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リーガエスパニョーラ・・レアルの悩みはつづく?! その(4)・・レアル・マドリー対アトレティコ・マドリー(2-2)・・(2003年1月21日、火曜日)

これまで、このHP、サッカーマガジンや週刊プレイボーイの連載などで、最高の「学習素材」としてのレアルを追い続けていると書きつづけているのですが、ここ三週間のレアルのコンテンツは、より「問題点」が鮮明になってきたという意味で、また選手たちが自分主体で「解決策を模索しはじめている」という意味で、ものすごく興味を惹かれている湯浅なのです。

 先々週のバレンシア戦(ホーム、4-1でマドリーが勝利)、先週のベティス戦(アウェー、1-0でマドリーが勝利)、そして昨日の早朝行われたの第18節のマドリー・ダービー(アトレティコ・マドリー戦、2-2の引き分け)。勝ち続けているレアル。それも、(ロナウドを除く)選手たちのレベルを超えたチカラの賜だと思うのです。ロナウドという「最前線のフタ」を抱えながらの粘勝。やはり彼らはレベルを超えた連中です。

 このポイントについて、来週号のサッカーマガジンで書きました。ここでは、これまでレアルについて書いた文章を読み返すことで、またアトレティコ・マドリー戦を振り返りながら、今後の彼らの展開に思いを馳せようというわけです。

 ではまず、サッカーマガジンの連載で発表した文章から。

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(2002年9月5日に仕上げたサッカーマガジン連載用の文章です。この原稿の最後の部分がスタートラインでした)

 美しい・・。心を奪われてしまう。

 02-03年のリーガ・エスパニョーラがはじまった。開幕戦、レアルは、ホームのサンチャゴ・ベルナベウにエスパニョールを迎え、これ以上ないというほど魅惑的な成熟サッカーをみせつけた。組織プレーと単独勝負がハイレベルなハーモニーを奏でる。

 後半19分のレアル攻撃のシーン。中盤で、活発なボールの動きを統率するジダン。そこへ、マケレレから横パスが戻されてきた。このとき既に、彼には完璧に次の勝負が見えていたのだろう。ダイレクトで、フリーになっているカンビアッソへタテパスを出し、爆発的な「パス&ムーブ」をスタートする。シンプルプレーと忠実なボールなしの動き。レアルの創造性リーダーのプレーに、チームメイトが刺激されないはずはない。

 カンビアッソは、チョン、チョンと軽快にボールを扱い、全力ダッシュで上がるジダンへリターンパスを返す。この一連の「コンビネーションフロー」に乗っていたのは、左サイドを駆け上がるロベルト・カルロス、最前線でウラへ抜け出そうとするラウール、そして右サイドの「低い位置」から決定的スペースへダッシュしたグティー。例によって、柔らかく、カンビアッソからのリターンパスをトラップしたジダンは、描いていたイメージをなぞるように、飛び出すグティーへラストパスを流し込んだ。まさに完璧なイメージシンクロだった。

 フリーで放たれたグティーのシュートは、GKに弾かれてしまった。ただこの一連のプレーは、成熟したレアルを象徴していた。スムーズなボールの動きと、ココゾ!の決定的シーンにおける「個の才能」のほとばしり。美しい。

 レアルは、センターバックのイエロとエルゲラ、そして守備的ハーフのマケレレを除き、ロベカル、カンビアッソ、サルガド、ジダン、フィーゴ、はたまたラウール等が、縦横無尽のポジションチェンジを繰りかえしながら自由自在にボールを動かしてしまう。目標イメージは、ある程度フリーでボールを持つ「起点」の演出。エスパニョール守備は、次のボールの動きを狙ってアタックしようとするが、そのたびに、シンプルなパス回しによって「プレス網」が置き去りにされ、薄くなった別のゾーンで起点を演出されてしまうのだ。エスパニョールの「読みチェック」が機能不全に陥るのも道理だった。

