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2014_W杯(26)・・ドイツ対フランスは、「暑さ」をコアのテーマにするしかないね・・またブラジルも少しだけ・・(2014年7月4日、金曜日)

今朝6時過ぎ、サンパウロからの長距離バスでリオに到着しました。

これからは、全てのゲームを、サンパウロを中心に、深夜バス移動で観戦する予定です。

その長距離バスだけれど、昨年のコンフェデレーションズカップでも、何度か経験した。色々なシートのタイプがあるけれど、やっぱり「レイト」と呼ばれるシートタイプが一番。何といっても、夜行だからね。

要は、フルフラットになる大きめのシート。もちろん高いけれど、ホテルに泊まることを考えれば、安いもんだ。

でも、昨夜のサンパウロからの移動は、空路で到着してからの移動だったから、「レイト」が取れず、普通のシートになってしまった。でも、ドイツ対フランス戦が終わった夜中にリオからサンパウロへ戻るバスでは、「レイト」を予約できた。まあ仕方ない。

サンパウロでも友人宅にお世話になるのだけれど、決勝も含めてリオを2度、そして準決勝のベロ・オリゾンテを1度、夜行で往復するわけだから、六泊が車中ということになる。「レイト」でなければ耐えられないよね。

とはいっても、昨夜のバスも、そんなに悪くはなかった。しっかりと大きくリクライニングするからね。でも、私の身体のサイズが・・

どうしても、身体を伸ばしきれないんですよ。逆に、中途半端な体勢をつづけたら、身体の節々が痛くなる。そして・・

そう、またちょっと神経痛が、悪化したかもしれないのです。憂鬱・・。

記者席に座っても、普通の体勢では痛い。だから「ふんぞり返った」ように座る。でも、それじゃ、デスクの前の「ついたて」が邪魔でグラウンド全体が見わたせない。

うつむき加減、上目づかいの状態が、もっとも楽なのだけれど(周りには奇異に見えるだろうけれど・・)、それでも、かなりキツイ。だから、記者席で立ち、うつむき加減&上目づかいで観戦するのが一番いいのですよ。

もちろん後ろの席とは、かなり段差があって、彼らの視界を邪魔することもない。それにしても、今回の記者席には、前後と高さに余裕がある。助かった。

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さて、勝負のドイツ対フランス戦がはじまった。

まず感じたのが、両チームともに「暑さ対策」として、落ち着いてゲームに入っていこうとしていること。そのこともあって、ゲームは、組織のドイツが主導権を握るカタチで立ち上がった。

でも、いつものような縦横無尽のポジションチェンジが見られない。それには、ミロスラフ・クローゼをワントップに置いたこともあるよね。

彼が、センターゾーンに居座っていることで、2列目の「動き」が活性化していかないんだよ。もちろん、暑さ対策として「落ち着いてゲームに入っていこう」というイメージもあるだろうけれどサ。

フムフム・・

そして、徐々にフランスも盛りかえしていく。これは、消耗戦になる・・と感じていた。でも・・

そう前半13分に、マッツ・フンメルスが、フリーキックからヘディングシュートを決めちゃったんだ。

落ち着いた立ち上がりから、セットプレーやカウンターというワンチャンスを狙う・・というドイツの思惑が、まさにツボにはまった瞬間。

もちろんそこからは、フランスが主導権を握って攻め上がり、ドイツがカウンターを仕掛けていくという展開になっていったのは言うまでもありませんよね。

カメラマンの方に聞くと、グラウンド上は、35度とか、とにかく灼熱地獄だったそうな。まあ、さもありなん。記者席でも、暑さを体感しながらの観戦だった。

そんななか、フランスの勢いが増していく。たしかに、そう簡単にはドイツ守備ブロックを崩していけないけれど、何度か、偶発ファクターも含む「一発」はあった。

タテパス一本で抜け出したバルブエナのダイレクトシュート。GKノイヤーが、素晴らしいセーブを魅せる。

また、左サイドでロングパスを見事にコントロールしたベンゼマが、そのままドリブルで二人を置き去りにして強烈なミドルシュートを見舞う。これも、GKノイヤーの正面に飛んだから事なきを得た。

