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2011_UCL・・やっぱり「組織と個のバランス」っちゅう視点じゃ、マンUに一日の長ありだね・・(マンUvsチェルシー、 2-1)・・(2011年4月13日、水曜日)

いや、面白かった。マンUとチェルシーが展開した、深〜い、せめぎ合い。

 前からの協力プレス守備(まあ忠実なハードワーク)を仕掛けつづけるマンチェスター・ユナイテッド。キッカケとなる忠実&素早いチェイス&チェックに、周りの協力プレスアクションや「次を狙う」アクションが見事なハーモニーを魅せつづける。

 忠実な「マン・オリエンテッド」組織ディフェンスが強調されている!? いや、そうとも言い切れない。状況によっては、互いのポジショニングバランスを調整しながら冷静に相手の出方を観察し、タイミングを見計らって爆発する(もちろんキッカケは爆発的チェイス&チェック)なんていうシーンも多いからネ。

 まあ・・、まさに臨機応変のディフェンスっちゅうことだね。そして、一度爆発したら、そのキッカケとなる忠実なチェイス&チェックをベースに、その周りで展開されるダイナミックな組織守備アクションが、まさに一つのユニットとして連動していく。

 もう一つ。マンUの場合は、落ち着いたポジショニングバランス・オリエンテッドな守備と、積極的に前からボールを奪いにいく、マン・オリエンテッドなプレッシング守備のメリハリが(その切り替えが)、とても上手くマネージされているというポイントも特筆だね。

 対するチェルシー。こちらも、ボール奪取イメージが素晴らしいハーモニーを魅せつづける(ハイレベルなイメージシンクロ=連動性)組織ディフェンスを魅せる。

 とはいっても、監督はカルロ・アンチェロッティーだからね、微妙なニュアンスだけれど、(イングランド代表と同様に!?)互いのポジショニングバランスに「より」気を遣っていると感じる。もちろん、一度(ひとたび)仕掛けアクションがスタートしたら、こちらも、チェイス&チェックと周りのボール奪取アクションが見事なハーモニーを魅せる。

 でも攻撃では、微妙な「イメージ的差異」があると感じる。

 マンUは、究極の組織プレーイメージを基盤にしている・・それに対しチェルシーは、個の才能プレーに「より」強くスポットライトを当てるようなイメージで仕掛けていく・・!?

 とにかく、マンチェスター・ユナイテッドが魅せる、組織コンビネーションをベースにした「スペース攻略」は、本当に効果的だと感じますよ。そんな「プロセス・イメージ」が徹底しているからこそ、最後の勝負所でも、ラストパス(ラストクロス)を出す方と、シュートを決める方(パスレシーバー)のイメージと実際のアクションが、ピタリと「シンクロ」しつづける・・というわけです。

 そして、そんな組織コンビネーションをベースにしているからこそ、たまに魅せる、ナニやギグス、はたまたルーニーやエルナンデスの(もちろん、我らがパク・チソンも!)勝負ドリブルが、抜群の効果を発揮する。

 要は、人とボールの動きが、とても活発で創造的だからこそ、その動きのなかで演出される「相手ディフェンスの薄いゾーンにボールを運ぶ」という組織プレーも最大の効果を発揮する(だからこそドリブラーも、より有利な状況でボールを持てる!)っちゅうわけです。

 それに対してチェルシーは、アネルカやマルーダといったドリブラーの創造性イメージを「より」重視していると感じる。彼らの場合、足許パスが「より」目立つし、最終勝負がスタートするキッカケも、個人プレーであることが多いからネ。それに対してマンUは、あくまでも、人とボールの動きをベースにした「仕掛けの起点の演出」が、最終勝負のキッカケになるわけです(そこから、組織コンビネーションや勝負ドリブルを繰り出していく!)。フムフム・・

 まあ・・やっぱり、組織プレーと個人勝負プレーが高みでバランスしているマンUに、内容でも勝負強さでも、一日の長があった・・だからこの結果は、まさに順当・・っちゅうことでしょうね。

 ところで、前半に両チームが作り出した「二つ」の決定的シーンには含蓄があった。

 一つは、チェルシー。

 ・・マルーダが左サイドからドリブルで突破していく・・そのアクションの横では、ランパードがサポートに上がってきている・・そのランパードを、イメージ的にマークするのは、マンUの守備的アンカー、キャリック・・

 ・・そして最後の瞬間、マルーダが(まあ偶発的に・・)ドリブルで抜け出してしまう・・同時に、ランパードも、決定的スペースへ抜け出していく・・キャリックは、そのランパードのスタートを見ていない・・また、マンU最終ラインの重鎮ファーディナンドは、ドリブルで突進してくるマルーダへ寄って行かざるを得ない・・完璧フリーのランパード・・

 ・・そして、マルーダから、完璧にフリーになったランパードに、置くようなラストパスが出された・・完璧にフリーでシュートを放つランパード・・誰もが、ゴールだと確信したに違いない瞬間・・ただ、マンUの大ベテランGKファン・デル・サールは、そのシュートを横っ飛びでキャッチしてしまう・・

 もう一つは、マンU先制ゴールのシーン。

 ・・ルーニーからの見事なサイドチェンジパスを、これまた見事なダイレクト・コントロールパスで、「チョンッ!」と、後方のオシェイへ「落とす」ギグス・・そのパスを受けたオシェイは、一瞬ギグスとアイコンタクト・・このとき、ギグスをマークしていたのは、チェルシーの創造性リーダーであるアネルカ・・まあ、守備意識敵には課題満載といえる天才プレイヤー・・

 ・・案の定アネルカは、ボールを持つオシェイに気を取られてしまう・・そして次の瞬間、そんなアネルカの「集中ぎれ」を突いたギグスが、背後の決定的スペースへ爆発スプリントをスタートするのである・・

 ・・もちろん、その勝負アクションの基盤は、ボールを持つオシェイとのアイコンタクト(勝負イメージの共有)・・オシェイから、素早いタテパスが送り込まれたのは言うまでもない・・その時点でアネルカは、完璧に置き去り・・そしてギグスから、見事なラスト(グラウンダー)クロスが、ファーサイドから突っ込んでくるエルナンデスに、ピタリと合ったという次第・・ゴーーーールッ!!・・

 この二つのシーンでは、決定的な仕事をした(チェルシーの)ランパードと(マンU)のギグスが、相手マーカーの「意識と視線を盗んで」決定的スペースへ入り込んだ・・というプレーがテーマだったですかね。

 まあ、守備側から見たら、いかに、ボールとマーク相手の「両方」を効果的にイメージできているか・・っちゅうテーマになるかもしれないけれどネ。

 そう・・、勝負は、ボールのないところで決まるのですよ。もちろんディエゴ・マラドーナやメッシ、はたまたジョージ・ベスト(ちょっと古い!?)だったら、自分たちのこだわりとして(!?)ボール絡みで「も」勝負を決めちゃうんだろうけれどネ・・あははっ・・

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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