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2011_UCL・・それにしてもマンUは強かった・・(シャルケvsマンチェスター・ユナイテッド、 0-2)・・(2011年4月27日、水曜日)

まあ・・ネ・・皆さんもご覧になった通り、やっぱりチーム総合力では、マンチェスター・ユナイテッドに一日の(それ以上の!?)長ありということです。

 全体的なイニシアチブを握ったマンU。個人のチカラの単純総計という点でも、その個のチカラを有機的・複合的に結びつけ、「単純総計」にプラスアルファーを付加するという意味での「戦術力」にしても、マンチェスター・ユナイテッドに(サー・アレックス・ファーガソン監督に!?)分があったということです。

 ・・個の才能連中に、攻守にわたる組織的な「汗かきプレー」にも精を出させる・・そこにこそ、監督のウデが見えてくる・・フムフム・・

 このゲームを分析する方向性としては、まあ、二つありますかね。一つは、シャルケ守備の弱点を抽出して展開するディスカッション。ただここでは、強力なマンチェスター・ユナイテッドの攻撃力というポイントにスポットライトを当てるのが健康的だよね。

 立ち上がり数分で、シャルケのGKマニュエル・ノイヤーが、続けざまに「スーパー」なセーブを魅せました。最初は、ルーニーが放ったドリブルシュート(内田篤人が伸ばした足にちょっと触れたことでコースが変わり、シャルケゴールの右上角へ飛んだ!)を横っ飛びに弾き出したプレー。

 もう一つは、我らがパク・チソンが、素晴らしいドリブルで抜け出してブチかました決定的シュートを防いだプレー。

 このシーンでは、最初パク・チソンに対峙したのは内田篤人だったけれど、チームメイトのバウムヨハンがサポートに寄ってきたこと、また内田篤人が、マンUの左サイドバック、エヴラのオーバーラップに対応したことで、最後は、バウムヨハンが、パク・チソンのドリブルをチェックすることになった。でも、そのバウムヨハンが、安易にボールを奪いに行ったことで簡単に抜かれ、決定的シュートを打たれてしまったというわけです。

 そのシュートを素晴らしい反応で止めたのも、またまたマニュエル・ノイヤーだったわけだけれど、ゲーム立ち上がり5-6分で、続けざまにマンUが演出した決定的シーンには、このゲームの行方が垣間見えていた・・っちゅうことです。

 同じようなチーム戦術イメージの両チーム(もちろん細部のプレーイメージは違うよ!)。だから、グラウンド上の「現象的な差」は、主に個のチカラ(最終勝負パワー)によって演出される!?

 いや・・わたしは、マンチェスター・ユナイテッドの場合、それ以上に、ウェイン・ルーニーやライアン・ギグス、はたまたエルナンデスやバレンシア、そしてパク・チソンといった「個の強者連中」を、組織プレーイメージ的に結びつける強力な接着パワー(=戦術力)こそが彼らの強みだと思っていますよ。

 要は、サー・アレックス・ファーガソンという戦術的な「接着剤」が、個の才能を、個人勝負プレーだけではなく、攻守にわたる高質な組織プレー「でも」うまく機能させるバックボーンにいるということです。

 だからこそ、攻守にわたる組織プレー(人とボールが動きつづけるなかで繰り出していく必殺コンビネーション)のなかで、(前述した)素晴らしく効果的な個の勝負プレー「も」タイミングよくブチかましていける・・。

 ちょっと、表現が分かり難いですかね〜。まあ、要は、マンUが誇る才能連中の間には、パスが回されてくることに対する相互の信頼感があるということです。だから、次のパスレシーバーにしても、自然と、ボールがないところでスペースへ動いていけるし、(次の)ボールホルダーにしても、パスを受ける前から、周りのチームメイトの「パスレシーブの意図」にも細心の注意を払いつづけられる・・っちゅうことです。

 人とボールを動かすことに対する相互の信頼関係が深い・・。チーム戦術的なイメージシンクロレベルが抜群・・。そう、アレックス・ファーガソンという「チーム戦術的な接着剤」。

 とにかく、マンUの攻撃は多彩で変化に富んでいる。人とボールが動きつづけるなかで唐突に繰り出されるドリブル勝負や必殺のコンビネーションが秀逸です。

 前述した、立ち上がり時間帯でのチャンス後にも、必殺コンビネーションからの決定的スルーパス&シュートシーンを演出したり、大きなサイドチェンジからの一発クロス勝負を仕掛けたり、はたまた、セットプレーやカウンターでシャルケ守備ブロックの心理を不安定にしたり・・。

 まあ、最後は(シャルケGK)マニュエル・ノイヤーが存在感を発揮しつづけたわけだけれど、彼がいなかったら、シャルケは、前半だけで複数のゴールを叩き込まれていたに違いない。

 後半22分の、マンUの先制ゴールシーン。そこでも、天才連中の抜群のあうんの呼吸(イメージシンクロ・コンビネーション)が炸裂する。

 左サイドのウェイン・ルーニーへボールが回されるのと同時に、後方から、ライアン・ギグスが、スルスルと上がっていった。相手守備から「消える」ことで、タテのポジションチェンジを演出するギグスの動き。

 もちろんルーニーは、その動きを明確にイメージしている。中央ゾーンへボールを運びながら、シャルケ守備ブロックの視線と意識を「引きつけて」しまう。そう、天才的な「タメの演出」。そして最後の瞬間、抜け出していたライアン・ギグスへの天才的スルーパスを決めた。

 このシーンでは、ライアン・ギグスとウェイン・ルーニーの相互信頼がテーマだよね。「ライアンなら、最後まで走り抜けてくれる・・」。「ウェインなら、絶対に最後はスルーパスを出してくれる・・」。フムフム・・

 最後に、内田篤人。

 彼も、相手の強さを体感しつづけていたはずです。局面勝負での競り合いだけではなく、自分の守備イメージを超越する、マンUの(組織コンビネーションによる)スペース感覚も含めて・・。

 彼にとっても、素晴らしい学習機会。とにかく、マンUの「スペース感覚」を、ビデオで、繰り返し脳裏に叩き込みましょう。要は、効果的なイメージトレーニング素材という意味合いだけれど、サッカーでは、詰まるところ、やっぱりボールがないところで勝負が決まってしまうのですよ。だからこそイメージトレーニングがとても重要なのです。

 それにしてもマンチェスター・ユナイテッドは強かった。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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