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2011_女子WM_15・・何か、箇条書きでたくさん書いた・・(ドイツ対日本, 0:1)・・(2011年7月9日、土曜日)

いま、とても不思議な感覚に包まれています。

 ・・世界トップの大会で、日本がドイツを破った・・それって、わたしがドイツにサッカー留学していた頃からの夢だった・・オレを育ててくれたドイツには感謝している・・でも、だからこそ、いつかは見てろヨ・・ってな気持ちを強くもちつづけていた・・

 ・・2006年ドイツワールドカップが開幕する直前のレーバークーゼン・・ドイツとの準備マッチで、日本代表は良い内容のサッカーで引き分けた・・でもそれは、あくまでも準備マッチに過ぎなかった・・もちろんドイツは、日本を完璧に甘く見ていた・・

 ・・ただ、今回は違う・・世界トップのワールドカップの舞台で、ナデシコが、ドイツを破ったのだ・・フ〜〜・・でも、もちろんドイツ代表も私の「マイチーム」・・だから、とても不思議な感じ・・でも今は、完璧に、ナデシコサポーターだぞ〜〜っ!!・・

 ・・明日は、早朝にドレスデンへ移動し、USA対ブラジルの勝負マッチを観戦するけれど、その後に、心を落ち着け、この「歴史的な勝利」を、もう一度見つめ直したいと思います・・ドレスデンには2泊の予定だから、明後日に、ドレスデンの雑感も含め、コラムをアップすることにします・・

 ・・ということで、今日は、既に深夜ということもあるし、この後、ドイツTVにインタビューされる予定も入っているので、とにかく簡潔に、例によって、ランダムな箇条書きでゲームのポイントを書き残すことにします・・

 ・・とにかく、ナデシコの皆さ〜ん、おめでとうございま〜すっ!・・貴女がたは、日本の、本物のアイデンティティー(誇り)になったゼ〜〜・・私と同様に、日本の方々は素晴らしくハッピーな気持ちに包まれているに違いない・・貴女方は日本社会のアイデンティティーなのだ〜!・・もちろん、佐々木則夫監督の、指先のフィーリングあふれる心理マネージメントにも乾杯っ!!・・

 あっと・・またまたエモーショナル(情緒的)な言葉に酔いしれてしまった。ここからは、ゲームの戦術的な現象(テーマ)を、ランダムに、箇条書きで記します。

 ・・まず、何といっても、ドイツの「ハイボール」攻撃・・流れのなかからだけじゃなく、コーナーキックやフリーキックなど・・立ち上がりの10分間で、少なくとも3本、完全に「制空権」を奪われるといった危機的な状況に陥った・・

 ・・そのときのドイツは、観客の皆さんも含めて、「これだ〜っ!!」って確信したに違いない・・実際、その後、ドイツのコーナーキックやフリーキックでは、観客が総立ちになって期待感を表現していた・・でも・・

 ・・その後のドイツは、ハイボールで上手くチャンスを作り出せなくなっていったのですよ・・わたしは、そのバックボーンを、このように見ていた・・ナデシコの選手は、一緒に飛び上がってヘディングを競り合うのでは、あまりにも不利だということを感じ、自分たちの経験に基づいて、工夫することにした・・

 ・・ヘディングを競り合うのではなく、相手に「身体をあずける」ことに徹すれば、少なくとも一発ヘディングを決められることはない・・相手に身体をあずければ、相手も、アタマを振り切れないから、どうしてもヘディングするボールが浮いてしまったりする・・などなど・・そして、そのこぼれ球(セカンドボール)さえ、しっかりと支配してしまえば、ドイツのハイボールでも怖くない・・

 ・・そのセカンドボールを拾いまくったのは、言わずもがなだけれど、我らが澤穂希でした・・

 ・・ホントに、彼女の、攻守にわたる全力プレーには頭が下がる・・心からのレスペクト・・彼女は、こぼれ球を拾うだけじゃなく、相手のパスを読んだインターセプトを魅せまくる・・ホント、凄いネ・・ドイツ人の記者や友人のプロコーチ連中も絶賛する澤穂希・・この大会の後、ドイツからオファーが来るかもしれないね・・彼女は、もっともっと出来るからね・・

 ・・ところで、開始早々にケガで戦線離脱したドイツ代表中盤のキープレイヤー、クーリック・・ジャンプした彼女の落ち方(着地のしかた)を見て・・そして彼女の痛がり様を見て、すぐに、それが半月板だと確信した・・こちらは、場数を踏んでいるから直ぐに分かった・・そして実際に、そのまま膝を押さえながら交替してしまった・・ドクターのヒザチェック動作で、もっと深く確信した・・

