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2011_アジアカップ・・この悔しい体感(=刺激)によって、本当に強い日本代表が戻ってくる!・・(日本vsヨルダン、1-1)・・(2011年1月9日、日曜日)

フ〜〜・・

 それにしても、本当に、よく追いついた。確かに嬉しかったけれど、わたしは、このまま勝ち点ゼロで終わってもいいかな・・なんてことも思っていた。そう、覚醒への刺激という意味でも、『アジアでの闘い』を思い出すという意味合いでも・・

 そこ(勝ち点ゼロ)からの日本代表は、追い詰められているからこそ、様々な視点で、強烈な意志が込められた「全力の闘い」を展開するに違いない・・そうすれば、ワールドカップを通して完璧なブレイクスルーのベクトルに乗っている日本代表の実力を考えれば、おのずと結果もついてくるに違いない・・その意味で、まだまだ突き破るべき「何か」を抱えている日本代表は、追い詰められる程、より価値のある学習機会(世界との最後の僅差を縮めていくための価値ある体感機会!)にも『恵まれる』ものだ・・なんてコトを考えていたわけです。

 それにしてもヨルダンは立派な闘いを展開した。韓国との勝負マッチなど、これまでの彼らの実績をしっかりと意識している日本代表だから、もちろん甘く見ていたはずがない。それでも、必要な「動き」と「プレーの速さ」に・・要は、強い意志に欠けていたことも確かな事実だった。

 動き・・。もちろん、ボールがないところでの選手の動きのこと。それも、最前線プレイヤーたちの、しつこく忠実な動きの繰り返し。それがなければ、仕掛けの流れが単調になり、ヨルダン守備ブロックにとっても、(日本の攻めが自分たちの眼前で繰り広げられるから!)まったく怖くない。

 もちろん、最前線プレイヤーの動きが鈍重になっていった背景には、後方からの「タテパスの供給」が消極的だったというコトもある。だから、最前線プレイヤーの動き「だけ」を批判するのはバランスに欠ける。この「タテへの仕掛けパス」という視点が、前述した「プレーの速さ」に欠けていた・・と書いたことの中心的な意味合いだった。

 要は、ヨルダン守備ブロックの背後に広がる決定的スペースを攻略するチャレンジが少なすぎたということ。だから、ヨルダン守備ブロックも、余裕をもって対処できたということです。

 ヨルダン守備ブロックは、決して、下がり気味に(受け身に)プレーしたわけじゃない。彼らは、しっかりと最終ラインを押し上げ、全員が日本選手をしっかりとタイトにマークすることで、フリーにプレーさせないというイメージで、積極的にボールを奪いにいった。

 最初、そんなヨルダン守備ブロックのプレー姿勢を観ながら、「こりゃ、日本にとっては有利だな・・ヨルダン守備は前から仕掛けてくるから、後方スペースを活用できるチャンスが増えるよな・・」なんて思っていた。

 でも実際には、日本代表は、そんなヨルダン守備の積極的な前からのプレスを「うまくかわして余裕を演出すること」が出来ずに、ザッケローニが意図する、チャレンジのタテへの仕掛けの流れをうまく作り出すことができなかった。

 要は、タテへのチャレンジパスが少なすぎたということだけれど、だから、徐々に、最前線プレイヤーによる「ウラ取りの抜け出しフリーランニング」に対する意志(そして実際のアクション)も希薄になっていった・・!? まあ、そうとも考えることができる。

 本当は、どんなに後方からのタテパスが消極的でも、『クリエイティブなムダ走り』を積み重ねていれば、全体的な仕掛けイメージが活性化してくるモノなんだよ。だから、やっぱり、ボールがないところでの動きを活性化することの方が最初にこなければならないということかな・・。

 もちろん、全盛期の中田英寿のような「強烈なパーソナリティー」がいれば、何度失敗しても、ガンガンとタテパスを供給しつづけることで、最前線プレイヤーの動きを活性化できるという支点もるけれどネ。

 要は、「両者」のイメージを、うまくシンクロさせられなかった(重なり合わなかった)ということでしょ。だからこそ、トゥーリオのような強烈なパーソナリティーが必要なんだよね。「テメ〜〜・・何やってんだよっ!・・どうして動かないんだ〜!!」なんていう強烈な『刺激』をブチかませるようなパーソナリティーがね。

