(自己主張)も大きくレベルアップした・・。また中田英寿は、イラン戦とバーレーン戦の二試合も含め、フィオレンティーナでは出場機会がなかったにもかかわらず、この3ヶ月で、最高パフォーマンスまで復活してしまった・・まあ彼からすれば、いつものパフォーマンスだよということになるのだろうけれど・・それにしても、中田ヒデの能力を最後の最後まで信頼し、周りのノイズに関係なく(守備的ハーフへのコンバートも含めて)使いつづけたジーコの、勝負師としての雰囲気も格段に向上した・・中田にしても、彼がイニシアチブを握ることに対するチーム内での(日本独特の?!)粘性の高い心理的な抵抗も、うまくマネージできたことは素晴らしい・・そこでの中田は、彼に対するチーム内の不満ノイズを、グラウンド上のプレー内容で霧散させた・・いや、ホントに脱帽・・。

 この二人に対しては、ドイツのエキスパートたちも、本音で高く評価していましたよ。もちろん、ジャパンマネーなんて全く関係なく、純粋にサッカー選手としてネ。

 



[ トップページ ] [ Jワンポイント ] [湯浅健二です。 ]
[ Jデータベース ] [トピックス(New)] [ 海外情報 ]