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2011_アジアカップ・・日本と韓国の違い・・(韓国vsバーレーン、2-1)・・(2011年1月11日、火曜日)

たしかに、日本対ヨルダンと「同じような感じ」のゲーム展開になった。とはいっても、実質的なコンテンツには、「有意」な違いがあった。

 このコラムのテーマは、日本対ヨルダン戦でちょっと気になっていたのだけれど、日本代表が、ゲーム前に決められる、ゲーム戦術的な「基本ポジション」に、プレーイメージを支配され過ぎているのではないか・・というポイントです。

 要は、本田圭佑と香川真司・・

 もちろん、一度「落ち着いて」組み立てていくような展開の場合、そのスタートラインは、試合前に監督から与えられた「プレーイメージ」に拠る基本ポジションからはじめるだろうね。そんな状況で、基本ポジションが左サイドの香川真司がセンターゾーンへ寄せ、本田圭佑と「重なる」ようでは効果的な仕掛けは期待できない。

 それでも、仕掛けのプロセスに入ったらハナシは全く違う。そこで、最初に決められたポジショニングバランスに固執し過ぎたら、仕掛けの変化などまったく期待できないのですよ。そう、日本対ヨルダン戦前半の香川真司。「トップ下」という旗印の下、そのポジションを与えられた本田圭佑に遠慮していたのだろうか・・!?

 そんなんじゃ、相手ディフェンスが怖がるような「変化」を演出できるはずがない。

 日本対ヨルダン戦のコラムでは、(タテの)ポジションチェンジというキーワードを使った。仕掛け段階に入った日本代表のセンターゾーンでは、どうも、本田圭佑と前田遼一のポジショニングが「凝り固まっていた」ように感じられた。だから、ヨルダン守備ブロックにとって、予想しやすく、怖くなかった。

 そのことで、右は松井大輔、左は香川真司と、これまた基本ポジションに凝り固まってプレーしていた・・ように感じた。まあ・・前半の前田遼一と本田圭佑は、最前線センターゾーンの「フタ」になってしまっていたっちゅうことです。

 そんな日本代表に対し、韓国代表は、攻撃の核パク・チソンを中心に、まさに「渦巻き」のように、縦横無尽にポジションチェンジを繰り返す。だから、バーレーン守備ブロックの組織を不安定にさせられていたし、実際、何度も、縦横無尽のポジションチェンジで、バーレーン守備ブロックの背後に広がる決定的スペースを攻略できていた。それが、質実剛健な(誰がみても順当な)2-1という勝利のバックボーンにあった。

 もちろん、サイドバックのオーバーラップは、タテ方向のポジションチェンジが主体だよ。とはいっても、長友佑都は、より積極的にセンターゾーンを目指してはいたけれどね。そんな積極的な「侵略プレー」と、その後の、基本的な守備タスクへの「戻りの速さ」こそが、フットボールネーションでプレーを始めた彼の「実質的な発展」の象徴なのであ〜〜る・・なんてね。

 繰り返すけれど、組み立てプロセスを主体にした攻めの場合、あくまでもスタートラインは、基本ポジションだよ。でもさ、仕掛け段階に入ったらハナシは別なんだよ。その勝負プロセスでも、基本ポジションにこだわっているようじゃ、何かを生み出すコトなんて出来ない。変化こそが、実効ある仕掛けのコア(核の価値)なんだからね。

 ということで、多分ザッケローニが指示したんだろうけれど、後半になって香川真司がトップ下に入ってから(このトップ下という表現が一人歩きすること自体、次元の低さの象徴!)、また前線で動き回る李忠成と、抜群にエネルギッシュな(ボールがないところでの)動きと積極的なドリブル勝負を仕掛けつづける岡崎慎司によって、日本代表の仕掛けコンテンツが、格段に「危険」なモノになったし、ヨルダン守備ブロックを、何度も振り回した。

 ヨルダン守備ブロックにとって、後半の日本は、前半の何倍も「怖い攻撃」を仕掛けてきたに違いない。また、そんな「変化が活性化」したことで、本田圭佑の才能も、より効果的に発揮されるようになった。このポイントも、とても重要だね。

 韓国の強さを書こうとしていたのだけれど、結局、日本代表が中心のディスカッションになってしまった。まあ・・仕方ない。これから、もう一度韓国のゲームを見直し、気付いたところがあったらレポートしますよ。

 それにしても韓国は、オーストラリアもそうだけれど、とても強いね。

 たしかに、アジア全体のレベルは上がっているけれど、サッカーのレベルが高次平準化したなかでも、彼らは(覚醒した日本も含めて=hopefully=!!)、しっかりとゲームのイニシアチブを握り、相手ディフェンスを本当の意味で「崩して」いけるだけの確かなチカラを秘めている・・ということです。

 今回は、いろいろあって現地へ行けなかったけれど、大会がはじまったこの段階で(そこで展開されている実質的なサッカー内容を体感するなかで・・)、現地参加できないことが残念でならなくなった。でもまあ・・仕方ない・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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