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2011_日本フル代表(WM3次予選)・・順調な発展ベクトル・・期待感が高まりつづける・・(日本代表vsタジキスタン代表、8:0)・・(2011年10月11日、火曜日)

素晴らしかったネ〜、日本代表。

 とにかく、人とボールが動きつづける素晴らしい組織コンビネーションサッカーが爆発した・・っちゅう感じ。そんな組織プレーのなかに、ふんだんに「創造的な個の勝負プレー」もミックスされていたんだから、ザッケローニさんが、ボールがないところでの動きが素晴らしかった(だからこそ、より有利なカタチで個の勝負をブチかましていけた!)と絶賛するのも当然だった。

 タジキスタン守備ブロックも、そんな日本のスペース攻略コンビネーションに対して、イメージ的にも物理的にも付いていけていなかった。

 イレギュラーするボールを足で扱うサッカーは、不確実な要素がテンコ盛りだからこそ、まさにホンモノの心理ゲームと言える。

 そして、だからこそ、日本のコンビネーションに振り回されただけじゃなく、ゴールまで奪われてしまったことでタジク選手のモラルが徐々にダウンしていったことで(特にマイクの先制ゴールが、彼らの闘う意志をガクッと減退させた!?)、日本のスペース攻略コンビネーションに対す抗する実際のディフェンスアクションを起こすための物理的なエネルギーを十分にチャージできなくなっていった・・と感じていた!? フムフム・・

 とはいっても私は、そんな状況になるまでには、ゲーム展開という視点での「前段」があったと思っているのですよ。

 要は、ザッケローニが描いたストーリーの「前段」が素晴らしく機能し、そして結果(ゴール)も付いてきたからこそ、結果として、タジクを完膚無きまでに叩くことができた(ウラの決定的スペースを攻略しつづけられた)と思うわけです。

 ベトナム戦で再認識できたとおり、もし組織プレーアクション(特に人の動き)がうまく機能せず、ゲームのなかで相手が自信を深めて集中力をアップさせていったら、いくら相手との実力差が大きくても、そう簡単には相手守備を攻略できない悪い流れに入ってしまうよね。

 だからこそ、今日のタジキスタン戦にしても、ゲーム立ち上がりの展開(=前段)こそが「勝負のキモ」だったと思っている筆者なのですよ。そう・・徹底的にサイドゾーンを、組織サッカーで崩していくという共通イメージの進化と深化・・。

 ここからは、例によって箇条書きでつづけます。

 ・・まず、その立ち上がりの「前段の展開」というか、ザッケローニ監督の意図やゲーム戦術プランがいかに上手く機能したのかというポイントについて・・

 ・・このゲームの見所は、言うまでもなく、強化された相手ディフェンスをいかに崩していくのかということだった・・ザッケローニ監督のサッカーでは、もちろんサイドゾーンから「も」仕掛けていくけれど、この試合では、相手を「引き出す」ことで守備ブロックを開かせる(中央のゾーンにスペースをこじ開ける)という意味合いも含め、とにかく徹底的にサイドゾーンから仕掛けさせた・・

 ・・左サイドでは、長友佑都と香川真司のコンビ・・右サイドでは、岡崎慎司と駒野友一のコンビ・・そのタテのポジションチェンジも含むコンピプレーを、中村憲剛、長谷部誠、そして言わずと知れた遠藤保仁で組む「いぶし銀トライアングル」がサポートするのですよ・・そりゃ強力だ・・

 ・・何度、遠藤保仁や長谷部誠、はたまた中村憲剛が、サイドゾーンの二人を、後方から「行け行け〜!」と前へ送り出すシーンを目撃したことか・・サイドの二人にしても、後方に強力なバックアップがいるから、後ろ髪を引かれることなくガンガンと行けたはず・・

 ・・そして前半11分・・まさに、ザッケローニ監督がイメージしたとおりの先制ゴールが決まるわけです・・岡崎慎司からのバックパスを受けた駒野友一が、シンプルに、中央ゾーンへクロスボールを送り込んだのですよ・・そこに待っていたのは・・

 ・・この試合でザックは、ハーフナー・マイクを先発で送り出した・・これは、前述したゲーム戦術的な「イメージ作り」とセットということだと思うよ・・徹底的にサイドから崩すことで、タジキスタン守備ブロックを開かせるというイメージ・・そして、サイドでの徹底したコンビネーションから一瞬の「フリーな起点」を作り出し、そこから正確なクロスを送り込む・・そしてそこには、マイクのアタマがある・・ってな具合・・

