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スペインリーグ・・レアルの悩みはつづく?!・・デポルティーボ・ラ・コルーニャ対レアル・マドリー(0-0)・・(2002年11月3日、日曜日))

とにかく、正しい評価をするためには、全体的な構図に対する明確なイメージをもつことが肝心だな・・。デポルティーボ・ラ・コルーニャ対レアル・マドリーのリーグ戦を観ながら、そんなことを考えていました。何故、マドリーのサッカーが停滞しはじめてしまったのか・・。それについて考えていたというわけです。

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 試合は、両チームともにチャンスを作り出すことがままならないという展開です。とはいっても前半は、完全にデポルティーボのペース。しっかりと守り、ボールを奪い返した地点から、レアル守備ブロックが整わないうちに、シンプルに前へ・・というわけです。前半のレアルのシュートは一本。対するデポルティーボは、2-3度は大きなチャンスを作り出しました。

 ボールがないところでの動きが鈍いレアル。だから、パスは回りますが、選手たち一人ひとりがチェック(マーク)を受けているために、どうしてもフリーでボールを持つ「起点」を作り出すことができません。また起点ができても、そこからの仕掛けが流れるように起爆しない・・。

 ボールの動きは、クレバーなポジショニングバランスを基本に、最初、素早い「足許パス」から入ります。スパッ、スパッとパスを回すことで、相手守備の足を止め、そこで出来てくる中盤スペースへ、前を向いて入り込むチームメイトにボールを回す。その「起点」が仕掛けのスタートサインになるというわけです。

 スペースへ入り込む味方が前を向いてボールを持つ状況を作り出す・・と書きましたが、そのためには、横方向ばかりではなく、タイミングのよいタテ方向のボールの動きも重要な要素になってきます。横方向ばかりでは、受けてたつ相手守備ブロックも、常に前を向いて対処できますからネ。つまり、次の守備アクションに対するイメージを明確に描くことができるということです。でもボールの動きに、たまにはディフェンダーの視野の「背後」へ送られ、また戻ってくるような変化がついたら・・。

 前を向いて相手攻撃に立ち向かっている中盤ディフェンダーたちですから、その間を通して相手の最前線へ(つまり彼らの視野の背後へ)タテパスが出されれば、より対処が難しくなるということです。

 中盤でジダンが、相手にハードにマークされていながらもボールをキープしている・・その横や後方のスペースに、マケレレがスッと動いてくる・・すかさずマケレレへパスを回すジダン・・そしてマケレレは、同時に最前線から戻ってきたラウールへ、ダイレクトでタテパスを出す・・そのパスを受けたラウールは、素早いタイミングで、パス&ムーブでタテへ走ったジダンへ展開パスを送り、またそのまま最前線スペースへ駆け上がっていく・・。

 そんな「タテにも変化のあるボールの動き」こそがレアルの真骨頂。でもこの試合の前半では、そんな変化に富んだボールの動きがほとんど出ませんでした。そうです。ここで私がテーマにしたいのは、ロナウドのこと。まだ、レアルの展開イメージに乗れていないロナウド・・。

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 ここ数試合、彼のプレーを観察してきました。そして思ったものです。「彼は、イタリアやブラジル代表でのプレーイメージから解放されていない・・」。

 イタリアサッカーでは、選手たちの縦横のポジショニングバランスを厳格に守ろうとします。スリーラインと呼ばれる、前線、中盤、最終ラインのバランスも含め、チーム戦術で決められた基本的な役割(基本ポジション)を厳格に維持しようとするのです。そして、それをベースにした忠実な組織守備でボールを奪い返したら、一発ロングラストパスも含め、すぐに前線へボールを供給するのです。それがカウンター状況であれば彼らのもの・・。ちょっと荒っぽいですが、それが「イタリアのツボ」の大雑把な構図でしょう。だからロナウドは、最前線で、常に最終勝負を意識してボール供給を待つだけ・・という姿勢になってしまう。もちろん守備参加もほとんどありません。

 この傾向は、ブラジル代表でもまったく同じでした。クレベルソンという、ジウベルト・シウバの理想的な(守備的ミッドフィールダー)パートナーを見出したブラジル代表監督スコラーリは、前線の3R(ロナウド、リバウド、ロナウジーニョ)の個の勝負能力に賭けるというチーム戦術に徹することにしました。もちろんたまには、左サイドのロベカル、右サイドのカフーも絡んではいきますが、とにかく基本的には「前後分断チーム戦術」で、ブラジルらしい勝ち方にこだわりつづけたのです。そして優勝を遂げた・・。まあ、大したものなのですが、そこでもロナウドは、最終勝負のドリブル勝負や、他の「R」との一発コンビネーション勝負しかイメージしていなかったというわけです。

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 でもレアルでは、状況は違う。そこでロナウドは、前段階の組み立てにも積極的に絡むことが求められます。ただ彼は、最前線のセンターで(そこで、ちょっと前後に動くだけで)、最終勝負をイメージしたパスの供給を待つだけ・・。それが、レアルの攻め(組み立て)がうまく機能していないことの一番の原因だと思っている湯浅なのです。

 実際、後半15分にロナウドとモリエンテスが交代してからは、レアルの攻撃が明確に活性化しましたからね。最前線トップのモリエンテスが動き回ることで、タテパスのターゲットが増えるだけではなく、最前線センターにも、他のチームメイトたちが入り込めるスペースができますからね。とにかく今のロナウドは、最前線にフタをするというプレーに終始しているということです。

 まあ、これからどのような展開になるのか、見物ではありますがね・・。

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 また別の問題点もあります。それは、レアル最終ラインのセンターコンビ。特にイエロ・・。

 この試合では、レアルが、デポルティーボ最終ラインのウラに広がる決定的スペースを、スルーパスで突くようなシーンは皆無だったのですが(ロナウドが走り抜けませんからネ)、逆にデポルティーボは、数回ですが、レアル最終ラインを切り裂くような、決定的フリーランニングとスルーパスがシンクロした場面を演出しました。

 レアル最終ライン中央(イエロとエルゲラのコンビ)と駆け引きをしていたデポルティーボ選手は、主にマッカーイ。たしかに、どんなゲームでも、スルーパスが通ってしまうようなピンチは発生してしまうものです。それでも、この試合では、マッカーイに走り抜けられ、そこにスルーパスを合わされるというピンチが目立ちすぎていたと感じたのです。

 実際にスルーパスが通されたのは2度くらいでしたが、それ以外にも、何度かカタチだけは作られていたのですよ。

 私は、どうも、スピードの落ちたイエロが、「いま走りっこしても追いつかない・・」と、走り抜ける相手を行かせてしまうシーンが目立つと感じていました。そしてイエロは、「今のはオフサイドだ!」と手を挙げる。でも、そのほとんどはオフサイドじゃない・・。それは、最終勝負のラインコントロールというのが基本的な発想なのでしょうが(トピックスの「フラットライン守備を語り合いましょう」を参照してください)、それにしても明確な迷いを感じますから、最終ラインが不安定だと言った方が適切な評価だと思います。

 そんなところにも、レアルの低迷の要因を感じていた湯浅でした。さてこれから、デル・ボスケ監督が、どのようにチームを立て直していくのか・・。注目しましょう。




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