 ・・そしてそこから、ドイツの攻撃が、「直線的」なモノへと(悪い方向へと)変化していったと感じた・・彼女がいれば、ボールの「縦横の動き」も演出できたろうに・・そこからのドイツは、日本ゴールへ向け、まさに、力まかせのゴリ押し攻撃に終始した・・もちろんそれでも、パワーが違うから、チカラ任せのチャンスらしいカタチまではいったけれどネ・・

 ・・それにしてもナデシコは落ち着いていた・・ドイツの大柄な女性たちが仕掛けてくる、必死の形相のアタックを、スッ、スッとパスでかわして置き去りにしてしまう・・

 ・・昨日の記者会見で、佐々木則夫監督と澤穂希が、私の「相手がドイツということも含めて、失うモノがない、フッ切れたサッカーを期待できると思うが・・?」という質問に対し、「そうですね・・リラックスした気持ちで、持てるチカラを出し切れると思います・・」と言っていたっけ・・

 ・・日本の組織プレー・・それは、ダイレクトパスも含めた、素早く、広いボールの動きに集約される・・それこそが、相手とのフィジカルな接触を避けながらスペースを攻略していく日本の真骨頂・・こちらでも、素晴らしい組織サッカーだと絶賛されている

 ・・とはいっても、たしかに日本は、素早く、広いボールの動きでゲームを支配する時間帯はあるけれど(実際にボール支配率では、ドイツを上回っていた!)・・それでも、そんなポゼッションを、実際のチャンスに結びつけることがままならない・・

 ・・ドイツ守備ブロックは振り回せるし、ドイツのボール奪取アタックを逆手にとり、その場に置き去りにしてしまうような素晴らしいコンビネーションも繰り出していく・・それでも、最後の勝負ゾーンは違う・・そこでは、相手も集中してくることで、どうしてもフィジカルな競り合いも増えてくるし、ボールがないところでの(パスレシーバーと相手マーカーとの)せめぎ合いが佳境に入ってくる・・

 ・・要は、フィジカルな対応も増えてくることで、どうしても「その壁」を突き破っていけないということ・・もちろん、一発のスルーパスや鋭いピンポイントクロスで勝負するような最終勝負が出てくればハナシは別だけれど・・やはり、そこはドイツ・・そんな、パス主体の最終勝負は、そう簡単には許してくれない・・メキシコ戦では、何度も何度も、相手守備ブロック背後の決定的スペースを攻略できたのに・・まあ、流石(さすが)にドイツっちゅうことでしょ・・

 ・・そんなゲーム展開がつづくなか、やってくれた、丸山桂里奈・・タテのスペースへ抜け出し、一発シュートを決めた・・佐々木則夫監督が、マルカリ(彼女のあだ名だそうな・・)に、こんなことを言ったらしい・・「とにかくチャンスにはシュートを打て・・宝くじは、買わなきゃ当たらない・・ゴールも、シュートを打たなきゃ奪えない!」・・あははっ・・

 ・・そして、マルカリの走りにピタリとシンクロした決定的パスを供給したのも、言わずと知れた澤穂希・・ホント、凄いネ、サワホマレ・・実は、これは、私のドイツの友人たちも例外なく口にする決まり文句なのですよ・・

 ・・最後に、マルカリのワンチャンス・ゴールを奪った後のナデシコの守備・・数分間は、ちょっといただけなかった・・下がり過ぎだったのですよ・・下がり過ぎてしまう・・後方に、人数が余ってしまう・・そして、全員が積極性を欠いた受け身のディフェンスに陥ってしまう・・要は、守備での悪魔のサイクル・・

 ・・わたしは叫んでいた・・下がるな〜〜っ!・・もっと前からボールを抑えろ〜!・・そうしなければ、ドイツに、ヴァイタルエリアを使いまくられちゃうゾ〜〜っ!・・

 ・・もちろん、そんな声が届くはずない・・でも、ビックリすることに、決勝ゴールが生まれた後の数分間を除いた「残り6-7分」の重要な時間帯に、ナデシコの守備ブロックが、活き活きとしてきたのです・・要は、しっかりと前からボールを抑えはじめたのです・・だからこそ、ドイツの攻撃が、勢いを失っていった・・

 ・・この守備での悪魔のサイクルについては、ドーハの悲劇だけじゃなく、今年1月のアジアカップでも同様の「現象」が観られた・・でもアジアカップでは、その体感があったからこそ、同じようにリードを奪ったオーストラリアとの決勝では、最後の最後まで(李のスーパーボレーゴールを!)落ち着いて守り切れた・・フムフム・・

 ・・何か、もっと書きたいけれど、とにかく、明後日には、友人たちとの会話の内容も含め、もっと書き足す予定ですので・・明日は、朝が早いから、今日は、こんなところでご容赦・・ではまた・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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