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2011_U22日本代表・・組織と個が絶妙にバランスするハイレベルサッカーを魅せつづけた若武者たち・・また欧州取材の告知も・・(日本vsクウェート、 3-1)・・(2011年6月20日、月曜日)

さすがに関塚隆監督、とても良い「チーム」に仕上げてきた。

 関塚さんは、優れたインテリジェンスとパーソナリティーを基盤に、ハイレベルな学習能力を発展させつづけている。だからこそ、今のチームパフォーマンスに決して満足することなく、次、その次へ・・と、目標レベルを高揚させつづけられるのだと思う。いいね・・

 この「U22代表チーム」がもっとも優れているところ・・

 それは、攻守にわたるアクションのハイレベルな量と質に代表される「強烈な意志」という心理・精神的な部分だけではなく、組織プレーと個人勝負プレーが絶妙にバランスした、優れたチーム戦術イメージに(その、チーム内での統一感に!)あると思う。

 とにかく全員が、互いに「使い・使われるというメカニズム」を深く理解し、そのコンセプトに従って、強い意志をベースに勇気をもって行動しつづけるのですよ。だからこそ、攻守にわたる「全力スプリント」が間断なくグラウンド上に現出してくる。

 攻守にわたる全力スプリントこそ、選手が成し遂げようとする(成し遂げたい!)具体的なターゲットをもっていることの明確な証左なのです。

 ちょっと表現が回りくどい・・!? スミマセンね、要は、我らが若武者たちが、ダイナミックな組織サッカーを展開したっちゅうことです。まあ・・ね、作り出したチャンスを実際のゴールに結びつけることに対する課題は残ったけれどネ。

 相手のクウェートは、決して弱小チームなんかじゃありません。個人的には、とても高い能力を有している。そんなクウェートが、アウェーで強豪の日本と対戦するということで、守備ブロックを固めてゲームに臨んでくるのです。そして、ワントップの17番ユセフ・ナセルをコアにした必殺カウンターをブチかましてくる。

 普通だったら、とても難しいゲームになるはずだよね。スペースをうまく攻略できないとか、足が止まってしまうことで足許(横)パスのオンパレードになってしまうとか・・そしてサッカーが停滞したスキを突かれて危険なカウンターをブチかまされてしまう・・。

 でも、そんな心配はどこへやら。日本の若武者たちは、立ち上がりから大車輪の「組織サッカー」を繰り出していくことで、クウェート選手たちが脳裏に描こうとする「勝負イメージ」を完璧に凌駕しつづけるのです。攻撃においても、守備においても。

 とにかく、局面で一対一の勝負に陥るシーンが少ない。若武者たちは、クウェート選手とのフィジカルな接触を避けるように、人とボールを動かしつづけるのですよ。素早く広いボールの動き・・だからクウェート選手も、ボール奪取のターゲットを絞り切れずにボールウォッチャーになってしまうシーンが続出してしまう。

 そして、クウェート守備が薄くなった(カバーリングの人数が足りない)ゾーンへボールを運び、そこから、「ココゾッ!」の勝負ドリブルや必殺コンビネーションをブチかます。

 我らが若武者たちは、縦横無尽に走り回って(クリエイティブなムダ走りを積み重ねることで)クウェート守備ブロックを翻弄し、ウラ取りも含め、どんどんとスペースを攻略していく。もちろんサイドのゾーンを起点にしてね。そして、ゲームの流れからすれば、まさに順当という表現がピタリと当てはまるような、絵に描いたように美しい(サイドゾーンを崩し切ったクロスからの)先制ゴールが決まった。だれもが、小気味よい組織サッカーに舌鼓を打っていたに違いない。

 あっと・・またまた難しい表現になってしまった。要はサ・・守備を固めようとするクウェートに対しても、我らが若武者連中がブチかます組織サッカーが、抜群の実効を魅せたということです。

 そして後半。やっとクウェート守備ブロックが「開き」はじめたことで(より人数を掛けて積極的に前へ来るようになったことで)、ゲームが動的な均衡状態に入っていった。要は、それこそが、次戦アウェーでのゲーム展開・・ということです。

