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2011_J2_第9節・・またまた両監督との「対話」・・反町さんとは、タテへの仕掛けパスという興味深いテーマに触れた・・(ベルマーレvs横浜FC, 0-1)・・(2011年4月30日、土曜日)

「相手は、失点ゼロで2連勝したベルマーレ・・それに対して我々は5失点で2連敗したチーム・・この試合に臨むにあたって、とにかく粘り強く、最後まで諦めずに闘い切るという意志を徹底させることに尽力しました・・不細工なサッカーだったかもしれませんが、我々は、勝利に値するプレーを展開できたと思っています・・」

 プロ監督に対してこんな言い方をしては失礼かもしれないけれど・・。とにかく、横浜FCの岸野靖之監督は、プロの監督として、とても良い「パーソナリティー・オーラ」を放散していると思いますよ。読売サッカークラブ時代の「戦友」でもあるから、とても嬉しく、そして頼もしく感じていました。

 そんな岸野監督に、質問してみた。

 「決して横浜FCは、不細工なサッカーを展開したわけではありません・・立派な粘り勝ちだったと思います・・ところで、開始ゼロ分での先制ゴール・・それが入ったことによって、何か、ゲーム展開とか戦術的なプランとかに変化があった(変更を加えた)でしょうか??」

 「いや・・そのゴールによって実際のゲーム展開に大きな変化があったとは思いません・・どちらにせよ我々は、粘り強いディフェンスを主体に、しっかりと最後まで集中を切らさずに闘い切るという覚悟でゲームに臨んでいましたからね・・ただハーフタイムには、虎の子の一点を守り切ろうなんて考えず、とにかくもう一点奪いにいけとは話しました・・」

 フムフム・・。たしかに、全体的なサッカー内容では、ベルマーレに一日の長があったよね。組織プレーにしても、個人勝負プレーにしても。特に後半の横浜FCのディフェンスは(疲れもあったに違いないけれど・・)前半ほどに上手く機能していたわけではなかった。

 チェイス&チェックの「抑え」が効かなくなりはじめたことで、ベルマーレのボールホルダー(次のパスレシーバー)に対する詰めが甘くなっていったのです。それでも横浜FCは、岸野監督が言うように、肝心の勝負所ではベルマーレに仕事をさせなかった。あれだけゲームを支配していたのに、ベルマーレが作り出した決定的チャンス(決定的スペースの攻略シーン)は、ほんの数えるほどしかなかったからね。

 そんなベルマーレの攻撃に関する反町康治監督との「対話」については後述しますが、岸野靖之監督に、もう一つ質問したので、「そちら」も記録しておきます。

 「ところで、試合後のサポーターへの挨拶が終わったとき、岸野さんが、難波宏明選手を呼び止め、何やら立ち話をしていましたよね・・そこでは、何を話していたんですか?・・もちろん細かなところまでは話せないでしょうが、その内容が、戦術的なモノだったのか、あるいは心理マネージメント的なモノだったのかくらいはお話しいただけませんか?」

 ちょっと逡巡した岸野靖之監督。噛みしめるように口を開いた。

 「戦術的なモノと、心理・精神的なモノの両方です・・そこで難波に語った内容の骨子は、彼のガンバリがあったからこそ、試合を勝ち切ることが出来たというものでした・・彼の、前戦からの惜しみない汗かきディフェンス(チェイス)があったからこそ、全体的な組織ディフェンスを効果的に機能させられた・・その意味で、彼に感謝したわけです・・」

 いいね・・岸野靖之。現役時代の、実直な(謙虚で誠実な)プレー姿勢を思い出しながら、心のなかで、「ガンバレ〜岸野〜〜っ!!」ってな声を掛けていた。

 さて・・ということで、反町康治監督との会話。テーマは、タテへの仕掛けパス。とても微妙なテーマなんだけれど、質問のニュアンスは、こんな感じだった。

 ・・たしかにベルマーレの方が、全体的に優れたサッカーを展開していた・・ただ私は、タテへ仕掛けていく(タテパスを送り込む)チャンスがあるのに、それを失ってしまうというシーンが目立ち過ぎたとも感じていた・・たしかに、横浜FCと比べれば、ベルマーレの方が、タテへの仕掛けチャンスの量と質は上回っていた・・でも、J−1チームと比べたら、やはり、勇気をもってタテへ仕掛けていくシーンが足りないとも感じていた・・要は、チャンスを逃してしまうシーンが多すぎるということだが、そのテーマについてコメントをいただけないか・・

 頷(うなづ)きながら質問を聞いていた反町康治監督のコメントのニュアンスは、こんな感じだったと思う。

 ・・たしかにご指摘はもっともだと思う・・もちろん、タテへの仕掛けは、トレーニングの重要なテーマでもある・・ただ、たしかに、「あそこにパスが通れば・・」なんていうタラレバのシーンが多いことも確かな事実だと感じる・・まあ、そのためにトレーニングがあるわけだし、我々も、意識して改善しようとしている・・もちろんそこでは、パスを出す方だけではなく、受ける方の意識も高めなければならない・・

 反町さんは、もっともっとたくさん喋っていたけれど、このテーマに関しては、そんなニュアンスの発言だったかな。

 どうも、質問で、うまくニュアンスを表現できなかったと反省しきりなのだけれど、要は、タテへの効果的な「仕掛けパス」を送り込めるチャンスは一瞬であり、だからこそ、そのタテパスチャンスが生まれるかもしれないという「予測能力」を磨くことも大事なテーマになってくる・・っちゅうことですかね。

 ・・タテへの仕掛けパスは、もちろんリスクが大きい・・ミスパスになってしまうかも知れないし、受けたチームメイトがトラップをミスしてボールを失ってしまうかもしれない・・それでも、仕掛けていかなければ何も生み出すことはできない・・

 そんな仕掛けのタテパスが生まれるシーン「だけ」を編集し、イメージトレーニング素材として、選手に繰り返し見せつづけることは、とても効果的だと思う。例えば、FCバルセロナのタテパス&ダイレクトコンビネーションのシーンだけを編集したビデオとか・・ネ。

 とにかく、シャビやイニエスタ、メッシやペドロ、ビジャやダニエウ・アウベスといった天才連中が繰り出すタテ(仕掛け)パスは、観る方の度肝を抜く。何せ、足許パスだけじゃなく、タテへのスペースパスも多いわけだからね。予想(イメージ)ベースで出されるタテパス・・。

 でも、ここまで言葉で表現した内容でも、どうも、自分が思い描いている(本当にディスカッションしたい!)テーマと、まだ食い違っていると感じる。もうちょっと考えてみよう。とにかく、タテへの仕掛けパスというテーマは、とても深いよね。

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。

 追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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