 ・・そのゴールが決まったとき、ザッケローニさんは、(心のなかで!?)快哉を叫んだに違いない・・だから聞いた・・「マイクは、まさに監督がイメージした通りのプロセスで先制ゴールをブチ込んだと思う・・そしてそれをキッカケに日本のサイド攻略コンビネーションが加速し、あのような一方的な展開になった・・まさに、監督のゲームプランが大成功を収めた・・今日のゲームは、いままでのなかでも最も気持ちの良いゲームの一つだったと思うのですが?」・・

 ・・そんな質問に対し、ザッケローニさんは、「Jリーグでゴールを量産しているマイクを観てみたかった・・タジクは中央を固めることは分かっていた・・だから、サイドからの仕掛けを有効に活用していくというのが戦術プランだった・・」と、ちょっと味気ないコメント・・にもかかわらず私は、ザッケローニさんが、ものすごく心地よい90分を過ごしていたと確信する次第です・・あははっ・・

 ・・遠藤ヤット、長谷部誠、中村憲剛で構成する中央ゾーンの「いぶし銀トライアングル」・・彼らを観ていて、チームメイトのケガなど、もう何があってもダイジョウブだと感じた・・ちょっと意味不明だけれど・・あははっ・・

 ・・遠藤ヤットだけれど、わたしは、彼が魅せつづける仕掛けの構成力に舌を巻いていた・・

 ・・例えば後半4分・・右サイドでブチかました岡崎慎司の走り抜けは、パスを受ける遠藤保仁を心から信頼していなければ決して出てこないフリーランニングだった・・もちろん、次の瞬間にはヤットから決定的パスが出された・・走り込む岡崎慎司の眼前スペースでピタリと止まる絶妙フィーリングのロビングパス(!)・・それを岡?がまったくフリーでシュートしたことは言うまでもない・・まあ残念ながらゴールにはならなかったけれどネ・・フムフム・・

 ・・それにしても、サイドゾーンの攻略コンビネーションは、素晴らしいの一言だった・・観ていて鳥肌が立つほど見事な「動き」が続けざまに繰り出されていた・・もちろんタジキスタン守備が「闘う意志を減退させた」ということもあるのだろうけれど、それにしても、日本代表がブチかますコンビネーションには、確信オーラが充ち満ちていたと感じたモノです・・

 ・・その確信オーラは、どんな相手にだって通用するはず・・もちろん相手が強くなれば、簡単にはウラの決定的スペースを攻略できなくなるだろうけれど(パス&ムーブやフリーランニングなどを駆使したコンビネーション)、それでも、何度もチャレンジをつづける意志を高みでキープするための心理エネルギーを充填してくれるはず・・フムフム・・

 ・・とにかく、このゲームでは、先のベトナム戦からの反省が込められていたとも思う・・だからこそ、ボールがないところでの動きの量と質が格段にアップした・・たしかにメンバーは代わったけれど、このゲーム内容には、ザック・ジャパンが志向するコンセプトが詰め込まれていた・・

 ・・そのコンセプトには、我々に、大いなる希望と期待を抱かせてくれるに十分な「内容」が込められている・・いいね・・

 ・・それにしても8ゴールね〜・・わたしは、香川真司と岡崎慎司の「シンジコンビ」にはハットトリックを完遂して欲しかった・・それほど良いプレーを展開したと思いますよ・・

 ・・岡崎慎司については、もう、あまり多くを語る必要はないけれど、香川真司については、ちょっとだけコメントを・・要は、周りが(不調だ・・不調だと!?)騒ぎすぎることで、彼自身が疑心暗鬼に掛かってしまっていると感じるわけです・・

 ・・この試合でも、素晴らしい「ゲームの入り」を魅せたあと、中盤で、ちょっと消極的になる場面もあった・・そんな香川真司を、スーパー長友佑都が、後方から、心理的&物理的にサポートするわけです・・香川真司にしても、長友佑都という、レベルを超えた「刺激」に後方から突かれるわけだから、積極的にリスクチャレンジして行かざるを得ない・・

 ・・そして香川真司がゴールというキッカケを掴んだ後は、今度は長友佑都が、今度はオレの番だ・・とでも言わんばかりに積極的に仕掛けていった・・いや、それぞれの意図が垣間見えたから、とても興味深く「左サイドのタテのコンビ」を観察していたですよ・・

 とにかく、ザッケローニ・ジャパンは、これ以上ないほどに順調な発展ベクトルを描きつづけている。我々の期待感が際限なく高まりつづけるのも道理ってなものです。とにかく、このように素晴らしい学習機会を提供してくれているザッケローニ・ジャパンには感謝しきりです。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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