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さて今週の「次」は、小野伸二と中田英寿・・(2002年12月2日、月曜日)

小野伸二ですが、まず先々週に書いたコラムを参照してください。

 そのコラムの最後を、『チームは勝利をおさめたわけですが、それでも彼自身のプレー内容は課題山積み。まあ、そんな日もあるさ・・で済めばいいのですが』というふうに締めたのですが、つづく先週の試合は、皆さんもご存じのとおり、これまた輪をかけた低調なプレーに終始してしまいました。まさに、「・・では済まなかった」というわけです。

 それでも今週の彼は気合いが乗っているようで、試合前には、「たしかにこの二週間の出来は悪かったけれど、ユトレヒト戦は大丈夫・・」というコメントを出していたそうです。その積極的なコメントをまず高く評価しましょう。そんな発言には責任が伴うわけですからネ。それこそが、セルフモティベーションというわけです。さて・・。

 この試合では、ソン・ジョングが、左サイドに回りました。たしかにこれまでのフェイエでは左サイドからの攻めが薄かったですからね。ということで、この試合での小野は、ルアリンクとソン・ジョングを前へ送り出すなど、左サイドのバランスにも気を遣わなければならないということです。もちろん「本物のバランサー」としてね。

 要は、そこに「いるだけ」といったパッシププレーは(本来の意味を勘違いされたバランサープレーは)、ノーサンキューということです。基本的にはバランスを取りながら、攻守にわたって、実効ある「影武者」プレーをするのが本物のバランサーなのです。

 守備でのカバーリングや穴埋め作業は言うまでもありませんが、特に攻撃では、誰にもケアーされていないという状態がほとんどなのですから、中継プレーに終始するのではなく、前にスペースが空いたら「いつでも行く!」という姿勢でプレーしなければなりません。もちろん、ルアリンクかソン・ジョングに対して、自分が上がった後のカバーリングを指示しながらね。要は、左サイドで、彼とルアリンク、そしてソン・ジョングによる「変化」を、彼のリードで演出しなければならないということです。

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 さて試合。どうも小野は、「まだ」先週までの悪いイメージを引きずっている・・と感じます。もちろんその背景には、チーム自体の調子が良くないこともありますし、相手のユトレヒトが、中盤を中心に、素晴らしい堅牢守備を展開していることもあります。

 たしかに小野は、ボールがないところでの忠実なマークやインターセプト狙いなど、守備での意識自体は活性化しています。それでも、まだまだ勝負所では実効レベルが追いいていない。実際にボールをインターセプトしたり、相手のトラップの瞬間を狙ったアタックや動きのなかでの競り合いに勝ってボールを奪い返したりというシーンが少なすぎると感じるのです。またボールのないところでのマークにしても、どうも最後は、相手に走り負けてしまう・・。スピードが十分ではない小野ですから、守備においてボールがないところでの最終勝負まで絡んでいくときは、常に「早め、早め」にポジションを取るとかスタートを切るなど、十分な「戦術的準備」が必要なのです。

 また攻撃でも、ボールへの絡み方が効果的ではない。たしかに何度かはチャンスを見計らった「影武者オーバーラップ」は魅せましたがね。もちろんボールをもったら、例によっての確実なプレーは展開してはいましたが・・。

 ちょっとプレーのリズムを乱し、実効あるプレーが減退している小野。良いときのイメージを取り戻すためには、まず運動量を上げることが先決です。そして、攻守にわたり、もっともっと積極的にイメージを描きつづけるのです。

 いつも書いていることなのですが、次の爆発のための様子見(予測イメージの描写段階)と、単なる傍観プレーとは、まったく別物だということです。もちろん彼が傍観しているとは言いませんし、彼の態度からは、常に「次を予測する」という姿勢を強く感じはします。それでも実際のプレーでは、どうも、全てに「遅れ気味」なのです。だからこそ、攻守にわたって、「次」に対する感覚を、もっともっと鋭く研ぎ澄まさなければならないのです。

 要は、イメージトレーニングが重要だということが言いたい湯浅なのです。何度も何度も繰り返し、自分が良いプレーを展開したときのゲームビデオや、一流ゲームのビデオを観察しましょう。もちろん「漫然」とボール周りのプレーを目で追うのではなく、ボールがないところでのプレーを中心に、感覚を研ぎ澄ましながら一生懸命に「選手たちの意図」を追うのです。その繰り返しによって、確実にグラウンド上でのプレーがシャープになってくるに違いありません。

 サッカーは、イメージ(ピクチャー≒感覚)を積み重ねていくボールゲームですからね。(攻守にわたって)ボールがないところで、いくつものイメージ(プレーの可能性)が瞬間的にわき出てくる・・もちろん同時に、自然と身体も動き出している・・。それこそ、イメージとアクションが同期した「オートマティゼーション」というわけです。

 私が言っているは、型にはまった「ステレオタイプ・プレー」のことではありませんよ。あくまでも、高質な創造性プレーのオートマティゼーションのことです。念のため・・。

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 さて次は中田英寿。

 例によって、攻守にわたって素晴らしいダイナミックプレーを披露しましたよ。まあ、とはいっても、相手が明確にチカラの劣るトリノですから・・。

 この試合では、どんどんとプレーゾーンも広がっていました。左から、右から、はたまた中央ゾーンに入り込んで決定的シーンを演出したり、自分自身で勝負したりするのです。前半での彼のシュートシーンは惜しかったですね(バー直撃!)。あれが入っていれば、確実にこの試合での「MVP」に輝いていたことでしょう。

 後半にアドリアーノが挙げた3点目、4点目シーンでの中田英寿のアシストは、見事としか言いようがありませんでした。3点目では、左サイドから、ファーポストスペースへの一発クロスラストパス。4点目は、逆に右サイドからの、ニアポストスペースへの(走り込むアドリアーノのアタマにピタリと合う)ピンポイント・ロケットラストパス。ホント、見事でした。

 まあ彼については、機会を見て、良いプレーの例として「五秒間のドラマ的」にまとめることにしましょう。とにかく、日本の若いプレーヤー諸君は、全盛期の中田英寿という素晴らしいイメージトレーニング素材を得ているわけです。私も、深いコンテンツを内包する彼のスーパープレーをどんどんと紹介していくことにします。でも今日はカンベン。もう月曜日の朝方なので・・。

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 ところで、サッカーとはまったく関係ないハナシなのですが、何人かの電波メディアサッカー解説者がよく使う「有効的」という表現は、やめた方がいいですよね。たしかに「友好的」という日本語はありますが、彼らが、その意味で「ユウコウテキ」という表現を使っているとは思えませんからネ。

 「的」というのは、助詞の「の」にあたり、例えば「・・のような」「・・性の」等という意味合いの形容動詞をつくるために用いられます。「有効」という言葉自体は、名詞でもあり、形容動詞でもありますから、その形容動詞に、もう一つ形容動詞を付加するのは間違いということになります。使うときは、単に「あのプレーは有効です」とか「彼らのコンビネーションは有効だ」とか「あの選手をここで使う方が有効な対策だ・・」とかいう使い方が正しいと思うのですが・・。

 私は、日本語の専門家ではありませんし、余計なお世話だとは思うのですが、どうも気になって仕方ないのです。私の理解の方が間違っているのですかネ・・。専門家の方々からのメールをお待ちしております。




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