 もちろんクウェートの「暑さ」を考えれば、動きの少ない局面勝負シーンが増えることになるでしょ。それは、局面でのフィジカル接触プレーが増えることを意味する。そうね〜、日本にとっては、あまり好ましい展開じゃないね。だから、人は大きく動かないまでも、しっかりとボールだけは「走らせる」ことを意識するようなイメージ・トレーニングが必要になってくると思う。

 ・・パスレシーバーが、素早く、小さく動くことで相手マーカーとの間合いを空けて鋭いパスを受ける・・そして素早く正確なコントロールで、間合いを詰めてくる相手を威嚇してタメる・・そんな器用なコントロールプレーじゃ、日本の方が明らかに上(!)・・そしてまた、正確で鋭いパスを展開していく・・そして、そんなボールの動きをベースに、「ココゾッ!」の瞬間に、ドリブル勝負や鋭いコンビネーションなどで「爆発」する・・

 そんなイメージトレーニング素材としては、なんたって「バルセロナ」がうってつけだぜ。

 まあ、彼らのプレッシング守備(組織的なボール奪取プロセス)は別にして、ヤツらのボールの動き(足許パス回し)は超一流だからね。もちろん、そこからの「瞬間的な爆発勝負プレー」を真似るのは無理にしても、ボールをしっかりと動かすというイメージの構築には、かなりの効果が期待できるイメージトレーニング素材だと思うよ。

 アッと・・話題が逸れた。とにかく私は、後半の展開が、次のアウェー戦のベースになるはずだからと、興味深く「サッカーの流れ」を観察したのですよ。そして思った。

 こんなイーブンな攻め合いになっても、我らが若武者連中は、決して怯(ひる)んだり消極的に受け身になることなく、攻守にわたって、あくまでも「解放されたマインド」で、ダイナミックな積極サッカーを展開した・・いや、後半の方が、よりサッカー内容が充実していたという見方だって出来るかもしれない。

 ・・サイドゾーンを例によってのコンビネーションで攻略したり・・そこを起点に、原口元気や大迫勇也、はたまた清武弘嗣といったドリブラーが、ココゾのタイミングで、超危険なドリブルシュートを仕掛けたり・・攻め上がるクウェートの間隙を突き、清武弘嗣、原口元気、大迫勇也を中心に、ものすごく効果的なカウンターを何度もブチかましたり・・ホント、頼もしい・・

 この内容だったら、次のアウェー戦は大丈夫!?

 いやいや・・そうは問屋が卸さないのがサッカーだよね。何せ、次は中東での戦いになるわけだし、相手はフッ切れたサッカーを展開してくるからね。まあ・・関塚ジャパンの真価が問われる闘いになるっちゅうことです。フムフム・・

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 最後に、ヨーロッパ取材の告知です。

 わたしは、女子ワールドカップの取材、欧州(プロ)サッカーエキスパートとの意見交換(今回は本にするかもしれません・・)、そしてドイツプロサッカーコーチ連盟主催の国際会議に参加するため、今週早々に日本を発ち、6週間ほどヨーロッパに滞在します。

 帰国は、7月の末になる予定。ということで、これから発信しつづけるヨーロッパ情報にもご期待いただければ幸いです。では・・

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 ところで・・

 友人のご夫妻がはじめたイタリアン・テイクアウトの店の紹介もさせて下さい。ピアダとパスタの専門店。チェアも用意してあるから、その場でも食べられます。頬(ほお)が落ちること請け合いでっせ。

 お店は「PaninoNino」といい、奥様が(調理も含む)実務を取り仕切っています。旦那は建築(インダストリアル!?)デザイナーで、長くミラノで仕事をしていた。だからご夫妻ともイタリアサッカーファンのはず。彼らがイタリア(ミラノ)で生活していた当時、ACミランの監督を、アルベルト・ザッケローニさんが務めていたということです。

 奥さんが、「ザッケローニさんは、ピアダが大好きだと聞いているから、お越しになれば歓待さし上げますってお伝えくださいな・・」と上品に言われていたけれど、そう簡単にザッケローニと立ち話するわけにゃいかないよね。あははっ・・

 ということで、一度お試しあれ。ホント・・美味しいよ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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