湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第2節(2018年3月4日、日曜日)

 

レッズには、ギリギリの積極リスクチャレンジ姿勢こそが求められる・・(レッズvsサンフレッチェ、1-2)

 

レビュー
 
・・うまくゲームを進められなかった・・また後半も、効果的に立て直すことが、ままならなかった・・

レッズ堀孝史監督が、絞り出すように、そんなニュアンスの内容をコメントしていた。

そうだな〜〜・・

もちろん私も、色々な視点で、不満がつのっていたけれど、その「うまく攻められないレッズ」の背景要因として「まず」挙げなきゃならないのは、もちろん、城福浩に率いられるサンフレッチェがブチかましつづけた究極の「粘りディフェンス」だよね。

とにかく、忠実を絵に描いたようなチェイス&チェックを主体に、次、その次と、ボールの動きを抑えてしまうんだよ。

また局面でのボール奪取デュエルでも、サンフレッチェ選手たちは、強烈な闘う意志を炸裂させつづけていた。

もちろん、そんなボールまわりのファイトだけじゃなく、チーム内で連鎖しつづける「スペースイメージ」をベースに、創造的なマーキングも実行しつづける。

でも・・

そう、だからといって、レッズの攻撃が寸詰まりにさせられてしまうのでは、こちらは、まったく納得できない。

レッズは、サンフレッチェ守備が展開する、そんな忠実&ダイナミックな「意志の闘い」を切り崩していけるだけのチカラを備えているんだから。

ということで、私は・・

レッズの攻めの内実に対して、不満がたまっていたんだよ。

その背景ファクターの、もっとも大きなトコロは、何といっても、アナタ任せという「仕掛けの姿勢」だった。

もちろん、チャンスを創りだす流れはあったんだよ。

例えば・・

・・最前線が、ウラの決定的スペースへタイミングよく抜け出したり、厳しいマークを外し、スッと戻ってタテパスを要求するなど・・ね・・

そんなチャンスを効果的にモノにしていれば、確実にシュートへもっていけたはず。

でも・・

そう、彼らは、そんなチャンスでもタテへ仕掛けていかず、横パスに「逃げ」たりするんだ。

それじゃ、彼らの(レッズの!)プライドの絶対的ベースである、ダイレクトパスを織り交ぜた高質な組織コンビネーション(美しく勝つサッカー!)なんて、望むべくもない。

厳しい言葉を並べてしまった。でも・・

そう、レッズは、チカラのあるチームだからこそ(期待値が高いからこそ)、もっと、もっと・・っちゅう要求が高じてしまうんだよ。

でも、この試合では・・

ボールホルダーの、勇気ある「仕掛けのタテパス」だけじゃなく、ボールがないところでの動きの量と質にも、彼ら本来の「勢い」が感じられなかったんだ。

そう、ここでも「意志」という心理ファクターに注目しなきゃいけない。

イレギュラーするボールを足で扱うサッカーは、最終的には自由にプレーせざるを得ない。だからこそ、選手たちの、強い「闘う意志」が問われるんだよ。

そりゃ、そうだ。

皆さんもご存じのように、サッカーでは、仕掛けていかなければ、ミスをすることもないし、誰からも責められることがない。

でも、それじゃ、プロ(個人事業主)としての「のれん」を掲げる資格がない。

不確実なサッカーは、クリエイティブなムダ走りを積み重ねていくスポーツだし、バランスを崩しながら積極的にリスクへもチャレンジしていかなきゃいけないボールゲームなんだよ。

今日のレッズからは、そんな、サッカーの哲学的な大原則アイデアばかりが私のアタマのなかを駆けめぐっていたんだ。

そう、わたしは、「なんでチャレンジしないんだ〜〜っ!!」ってな感じで、不満のカタマリになっていたんだよ。

現代サッカーでは、昔の「JFL」当時に言われていたような、「リスクチャレンジを仕掛けた方が負ける・・」なんていうのは、まったくトンチンカンな発想なんだ。

そうではなく、どんどんリスクチャレンジを仕掛けていくことこそが、潮流なんだ。

もちろん、途中で失敗したら(ボールを失ったら)間髪を入れない攻守の切り替えから、全力スプリントで守備へもどる。

そんなことを繰り返したら、体力を消耗し、肝心のトコロで闘えなくなる!?

そんな発想をしているプロ関係者なんて、まったくの素人なんだよ。

本物のプロだったら、とにかく、まず自分たちが主体になってガンガンと仕掛けていかなければいけないんだ。

もちろん絶対的なチーム力に差がある場合は別だけれど、少なくともレッズは、日本を代表する強豪じゃないか。

だから彼らは、主体的に、リスクへチャレンジしていかきゃいけないんだよ。

そう、バランスを崩してでもネ。

そして、そんな高次元のサッカーだからこそ、崩れたバランスを、素早く、効果的に取り戻せるような「本物のバランス感覚」が、真剣にディスカッションされるというわけサ。

ドイツサッカー史に残る伝説的スーパープロコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーが、こんなコトを言った。

・・いいか・・

・・コーチの優れたバランス感覚とは、相手チームに、オレ達が強いと勘違いさせられるくらいガンガン攻撃的に仕掛けていくなかでも、前へ(攻撃的に)仕掛けていく勢いのギリギリの限界を知っていることなんだ・・

・・それさえアタマのなかで明確になっていれば、必ず、選手たちも、そんなギリギリ限界の領域までチャレンジできるようになるモノなんだよ・・

・・でも現実は、最初から、テメ〜で限界を設定してしまう能なしのプロコーチが多すぎる・・

・・それじゃ、サッカーの本当の魅力なんて決して分からないし、誰にも感動を与えられない・・それは、プロとは言わないよな・・

私は、ヘネスから、本当に多くの大事なコトを学ばせてもらった。

あっと・・

リーグ開幕戦コラムで主張した、サイドハーフの「タッチライン沿いに張り付きすぎ・・」という現象は、かなり解消され、特に武藤雄樹は、本来の「忍者パフォーマンス」をアップさせたと思う。

最後に・・

やっぱり、柏木陽介は、まだまだ欠くことのできない「仕掛けのリーダー」だよな〜・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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