湯浅健二の「J」ワンポイント


2009年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第21節(2009年8月16日、日曜日)

 

最後は積極的に仕掛け合うエキサイティングな勝負マッチになった・・(FCTvsM、0-0)

 

レビュー
 
 今日も、所用が重なったことでスタジアム観戦が叶わないという体たらくでした。

 とはいっても、テレビ観戦でも、まあまあの満足感は残りました。このゲームのカメラマン(ディレクター)の方々は、サッカーが(その本質的な駆け引きと見所が!?)大好きに違いない。たしかに少しは不満が残ったものの、肝心なところでは、しっかりと「次の勝負所」まで見わたせるまでカメラを引いてくれたのですよ。もちろん「ボール絡みの勝負シーン」では、しっかりとカメラを寄せる。ホントに、なかなか良かったですよ。

 最後はとてもエキサイティングな勝負マッチになったゲームだけれど、FC東京では、ブルーノ・クアドロス、梶山陽平と石川直宏、そして長友佑都といった絶対的なパフォーマンス・ドライバーがいない(スミマセン・・単に、主力がいないっちゅうニュアンスです)。だからこの試合でのFC東京が、まずしっかりと守備を安定させてゲームに入っていくというイメージでグラウンドに立ったことは想像に難くない。そんな背景もあって(特に前半)マリノスがゲームの流れで(まあボール支配率で)主導権を握ったのも自然な流れでした。

 とはいっても、もちろん「そのこと」には、マリノスが攻守にわたって展開する組織サッカーが、相変わらず高質だったというバックボーンもあります。

 汗かきのチェイス&チェックと協力プレス、インターセプト狙いや、ボールがないところでの忠実マークなど、 とにかく忠実なディフェンスの機能性が素晴らしい。だからこそ、 ボールを奪い返した後の攻撃にも「勢い」が乗っていく 。人とボールが、素早くシンプルな「リズム」でしっかりと動きつづけるのですよ。

 もちろんこの気候だからね、全体的な運動量は、涼しい気候でのサッカーとは比べようがないけれど、それでもマリノスは、足許への鋭くシンプルタイミングのパスをつなぎながら、最終勝負チャンスとなったら『複数のボールがないところでの動き』が効果的に連動していくのです。

 そんな「緘と急のメリハリ」がいい。そんなマリノスの高質なサッカーを観ながら、「急の状況」になったときの(なりそうな状況での)三人目、四人目のフリーランニングの量と質に、木村浩吉監督の「確かなウデ」を感じていた筆者です。

 それに、マリノスでは、組織コンビネーションやサイドからのクロスだけじゃなく、(特に)山瀬功治のドリブルからのミドルシュートも効果的です。彼が、ある程度フリーで「アプローチ」に入ったら、確実に相手ディフェンダーは「前方向へ間合いを詰めて」いかざるを得ないからね。そう、相手ディフェンスブロックの「イメージ的なバランスを崩す」最終勝負プロセスでの変化の演出。

 マリノスも組織コンビネーションを標榜しているけれど、最終勝負プロセスでは、そんな組織コンビネーションに、メリハリの効いた「個の勝負」も効果的にミックスしていくのですよ。この「メリハリ・イメージ」が、チーム内で共有されていることもまた、チーム成熟のキーワードというわけです。

 そんなマリノスに対し、ホームのFC東京も(特に後半になってから・・)カボレと平山相太で組むツートップを中心に(この二人に対する信頼があるからこそ後方からサポートしてくる味方の動きにも勢いが乗る!)シンプルで危険な仕掛けを繰り出していく。

 例えばカウンター気味の仕掛けシーンでは、ロングボールを平山相太がしっかりとキープし、その周りで、カボレが、ズバッという勢いで決定的スペースへ抜け出していく・・なんていう効果的な勝負シーンが何度も展開された。ツートップの「あうんの呼吸」がかもし出す危険なニオイ。なかなかのモノでした。

 そしてゲームが、エキサイティングな仕掛け合いへと発展していく。後半だけに限っては、完全にイーブンだったし、とても楽しめるコンテンツへと「成長」していったのです。

 それにしても、FC東京のカボレ、平山相太だけじゃなく、石川直宏とか、長友佑都とか、実質パフォーマンスが(組織プレーイメージと個人勝負イメージのバランスという視点でも)とてもアップしていると思う。もちろん石川直宏の、シュートチャレンジマインドの高揚には、とてもビックリさせられているわけだけれどね。とにかく、城福浩監督の心理マネージャーとしてのウデに拍手をおくりましょう。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 



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