 まあ、そのコンビネーション・イメージをシンクロ(同期)レベルをアップさせるためにこそトレーニングがあるっちゅうわけです。ザッケローニが、インタビューで示唆していたようにね。

 それでも、実は、日本代表は、何度もヨルダン守備ブロックのウラに広がる決定的スペースを突くシーンを演出していたのですよ。そう・・サイドバックや守備的ハーフコンビのオーバーラップ。やっぱり、ボールホルダーを「追い越す」ようなフリーランニングを仕掛けたら、確実にタテパスが出るものなんだよね。

 長友佑都、内田篤人、はたまた長谷部誠といった「後方プレイヤー」のオーバーラップによって、日本代表は、何度も「タテ方向への前後のボールの動き」をベースにした「ウラのスペース攻略」を実現していた。

 要は、いつも書いている「タテのポジションチェンジ」こそが、(特に相手がディフェンスを強化しているケースでは・・)もっとも有効な攻略手段だ・・っちゅうことです。

 特に両サイドバックが主体になったサイドからの仕掛けとクロスボールは効果的だった。長友佑都の決定的なクロスボール・・交替出場した岡崎慎司が魅せた、エイヤッ!の切り返しからのクロスボール(長谷部のダイレクトシュートは数センチ外れた!)・・内田篤人の、サイド攻略と、センターゾーンへの切り込みからの決定的シュート・・はたまた、サイドからのアーリークロスから、最後は香川真司が抜け出して決定的シュートを放つ・・などなど。

 とはいっても、後方グループと最前線グループによる、ボールを介した「効果的なコミュニケーション」がうまく機能していたら、そんなオーバーラップ(タテのポジションチェンジ)も、もっと威力を発揮したと思うのですよ。何といっても、攻撃を効果的にする最も重要なコンセプトは「変化」だからネ。いくつも「武器」があれば、それを使い分けることで、もっとも有効な「変化」を演出できる・・っちゅうわけです。

 そんな、最前線プレイヤーの動きだけれど、特に岡崎慎司が登場してからは、とても効果的に機能するようになったネ。ヨルダン守備も、フレッシュな李忠成と、抜群の抜け出しフリーランニングを繰り出したり、積極的なリスクチャレンジ勝負ドリブルをブチかまし続ける岡崎慎司を、明確に「怖がって」いたからね。

 相手に、そんな心理プレッシャーを与えたからこそ、同点ゴールを奪えた・・のかもしれない。余裕がなくなったヨルダン守備ブロック。だから、吉田麻也の飛び込みを、ヨルダン守備の誰もマークできなかった・・!?

 今日は、こんなところで締めるけれど、最後に、個人についてショートコメント。

 香川真司は、本田圭佑に遠慮していたのか?? 後半になって、センター2列目に入ってからは、よくボールに触れるようになったし、彼の勝負プレーも、活き活きとしたモノになったと思う。そんなプレーコンテンツの「変化」には、基本ポジションという「イメージ」に固執しつづける悪循環というテーマも含め、とても興味深い「意味」が込められていると思う。

 また、ザッケローニが、強烈な意志にあふれる「勝負プレー」という視点で、この試合では、どうも存在感が薄かった前田遼一と松井大輔を交代させのは大正解だった。それによって、明らかに日本代表の攻めが活性化した。やはり、意志なんだよ、意志・・。

 とはいっても、李忠成と岡崎慎司という「強烈な意志を迸(ほとばし)らせる刺激」がうまく機能し、サイドから仕掛けていった時間帯はよかったけれど、時間経過という心理プレッシャーによって、センターゾーンばかりを「ゴリ押し」するようになった最後の時間帯の攻めはいただけなかったネ。実際、同点ゴールはサイドからの仕掛けだったわけだからネ。

 とにかく、この試合のコンテンツと結果(悔しい体感と刺激!)によって、本当の意味での「強い日本代表」が戻ってくることだけは確かだと思う。アジアカップ全体を見渡す「展望」という意味合いで、この結果にもかかわらず、逆に期待がふくらみつづけていた筆者なのでした。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 




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