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2011_ヨーロッパの日本人・・長友佑都・・(2011年2月14日、月曜日)

ホームのユーヴェントスは、本当によく勝ち切った。もちろんその背景に、一点を追うインテルが、あと数分でタイムアップという勝負所の時間帯で作りだした二つの絶対的チャンスをモノに出来なかったという興味深い出来事もあった。

 二つとも、カメルーン代表の中心選手、エトーのシュートシーンだったけれど、わたしのイメージでは、そんな「イタリア的ワンチャンス」を外すという現象自体が、感覚的にちょっと異質だったのですよ(ビデオやユーチューブで確認して下さい)。

 昨日のコラムでも書いたけれど、イタリアでは、「守備ラインと中盤ラインで構成するブロック」のポジショニング&人数バランスを、カチッと取りつづけるチームが多いよね。

 そのなかで、カウンターやセットプレーは当たり前として、組み立てプロセスからの仕掛けでは、落ち着いたボールの動きから『一発』の勝負タテパスを『ダイレクト』で狙ったり、確実な足許パスをつなぎながら相手守備ブロックの薄いゾーンからドリブル勝負を仕掛けていくことでチャンスを作り出そうとする。

 ・・彼らのサッカーのコンセプトでは、何といっても「安全(安定)確実志向イメージ」が強い・・だから選手には、忍耐強さが求められる・・だからこそ(忍耐を積み重ねるなかで!)作り出したワンチャンスシーンで炸裂する『集中力』が並外れている・・それこそがイタリアサッカーの神髄・・ということで、最後の数分間にインテルが作り出した絶対的シーンでシュートを外した現象が、わたしの感覚からすれば、ちょっと異質だった・・ってなことだったのです・・

 ということで、残り20分というタイミングで、カンビアッソに代わって登場した長友佑都。

 ゴールが必要な状況で、レオナルド監督が彼を使った(彼に期待した)という事実は重い。それは、レオナルドが、長友佑都を「攻守にわたる本当の戦力」として考えているからに他ならないわけだからね。

 レオナルドが期待する長友佑都に対する「戦力イメージ」としては、やはり彼の攻撃力への比重の方が高い・・!?

 実際に長友佑都は、その期待に応えるように、堅実な守備を絶対的なベースにしながらも、ココゾッ!のタイミングでは、フッ切れたオーバーラップを魅せつづけていた。何度も、何度も、繰り返し、忠実に・・。そしてユーヴェントス守備ブロックも、そんな長友佑都の「爆発」に、視線と意識を引き寄せられていくのですよ。

 そのこと自体「も」、とても重要な価値だった!? フムフム・・

 たしかに、ユーヴェントス守備ブロックが「長友佑都の爆発」を警戒していたことで、彼が魅せた(何度かの)オーバーラップが実際の(長友佑都自身の)チャンスに結びつくことはなかった。でも、彼が爆発したことで、特にエトーが、冒頭に記した絶対的シュートチャンスだけじゃなく、それ以外でもいくつかのチャンスを得たのですよ。

 エトーが獲得したチャンス。例えば・・長友佑都の爆発オーバーラップによって、(ボールをキープする)エトーに対する相手マークの間合いが一瞬「緩んだ」・・そのスキを突いたエトーが、中央ゾーンへ切れ込んでいく勝負ドリブルからミドルシュートを放った・・また・・長友佑都の爆発オーバーラップという「大波」によってユーヴェントス最終ラインのコントロールがちょっと甘くなる・・そのスキを突いたエトーが、決定的スペースへ抜け出すパスレシーブのフリーランニングを繰り出す・・そこへ、すかさずスナイデルから(浮き球の)決定的スルーパスが出る・・

 この二つの惜しいシュートシーンは、たしかに冒頭のチャンスと比べれば、ゴールの可能性はちょっと落ちるかもしれない。でもそれは、インテル選手たちに、それまでよりも強く「ゴールのニオイ」を感じさせたシーンだった。そして、そんな、「何かが動くかも知れないという感覚を呼び覚ます現象」によって、インテル選手の気合い(勝負への執念)は高揚し、逆に、ユーヴェントス守備の姿勢をより受け身なモノにしていった・・!?

 ここでのテーマは、インテルが(長友佑都の投入によって!?)、カウンターやセットプレー、はたまた、落ち着いた組み立てプロセスのなかから唐突にブチかましていくダイレクト一発タテパスや個のドリブル突破といった最終勝負イメージだけではなく、組み立てプロセスからの組織コンビネーションという最終勝負イメージも強化していった・・っちゅうことですかね。

 もちろんインテルも、三人目、四人目というボールがないところでの勝負の動きをベースにした、人数をかけた「動的」な組織コンビネーションで最終勝負を仕掛けていくシーンもあるけれど、やはり、その頻度は、マンUやバルセロナから比べれば低いのですよ(これについても昨日のコラムを参照してください)。

 あっと・・またまたテーマが錯綜してきた。

 とにかく(長友佑都の)、堅実なディフェンスからタイミングよく繰り出していく、ボールがないところでの爆発オーバーラップという『組織的な』仕掛けプレーが、インテルの組織コンビネーションイメージを徐々に活性化していく(彼らの攻め手イメージを拡張する!?)に違いない・・ということが言いたかった筆者なのでありました。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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