ことほど左様に、フランスが攻めてシュートチャンスを作り出し、逆にドイツは、カウンター気味に攻めるけれど、ことごとく「途中」で止められてしまうという展開がつづくんだよ。

この、途中で簡単に「止められてしまう」という現象だけれど、やはり、動きの少ないミロスラフ・クローゼが、一つの大きな原因だった。

彼が、最前線センターゾーンに「フタ」をしているから、周りの動きが出てこないし、相手にとっても、とても守りやすかっただろうね。

どうだろうね〜・・。

それでもドイツ選手たちは、ミロスラフ・クローゼに、良いカタチでパスを送ろうとはしていた。まあ、そう感じた・・というニュアンスだけれどネ。

そりゃ、そうだ。もう一点で、ワールドカップの「歴代総ゴール記録」を塗り替えるんだから。

もちろんドイツチームにとっても、ミロスラフ・クローゼという「ターゲットマン」がいることは価値がある。でも逆に・・

そう、どちらかと言ったら、ミロスラフ・クローゼは、諸刃の剣になっていたとするのが順当な評価なんだよ。

そしてドイツのサッカーから、「組織要素」がどんどんと消えていき、個人勝負のカウンターばかりが目立つようになっていく。それじゃ、途中で、簡単に潰されるのも道理だよ。

そこで抜群の存在感を発揮していたのが、19番のポグバ。彼のプレーを観ながら、若かりし頃のビエラをイメージしていた。

あっと試合。そんなゲーム展開のなかでも、ドイツ守備のファインプレーは、光っていた。

そう、ボールがないところでの「創造的・想像的」なマーキング。

彼らは、ボールがないところで勝負が決まる・・というサッカーの根幹メカニズムを、深く理解しているんだ。でも・・

そう、時間が経過するにしたがって、そんなドイツ人でも、どんどんと集中力を失っていっちゃうんだよ。

「あの」マッツ・フンメルスが、相手のシンプルな切り返しに、簡単に置き去りにされてしまったり、簡単なボールを上手くクリアできなかったり、はたまた(この日はセンターバックに入った)ボアテングが、バルブエナやベンゼマの勝負ドリブルに、完全に翻弄されちゃったり。

ちょっと、見るに堪えないシーンがつづいたんだ。

それも、これも、暑さが最も大きなネガティブ要因だった。

そして結局は、まったく動けなくなったミロスラフ・クローゼが、後半24分で、シュールレと交替することになるんだ。

もちろん、トーマス・ミュラーがワントップに入る。シュールレは右サイド。そして、やっと、本当にやっと、ドイツの前線からのディフェンスが、再び機能しはじめるんだよ。

トーマス・ミュラーが、積極的にチェイスし、その流れにシュールレが積極的に絡んでいく。

もちろん、そんな二人の「仕掛けの動き」に、ミッドフィールダーも呼応する。やはり、守備こそが、すべてのスタートラインなんだ。

最後の瞬間、ベンゼマが抜け出し、バー直撃の激烈弾をブチかましたけれど、それが最後のエキサイトメントだったね。

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まあ、もちろんドイツは、こんな厳しい気候環境のなかで、最後の最後までフランスにゴールを割らせず、素晴らしい「粘り勝ち」を収めたんだから、歓喜に揺れるのも当然だと思うよ。