 ただここにきて、レアルの「成熟したバランス」へ、もう一人の天才が加入してくることになった。ロナウド。この電撃的な移籍劇が、完成の域にあるハーモニーにどのような影響を与えるのか・・。もちろん彼らの美しいサッカーに磨きがかかることを願って止まないわけだが、コトはそう簡単に運ぶはずがない。数え切れないほど様々なファクターが錯綜するサッカーチーム。微妙なバランスの上に成り立つ「生き物」である。さて、昨シーズン同様、またまた興味深い「バランシング作業」が見られそうだ。デル・ボスケ監督の手腕に注目しよう。(了)

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 次の文章は、私のHP、昨年11月3日にアップしたものです。タイトルは「レアルの悩みはつづく・・」

 その数日後に、同じようなポイントをあつかった文章を、サッカーマガジンで発表しました。

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(2002年11月6日に仕上げたサッカーマガジン連載用の文章です。この原稿は、前にも掲載しましたが、まあ、もう一度・・)

 今世紀最高のチームとの呼び声高いレアル・マドリー。今、その彼らが苦境に陥っている。組み立てでの独特のボールの動きが減退気味。だから、最終勝負の仕掛けにも鋭さを欠く。その原因は火を見るよりも明らか。世界のスーパースター、ロナウドである。

 ロナウドが出場したいくつかのゲームを観た。そして思ったものだ。「ロナウドは、最前線にフタをしてしまっている」。先日のリーガエスパニョーラ、デポルティーボ・ラ・コルーニャ戦も典型的な内容だった。

 ボールがないところでの選手たちのアクションが鈍い。たしかに、小さなポジション修正が素早いため、横方向へのボールの動きはスムーズだ。それでも、連鎖するスペースへのランニングが停滞気味だから、前を向き、フリーでボールを持つ選手を作り出すことががままならない。

 そんな仕掛けの起点を演出するためには、縦方向へもボールを動かすことが重要。横への足許パスをいくらつないでも、相手の中盤ブロックは、常に前を向いて次の守備イメージを描ける。ただボールの動きに、自分たちの背後スペースへも回されるような変化がミックスされてきたら・・。だからこそ、中盤だけではなく、最前線も縦横にフリーランニングを繰り返すことがキーポイントになってくる。それこそが、レアルの真骨頂だったはずだ。

 そんな有機的なパス連鎖が、最前線の中央ゾーンで足許パスばかりを待つロナウドによって大きく乱されている。最前線のフタ。まさにそれだ。

 ロナウドは、イタリアやブラジル代表でのプレーイメージから解放されていない。そこでは、止まった状態で足許パスを受け、ドリブルや、相手アタックをかわす細かなワンツーで仕掛けていけばよかった。ただレアルは違う。彼らは、最前線も積極的に絡む縦横のボールの動きで守備ブロックを翻弄しながら決定的スペースを突いていこうとするのだ。

 デポルティーボ戦では、ロナウドと交代したモリエンテスが入ってから、攻めが格段に活性化した。縦横無尽に走り回るモリエンテス。それに呼応するように、彼らのボールの動きにも独特のタテの変化が加わっていった。

 デル・ボスケ監督は、「試合をこなしていけば、ロナウド、ラウール、ジダン、フィーゴのコンビネーションも深まってくる・・」と考えているようだが、コトはそう簡単にいきそうもない。先シーズン加入したジダンの場合、組織プレーセンスでもレベルを超えていたから、初めから、味方とのプレーイメージが噛み合うのは時間の問題だった。ただ、足許パスからの個人勝負イメージばかりが極端に先行しているロナウドの場合は・・。

 サッカーチームは、様々な要素の微妙なバランスの上に成り立つ生き物とも表現できる。そのつり合いに問題が生じた場合、こだわりの強いスターを多く抱えているほど、再び均衡させるのは難しい作業になるものだ。

 さて、レアルの再生プロセスが楽しみになってきた。もちろん自分自身の学習機会として・・。(了)

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 この後、トヨタカップがありました。そのレポートを参照しながら、下記のサッカーマガジンの連載記事もお読みください。そこでは、「先発で起用せざるを得ないロナウド」ということで、仲間が彼の存在を受け止め、今度は逆に、その「最前線のフタ」をうまく活用しはじめるという傾向が見られるようになったという内容のコラムです。

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(2002年12月25日に仕上げた、サッカーマガジン連載用の文章です)

 フ〜ッ! そんな溜息が、耳元まで響いてきそうだった。

 2002年を締めくくるリーガエスパニョーラ第15節、マラガ対レアル・マドリー。前半6分のことだ。マラガのFK攻撃を止め、自軍ペナルティーエリア内でボールを持ったロベルト・カルロスが、一瞬のルックアップから、最前線に残っていたロナウドへ矢のように鋭いグラウンダーパスを送った。もちろんそのパスアクションには、彼自身の、目前に広がる大きなスペースへの爆発ダッシュも組み込まれていた。完璧なカウンターチャンス!

