湯浅健二の「J」ワンポイント


2009年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第5節(2009年4月12日、日曜日)

 

レッズの発展プロセスに、どんどんと実が詰まっていく・・(グランパスvsレッズ, 0-1)

 

レビュー
 
 (シュートチャンスを作り出すために!)しっかりとボールをチーム内でキープし、そしてタテへ効果的に動かしながら仕掛けていく・・そのプロセスに効果的に「乗る」ために何が出来るのか・・何をやらなければならないのか・・

 レッズ選手のプレーからは、そんな「積極的に考える姿勢」だけではなく、徐々に、ボールがないところでも、次の効果的なプレーが(あまり時間を掛けることなく)自動的に出てくるようになっていると感じます。もちろん「それ」は、事前に周りを見ているからに他ならないし、パスを出した後の「ボールなしのプレー」までも、しっかりとイメージ出来ているからに他ならない。

 選手同士の、優れた守備意識(相互信頼!)を絶対的なベースにした、次の組織パスプレーに対するイメージ同期(シンクロ)レベルの進化と深化・・フムフム・・

 ・・ボールを奪い返したら、まず遠くを見る・・ただ、チャンスメイクのロングパス(要は、通常のカウンターやショートカウンター)が難しい場合は、素早く正確にボールを動かし、忠実にパス&ムーブで次のスペースへ・・

 ・・人が動けば、より軽快なリズムで(タテの勝負ゾーンへも!)ボールを動かしていける・・それこそがスペースの有効活用につながる・・スペースがうまく使えれば(ある程度フリーなボールホルダーを高い頻度で作り出せれば!)組織パスばかりじゃなく、タイミングのよい勝負ドリブルなどの個人勝負プレーもミックスすることで相手守備ブロックも振り回せるし、その先の決定的ウラスペースも攻略できるだろう・・

 選手たちのイメージは、どんどん広がり、深まりつづけていると感じます。もちろん「そこ」では、小さなポジショニングの修正や組織パスリズムの調整など、選手たち自身が、互いに妥協し合いながら戦術的なアイデアを共有していく。それこそがホンモノのチームプレーということだね。

 ここで言いたかったことは、レッズの「良い流れ」が、あくまでも選手自身が考え、決断し、勇気をもって(リスクチャレンジも含めて!)実行できるようになってきているから(主体的プレー=ホンモノの自己主張=が出てきているから!)に他ならないということです。

 サッカーは、究極の、自由な(最終的には自由にプレーせざるを得ない)ボールゲーム。だからこそ、グラウンド上で実際にプレーする選手の「意識と意志」こそが全てを決める。その視点で監督は、チーム全体の「主体的な雰囲気」を演出するファシリテイター(理解の促進役・・様々な意見を集約し、それをまとめる役・・等々)として手腕を発揮しなければならないということです。フォルカー・フィンケは、良い仕事をしている。

 このグランパス戦でのレッズも、サッカーのレベルアップによって深まりつづける自信が、チームの発展スピードを「より」加速していくという「善循環」が回りつづけていると感じました。良い、良い・・

 守備だけれど(最終ラインの4人と守備的ハーフの2人で構成する)6人ブロックもまた、前戦からの(特に山田直輝の)戻りディフェンス参加も含めて、その機能性がアップしてきていると感じます。コアは、もちろんトゥーリオ、そして鈴木啓太と阿部勇樹で組む守備的ハーフコンビ。特に、守備的ハーフコンビが前後左右に動き回って展開するカバーリングやオーバーラップの実効レベル高揚していると感じます。

 最初このコンビには(中盤のジェネレーター=発電器=的な役割という視点で!?)不安の方が先行していたけれど、そんな彼らにしても、山田直輝という「レベルを超えた刺激」によって(!?)以前のように、しっかりと仕事を探し出せるまでに『復調』してきていると思うのですよ。そんなポジティブな基調に乗っているから、以前のように、頼りになる中盤リーダーという価値も提供できるようになっている。フムフム・・

 この試合でも、山田直輝の存在感には素晴らしいモノがあった。また、田中達也のケガによって交替出場した原口元気も(リーグデビュー当時にはあった)アリバイ姿勢など微塵も感じさせない吹っ切れた勝負を『効果的に』繰り返していた。いや・・ホント・・この二人の若手のパフォーマンスには舌を巻きますよ、ホントに。

 プロコーチにとって、才能ある若手の「成功裏のデビュー」を「効果的に演出する」ことほど難しい作業はないわけだけれど(ビッグクラブでは特に難しい!)フォルカー・フィンケは、それを事も無げに成功させてしまった。

 もちろん、元気と直輝という「希代の若い才能」に恵まれたという幸運もあったけれど、その「機」を逃さず、うまくチームにインテグレイト(組み込んでいった)というポイントで(もちろん魅力的な戦術的コンセプトをチームに効果的に浸透させているという価値も含め)フォルカー・フィンケは、クラブにとってもの凄く大きな価値を作り出したと思います。

 それにしても、原口元気がドリブルに入ったり、山田直輝が「自分がコアになったコンビネーション」をスタートさせる場面になったら、自然と心が躍りはじめる。ヤツらは、まだ17歳と18歳だぜ・・。

 時代は変わったんだね。これもまた、(大きな視点から見れば!)社会全体の国際化と情報化の賜物ということなんだろうね。フムフム・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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