私も、本当に良かった・・と、胸をなで下ろしていた。

実は、その「ホッ・・」には、ゲーム終了間際の時間帯に、何度か、信じられないシーンが繰り返されたこともあったんだ。

何せ、シュールレやマリオ・ゲッツェの交替で活性化したドイツの「カウンター」が、もう何度も決まりそうになったんだからね。

典型的だったのが、シュールレの、フランスゴール前10メートルからの、完璧フリーのダイレクトシュート。でも、フランスGKロリスに弾かれて決まらない。

あっと・・トーマス・ミュラーの、完璧フリーシュート場面もあったよね。でも彼は、信じられないことに「空振り」しちゃったんだよ。まあ、あり得ないシーンではあった。

だから、そんなシーンを観ながら思った。

・・これは、神様が、ゲームドラマのスクリプトに、フランスの同点ゴールを書き入れたな・・

でも結局は、私の心配性をあざ笑うかのように、「そのまま」ゲームが終了したんだよ。前述した、ベンゼマの「バー直撃シュート」は、最後の冷水だったわけだ。フンッ・・

とにかく、この試合では、「暑さ」が、核になるテーマなんだろうね。

最後は、両チームともに、ボロボロになりながら(意識モウロウで!?)何とかアクションをつづけていた(体感の積み重ねで自然と身体が動いた!?)。

まあ、本当にスゴイ消耗戦だった。フ〜〜・・

最後まで、強い意志で勝ち切ったドイツに拍手をおくりましょう。

この試合では、かなりバテていたけれど、本当のドイツは、こんなもんじゃありません。

そのことについては、歴史的な背景も含め、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください(しつこくて、スミマセン・・あははっ)。

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さて、ということで、ブラジル対コロンビア。

大奮闘のビッグゲームを魅せたチリとの決勝トーナメント1回戦レポートでも書いたけれど、総体的には、やはり、ブラジルに一日の長がある。

そのことは、このコロンビア戦にも、当てはまる。

もちろん、コロンビアを「チンチン」に振り回す・・なんてことは、前時代的な現象だからネ。そんなことは、もちろんないけれど、「それなりの差」は見えた。

攻守にわたる局面での競り合いとか、(特に攻撃での)小さなアイデアの量と質とか、個人勝負の内実とか、守備での(読みも含めた!)ギリギリの闘いとか、とにかく、僅差だけれど、明らかな「違い」があると思うのですよ。

それって、何だろうね・・。

まあ、表現の仕方については、これから時間をかけてアイデアを練っていきますよ。でも、僅かな差なんだよ、ホントに・・。

そして、この試合では、その差が、結果にも現れた。

まあ、内容的にも、ブラジルの順当な勝利という評価が妥当だとは思うけれど、ハメス・ロドリゲスの仕掛け勝負も含めて、コロンビアも立派な闘いを披露したと思います。拍手です。

ということで、これで、準決勝のドイツ対ブラジルが見られる。それは、ドイツにとっては、「2002決勝」のリベンジマッチだからね。

とにかく、心から楽しもうと思いますよ。

私は、既に「この準決勝カード」を予測し、ベロ・オリゾンテまでの長距離バス、「レイト・シート」の往復チケットを購入してあります。今から楽しみで仕方ありません。

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ところで、ドイツ対フランス戦の後、NHKで、ウイークデイの2320時から10分間放送されている「スポーツ・プラス」という番組に出演しました。

10日ほど前にも出演したのだけれど、今回は、友人のドイツ人ジャーナリスト(グレゴー・デリックス)との、ドイツ語での対談。

まあ、対談と入っても、私が自分の意見と質問をぶつけることで、グレゴールにしゃべってもらった・・っちゅう感じですかね。

でも、そのグレゴール、あまりにもシリアスな顔でしゃべるモノだから、思わず、こんなことを言ってヤツのことを笑わせちゃった。

「おまえサ〜・・なんでそんなにシリアスな顔ばかりするの?・・ドイツが勝って嬉しいんだろ・・たまにゃ、その嬉しい感覚を表現しなくっちゃ・・」なんてネ。あははっ・・

それはビデオ収録で、来週の月曜日(7月7日!?)、NHK総合の2320時からの「スポーツプラス」で放送される「はず」なんですよ。もちろん、私の服装や言葉などが放送コードに引っ掛かっちゃったら「ボツ」になっちゃうだろうけど・・あははっ・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 





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