 誰もが、正確なパスを受けたロナウドと、超速で上がるロベカルとの夢のコンビネーションを期待したことだろう。ただ結局は、ロナウドのこねくり回しが原因でボールを奪われてしまう。このときロベカルは、既にロナウドを追い越すところまで走り上がっていた。もちろん実際にロベカルが溜息をついたかどうかは定かではないけれど・・。

 レアル・マドリーのロナウドが、まだ「最前線のフタ」という存在から抜け出せていない。たしかに、スピードや、個人で局面を打開していく能力はレベルを超えている。それでも、最前線でほとんど動かず、足許パスを受けてからの単独ドリブル勝負や、ここしかないという決定的フリーランニング「だけ」しかイメージしていないのでは、持てるチカラを最大限に発揮できるはずがない。

 彼がボールを持った途端、「三人目」を明確にイメージしたレアル特有のコンビネーションが、急に勢いを失ってしまうのだ。それも道理。何せ彼は、詰まった状況にならなければボールを離さないのだから。相手が完璧に読める逃げパスなんて、受ける方にとっては迷惑以上の何ものでもない。

 パスをイメージする変化あるコントロールと、個人勝負だけを前提にすることで陥ってしまう「こねくり回し」とは、ボールキープの意味がまったく違う。パス「も」前提ならば、周りの動きは止まらない。

 とはいってもレアルの選手たちは、2点をリードされた後半からは、「最前線のフタ」をオトリとして活用するという、レベルを超えたアイデアでマラガ守備ブロックを崩し、3点をもぎ取って逆転してしまう。ロナウドの周りに現出する静止ゾーンを回り込むように、隣接したスペースを突いていったのだ。舌を巻いた。もちろん、そうなればマラガ最終ブロックも「開かざる」を得ないから、ロナウドもフリーでパスを受けられる。同点ゴールのアシストシーンで魅せた、ロナウドのフリーランニングと突破、そしてラウールへのラストパスは見事の一言だった。

 ボクの基本的なスタンスは、ロナウドの組織プレーに対する意識がほんのちょっとでも向上すれば、レアルの攻撃レベルが数段アップするに違いないということだ。全方位の崩しを演出できるレアル・・。それに対する期待が大きいからこそ、この状態が歯がゆくて仕方ない。(了)

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 そして、「その傾向」が発展しつつあるというコラムが、来週発売のサッカーマガジンの内容というわけです。発売前ということで、ここでは掲載できませんが、主な内容は、具体例も含めた、最前線のフタを逆に活用するというイメージでプレーしはじめている「周りの選手」たち。

 そのコラムには、誌面スペースの関係で入れることはできませんでしたが、第16節バレンシア戦の前半には、こんなプレーがありました。ロベカルがタメて、ラストパスを出すというシーン。

 この状況で、最前線に張るのはラウールとロナウド。ただ、スペースへ動いたのは結局ラウールだけでした。スッというフェイク動作から、スパッと、横のスペースへダッシュするラウール。素晴らしい最終勝負のコンビネーション感覚じゃありませんか。それに対しロナウドは、例によって、ちょっと下がり気味に止まってタテパスを「待つ」ばかり。これでは仕掛けの流れに乗れるはずがない。ロベカルがラウールを選択したのは当然です。そして、タテパスを受けたラウールの、相手マーカーのタイミングを外した素晴らしいグラウンダーシュート。右ポストを数センチ外れてしまったとはいえ、目の覚めるような崩しシーンではありました。

