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2011_なでしこ・・厳しい自然環境をマスターし切れなかった「なでしこ」・・でも、課題抽出の良い刺激になったはず・・(日本代表vs韓国代表、 1-1)・・(2011年6月19日、日曜日)

わたしは、女子ワールドカップの取材、欧州(プロ)サッカーエキスパートとの情報交換(今回は本にするかもしれません・・)、そしてドイツプロサッカーコーチ連盟主催の国際会議に参加するため、来週早々から6週間ほどヨーロッパに滞在します。

 ということで、今は、なでしこジャパンに関する様々な「情報&イメージ」を集約している最中です。その一環として、昨日の日韓戦は、とても重要な意味をもつはずだったのですが・・

 その試合は、皆さんもご覧になったとおり、グラウンドに水が溜まった状態でプレーするという(特に、人とボールの素早く広い動き&コンビネーションを絶対的なコンセプトとする日本代表にとって)厳しいモノにになってしまいました。

 この、攻守にわたる素晴らしい組織サッカーという視点については、2年前にドイツ・マンハイムで行われた、ドイツ女子代表との親善試合を分析した「このコラム」を参照して下さい。そのとき私は、ドイツプロサッカーコーチ連盟主催の国際会議に参加するため、タイミングよくドイツにいたのですよ。

 そのとき「なでしこ」がブチかました素晴らしい組織サッカーこそが、今回の取材の根底モティベーションになっているというわけです。これだったら、心理・精神的な「壁」さえ乗り越えられれば(いや・・ワールドカップという強烈な刺激によって越えていかざるを得なくなるに違いない!!)、もしかしたら・・なんてね。そして昨日の日韓戦・・

 もちろん、どんな悪条件でも、状況に即したサッカーが出来ないのでは、その実力に疑問符がつくのは道理です。この試合での日本代表は、たしかに状況を「マスター」していたとは言い難かったね。

 立ち上がりは、厳しいグラウンド状況をモノともせず、素晴らしい組織プレッシャー(ダイナミックな守備)をベースに、韓国チームを圧倒し、何度かチャンスも作り出した。でも、ボールの動きが「止まって」しまうという状況がつづいたことで、徐々に人の動きも減退していった。これでは、韓国守備ブロックのウラスペースを、組織コンビネーションで攻略していけるはずがない・・。

 そんな展開がつづいているうちに、自分たち(最終ライン)の背後のスペースを攻略されないことで自信を拡充させていった韓国チームに押し返されはじめただけじゃなく、危ない場面も作り出されてしまうといった悪循環に陥ってしまったのです。

 それでも後半になって、再びペースをアップさせていった「なでしこジャパン」。難しいゲーム展開のなか、素晴らしい先制ゴールを奪います。

 前からの積極的な組織プレッシングによって相手のミスパスを誘い、そのまま、ビシッと「ショートカウンター」を決めたスーパーゴール。そこでの、ボール奪取からショートカウンターの流れでキーマンとなったのは、言わずと知れた澤穂希でした。

 ・・岩渕真奈の前戦からのチェイス&チェックによって限定された韓国のタテパス・・それを狙い、ズバッという勢いで相手トラップの瞬間を狙ったアタックを仕掛けていった澤穂希・・その勢いに気圧された韓国選手(タテパスのレシーバー)は、案の定、ダイレクトの横パスで逃げる・・

 ・・そんな消極プレーを日本選手が見逃すはずがない・・もちろん澤穂希も、横パスに対応して追いかけたけれど、その場面にタイミングよく入り込んで来たのが、澤穂希のボランチパートナーとして素晴らしい「アンカー役」をこなす阪口夢穂・・

 ・・その瞬間、阪口夢穂がインターセプトすることを確信した澤穂希は、すかさず、タテに空いたスペースへ全力で飛び出し、そこへ阪口夢穂から、絶妙のタイミングとコース、そして強さのダイレクトパスが送り込まれた・・

 ・・これで勝負あり・・冷静に状況を判断し、ちょっとボールをキープする雰囲気をかもし出すことで韓国ディフェンスを引きつけた澤穂希から、(澤が作り出した瞬間的な雰囲気によってフリーになった)右サイドの永里優季へ、正確に「置く」ようなタテパスが送り込まれた・・完全にウラを取られてしまう韓国守備ブロック・・

 ・・最後の特筆ポイントが、ヴァイタルエリアが完全に空いたことで、後方から突進していった宮間あや・・スタートするときから、大きく腕を振ることで、右サイドでフリーでボールをコントロールした永里優季へアピールしていた・・そして、これまた「置く」ような、正確な、戻り気味のラストクロスが、永里優季から戻された・・という次第・・

 それにしても宮間あやのキックは素晴らしいね。右足インサイドでシュートされたボールは、正確に、韓国ゴール右上隅に吸い込まれていった。

 まあ、その後の、集中切れミスによる同点ゴールはいただけなかったし、全体として、「自然」をマスターし切れていたとは言い難かったけれど、こんな悪い流れもまた、本大会で実力を出し切るための「課題抽出の良い刺激」になるものだよね。もちろん、佐々木則夫監督のストロングハンドがうまく機能すれば・・のハナシだけれど。

 とにかく、今回の女子ワールドカップには、とても大きな期待を込めて臨もうと思っている筆者なのでした。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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