 バレンシア戦では、ロナウドの存在によってタテのボールの動きを演出できないことで自身のプレーリズムを乱しはじめていたジダンが、吹っ切れた大活躍を魅せました。先制ゴールのキッカケになったロナウドへの夢のようなスルーパスだけではなく(ロナウドは、コンビでは、そのパスしかイメージしていない・・走るのは、直接シュートへつながる決定的シーンだけ!)、自身のドリブル勝負から挙げた勝ち越しゴール。またその後は、ロナウドと交代でグティーが登場してきたこともあり、彼本来のプレーリズムが完全に復活します。4点目につながるスーパースルーパスは、まさにジダン!という素晴らしいものでした。鳥肌が立ちましたよ。

 また先週のセルタ戦でも復調の兆しが見えたジダン。昨日早朝に行われたアトレティコ・マドリー戦でも、攻守にわたって、ペースアップしていました。

 アトレティコ戦ですが、レアルは、先制のPKを決められただけではなく、リードされた状況でエルゲラも退場させられてしまいます。こうなったら「最前線のフタ」を活用するコンビネーションもままならない。絶体絶命のレアル。それでも彼らは、ここ一発のタテパスを受けたフィーゴが個人技で同点ゴールを決めただけではなく、ここ一発のオーバーラップで上がったロベカルが倒されたPKを、これまたフィーゴが決めて、前半のうちに勝ち越してしまいます。

 エルゲラが退場した後のレアルは、マケレレが最終ラインのセンターに入り、フラビオ・コンセイソン一人になった守備的ハーフのゾーンに、臨機応変にジダンとフィーゴが絡んできます。二列目はラウール。そして最前線にワントップのロナウドが残るという布陣です。

 後半は、当然ながら「1-2」とリードされたアトレティコが、ガンガン攻め上がってきます。ロナウドは、最前線で動かずにパスを待つばかりではなく守備にも入りませんから、中盤の負担がどんどんと高まってくる・・。その状況で、やっとデル・ボスケ監督が動きます。まったく機能しないロナウドに代えて、センターバックのパボーンを投入したのです。これでマケレレが再び上がり、ラウールがトップに入る。そしてレアルが生き返ります。

 もちろん押されるという形勢は変わりませんが、それまでの「どうしようもない」という状態からは抜け出し、ボールを奪い返してからの攻めのダイナミズムも何倍にも増幅したのです。要は、前線選手の「コンビネーション・イメージ」に対する信頼があるからこその、後方からの押し上げに勢いが乗ってきたということです。

 フィーゴがドリブルで突破する(倒されてフリーキック・・このファールしたアトレティコの選手は二枚目イエローで退場・・これで人数的にはイーブン!)。ロベカルのロングスローからラウールが抜け出し、相手GKと一対一になる。そして極めつけは、両チーム合わせてこの日三本目のPK(アトレティコの先制ゴールもPK!)。レアルにとっては、3-1にするチャンスです。

 このPKを取ったシーンでは、マケレレから「上がり切れ!」と声をかけられたに違いないロベカルが、吹っ切れたオーバーラップから、相手ペナルティーエリアへ全力ダッシュで入り込んでいきます。そこへ、ピタリのタイミングで、ジダンからのスルーパスが通され、相手の必死のタックルにロベカルが倒されたというわけです。それでも、入ればハットトリックというPKをフィーゴが外してしまって・・。

 そしてロスタイムに入ったところで、イタリアから移籍してきたアルベルティーニが、全身のスピリチュアルエネルギーを叩きつけるような同点フリーキックを直接決めるという劇的な幕切れになったという次第。

 とにかく、様々な意味で見応え十分でした。両チーム選手たちの表情からも、満足した雰囲気が伝わってきたものです。

 最高の学習素材としてのレアル。これからも、とことん楽しもうじゃありませんか。

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 さて私は、明日からヨーロッパ出張。昨日も書きましたが、今回は、ビジネスだけではなく、色々なプリントメディアの仕事もありますから、ホームページのアップはちょっと遅れ気味になるかも。それでも、私のサッカー活動のなかでもっとも大事なのは「湯浅健二のサッカーホームページ」ですからね、様々な人たちとの触れ合いによる刺激を、折に触れて文章に落としていこうと思っていますので。




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